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普段邪魔になほど見かけるものほど、必要な時には見当たらないものだ。マーフィだかなんだかの言葉だったと思う。 過換気症候群の対処法は一先ずポリ袋なりなんなり、密閉できるもので呼吸を適度に遮ることなのだが、見回してみても紙くずやら肉塊やらは腐るほど転がっているくせに、袋状のものがまったく見当たらない。 ジャケットを脱いで口をすぼめてみるが、装甲を仕込んであるのでどうにも塩梅が悪かった。 『しょうがない』 息を一つ吐くと、娘の口をマウストゥーマウスで塞いだ。 「んんーっ!?」 手足をばたばた振り回して暴れるが、ウブいレスに付き合う義理もないので力づくで押さえ込む。 喉に内臓したフィルターで換気を調整してやると、すぐに娘の呼吸は回復した。 「なっ、なっ、何するのよ!」 飛んできた平手は適当に捕まえる。が、それだけに飽き足らず続けて脛を蹴り上げ、罵詈雑言を喚きたてた。 『また過呼吸になっても知らんぞ』 「うるっ、さっ、げほっ、げほっ!」 ……どうも過呼吸ばかりでもなさそうだ。ホワイトエリアの子供はアレルギーが酷いことが多いが、老街の汚れた空気が合わないのか? 『河岸を移す。少し黙ってろ』 返答も聞かずに担ぎ上げると、娘は暫く暴れたがすぐに大人しくなった。 遠くで鳴り響くサイレンの音が、俺たちとは関係のないことを祈る。 ● 『ところでな、お嬢さん。 名前ぐらい教えてもらえないか』 返答を期待したわけではないが、果たして背後からは「キジナキマイコ」とぶっきらぼうな声が返ってくる。 その後、道中、住所やら両親の健在やらいろいろ聞いては見たが、全てだんまり。 どうにも嫌われたらしい。仲良くする筋合いも、勿論ないのだが。 さて、どうしたものか。 さしもの俺も生きた人間をバラして冷蔵庫送りにするのは気が引ける。 さっきのウブい反応からしてまだ『未使用』だろうし、娼館に売り込むのが妥当なところだがツテもない。そのまま頂くには発育が今少しか。 思案していると、功刀行政特区……通称ブシドー租界の入り口が俺たちを出迎えた。 あとは5分も行けば俺のアパートメントだ。 『ようこそ、我が家へ』 背中の少女は、ブシドー租界特有の高層建築群に圧倒されたようだった。 [No.84] 2011/04/30(Sat) 22:40:38 |