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No.534へ返信

all ルリルラ、新生200年前スレ - ジョニー - 2013/06/20(Thu) 23:22:53 [No.529]
迷子船 - ジョニー - 2013/06/21(Fri) 20:12:01 [No.530]
Bring to the boil 1 - アズミ - 2013/06/21(Fri) 21:58:32 [No.531]
迷子船2 - ジョニー - 2013/06/22(Sat) 01:22:45 [No.532]
Bring to the boil 2 - アズミ - 2013/06/22(Sat) 09:25:04 [No.533]
迷子船3 - ジョニー - 2013/06/22(Sat) 22:38:34 [No.534]
Bring to the boil 3 - アズミ - 2013/06/23(Sun) 12:27:25 [No.535]
迷子船4 - ジョニー - 2013/06/23(Sun) 16:07:19 [No.536]
迷子船5 - ジョニー - 2013/08/31(Sat) 22:38:55 [No.559]


迷子船3 (No.533 への返信) - ジョニー

 放浪6日目にして迷子の奏甲支援船(ランドクロイツァー)、船名シャッフェムッタは危機を迎えていた。
 それも食料危機という内からの危機ではなく、外敵による危機である。

「こ、のぉぉぉ!」

 弾切れを起こしたサブマシンガンを放り捨て今しがた最後の銃撃で虫の息になったワームを意識から外し、眼前に迫るワームへと剣を振るう。
 振るわれたルーンソードは確かに敵を切り裂いたが目測を誤り浅くなって致命傷には程遠い、切り裂かれながらも噛みつこうと迫るワームの頭部をサブマシンガンを捨ててフリーになった左手で機体のパワーに物言わせて押さえつける。


 巨大長虫(シュピルドーゼ・ワーム)、それが今現在彼らを襲っている脅威である。
 不幸なことに存在そのものは聞いたことがあっても、真也はこの巨大ミミズとの交戦経験はなかった。それどころ絶対奏甲以外との交戦自体が久しぶりという有様でその勝手の違いが無視できない不利に働いていた。
 相手は全長40mにもなる巨大生物であり、なによりも数が多い。おそらくは20匹前後はいると思われる、それを船を庇いながら戦うというのは聊か以上に荷が重い。

 シャッフェムッタは奏甲支援船なら通常搭載してある武装を排除して完全に工房としての機能を最優先した船だ。いや正確にはシャッフェムッタより後に製造された奏甲支援船が武装を搭載する形に落ち着いたというべきで、最初期の奏甲支援船の一隻であるシャッフェムッタは奏甲搭載機数や奏甲整備能力を重視しすぎた後から見れば偏り過ぎた可笑しな船であるのだ。
 武装は精々対人用の小銃がお座成りに備え付けられていた程度であって、それすら封印作業中に取り外された非武装といってもいい程なのだ。更にその大きさの割に奏甲搭載機数は過剰で当然船速は後の奏甲支援船を下回る。
 足は遅く武装はない、後の奏甲支援船でいう中型〜大型の中間程の大きさながらもその搭載能力は後の大型奏甲支援船を超えておりその皺寄せは速度や武装以外の部分にも如実に現れている、新しい分類の兵器登場過程によく見られる後から考えれば可笑しなもののひとつに当たるのがシェッフェムッタという船だといえる。

 装甲もそれ程あるとはいえないシェッファムッタを護りながら、多勢に無勢の戦いは真也とシルナに大きな負担を強いていた。
 なにより2人はこの2日以上なにも食べていない空腹状態だ、水も限りがある為に空きっ腹を水で誤魔化すということもできずにいた。
 そんな状態での奏甲による戦闘は実際に戦う真也は無論、歌い続けるシルナの体力を急速に奪っていく。
 折しもハンガーで山積みになっていた奏甲の大半を昨日の夜に奏座と炉を念入りに破壊しながら格納コンテナごと砂漠に浅くとも穴を掘りコンテナに砂をかけて隠すように捨てるという作業を遅くまで、それこそ朝方までブリッツ・リミットで行っていて、徹夜明けの寝不足という悪条件さえ加算されている。
 ハンガーにあった銃器で襲撃の初期にかなりの数のワームを仕留める事は出来たが、そもそもが戦場から回収した武器であるので残弾は乏しくすぐに弾切れとなった。弾切れとはほぼ無縁の幻糸レーザーもハンガーにはあるがアレは銃身が破損していて使い物にならなかった。
 今ブリッツ・リミットが装備しているものは右手で振るっているルーンソードと、ハンガーから引っ張り出した腰に差したままの予備のルーンソードだけである。ハンガーにあったアークソードは廃棄する奏甲の破壊に酷使した為に破損してしまってコンテナに詰めて破棄された。

『きゃぁ!?』

「なっ、グッ!」

 シルナの悲鳴がケーブルに響くと共にブリッツの力が抜けて、左手で押さえていたワームの頭突きを喰らう。
 咄嗟にルーンソードを振るい顔を上げたワームの頭部を串刺しにするが、やはりブリッツの動きが鈍い。
 見れば別のワームが船に体当たりをしていた。

 拙いと思わず真也は舌打ちをした、おそらくワームの体当たりで船が揺れてシルナに何らかの被害が出たのだろう。
 今のブリッツの状態は明らかにリンクに問題が出ている。普通ならその程度でリンクに大きな影響が出ることはないのだろうが如何せん今のシルナは寝不足と空腹で弱っている。
 まだ10匹近いワームがいる中でこれは非常に危険である。このままでは負けると真也が覚悟したその時、思わぬ援軍が現れた。

『勝手に助けさせてもらうぞ、そこの奏甲!』

「え?」

 援軍などあるはずのない砂漠のど真ん中でアイボリーカラーのハイリガー・トリニテートがワームの群れに突撃している。

「今の声と、あのハイリガーの色は……まさか。っ、気にしてる暇もないかっ!」

 一瞬ケーブルに響いた声と見覚えのあるカラーリングのハイリガーに気を取られるが、襲いかかるワームに動きの鈍いブリッツではそれを気にする余裕は真也にはなかった。


[No.534] 2013/06/22(Sat) 22:38:34

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