ちょっと驚きました。こんなことが一部「批判」のニュースになっているんですね。
アカデミー賞で僕らが中継していたすぐ隣の『E!』チャンネルの米国No.1と言ってもいい司会者ライアン・シークレストさん(Ryan Seacrest)のツイートで、僕らが朝の情報番組用の生放送中に使っていた ”カンペ” が写真で紹介された話です。
”カンペ” とは、業界用語で誰でも使う言葉ですが、番組の構成台本を書き起こして(念のため)司会者や出演者たちからいつでも見える位置にスタッフさんが出しておいてくれるものでです。
ライアンは毎年お隣なのでご挨拶もし、僕らが日本への中継チームだということもわかっています。彼らにとって、世界中からの中継チームの ”カンペ” は絵的にも珍しいし面白い。だから彼は、微笑ましいジョークとして、ツイートで
「僕に違うカンペが出されたんだよ!(I think they sent me the wrong cue cards #eredcarpet )」
と書いて、写真に一言添えてあるんです。
僕は、このジョーク、笑いました♪ 世界各国からの中継チームが並んでいるからこそ、配信出来たライアンのとっても楽しいユーモアです。
日本では、一部『(日本の)カンペが世界に拡散されてしまった、恥ずべきだ』と憤慨した方たちさえいるんですね。でも、よく読んで下さい、ライアン自身も "cue cards" という言葉を言っています。つまり、彼も "cue cards(カンペ)" を使用している、ということなんです。これはどこの国でも、局でも、生放送の中継など(多くの収録でも)当たり前に使っています。それが、テレプロンプターであったり、紙であったり、手持ちのカードだったりするだけです。
そこに書かれている受賞予想も、斎藤工さんが事前に選んだ一押しの映画や大好きな女優さんの名前を、念のためにスタッフの方が本番用に書いて下さっていただけ。
この中継時には、すでにレッドカーペットが開かれ、いつスターが通りかかるかもしれないという時間帯で、もし誰かが来たら、構成台本などは一旦離れて、その場でインタビューする瞬間をお見せしようというのが、中継意図です。 そういう予期せぬ、嬉しいハプニングがあっても、すぐに番組の進行に戻れるように、保険として "cue cards(段取りを示すカード)" を用意して下さっているものなんです。斎藤さんだけでなく、他のページには、僕用の言葉も当然書かれていました。
これを、「(日本の中継チーム)がカンペを使っていることが世界に拡散された…」と、なんでも《恥の文化》目線で結びつけるのは、ちょっと考え過ぎです。"cue cards" が、別の国の言語で書かれているのが興味深くてネタになっただけのことなのに。
そんなことより、まさにこの中継時に、斎藤さんがカメラに向かって「助演を受賞するのはパトリシア・アークエット!」と、彼が尊敬する女優について語ったその直後に、本当に奇跡的にパトリシアが僕らの真後ろを通って、それを僕らが生中継でお伝え出来たこと、そしてその後に彼女にもインタビューに成功し、その彼女が見事(斎藤さんが注目した通り)受賞した!!こういうとっても素敵な出来事が起きたことこそ、ニュースにできないものですかねぇ…。
ちなみに、斎藤さんも僕も、受賞予想とは別に、お気に入りの作品として『セッション』について語ったわけですが、 "cue cards(段取りを示すカード)" にもその名が書かれているからって、ヤラセで言わされてるなんてことは100%ありません。僕らは、映画を愛していて、だからこそあの場にいるわけですから、むしろ、『僕ら俳優目線で好きな作品や俳優』について自由に語っているんです。
パトリシアさんも受賞、『セッション』も低予算作品ながら大健闘の3部門受賞!そこを斎藤さんも僕もおススメの1本として見抜いていたんですから、その情報を映画ファンの視聴者の皆さんに確実にお届けしようとした僕らも、中継チームの皆さんの念入りの仕事の姿勢にも、(日本のTVクルーとして)「恥じる」べき部分など、まったく無いのでご安心下さい。
むしろ、”カンペ” 由来である ”カンニング・ペーパー”という元々間違っている日本語英語を、僕らの社会が使うことをやめたほうがいいのかもしれません。 (※ この際、”キュー・カード” にしちゃうとか!”カンペ” って言葉の響きが悪いですもんね)
ライアンのジョークも、単に楽しいものですよ!!本当に。 |
No.1147 - 2015/02/25(Wed) 08:43:38
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