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No.559へ返信

all ルリルラ、新生200年前スレ - ジョニー - 2013/06/20(Thu) 23:22:53 [No.529]
迷子船 - ジョニー - 2013/06/21(Fri) 20:12:01 [No.530]
Bring to the boil 1 - アズミ - 2013/06/21(Fri) 21:58:32 [No.531]
迷子船2 - ジョニー - 2013/06/22(Sat) 01:22:45 [No.532]
Bring to the boil 2 - アズミ - 2013/06/22(Sat) 09:25:04 [No.533]
迷子船3 - ジョニー - 2013/06/22(Sat) 22:38:34 [No.534]
Bring to the boil 3 - アズミ - 2013/06/23(Sun) 12:27:25 [No.535]
迷子船4 - ジョニー - 2013/06/23(Sun) 16:07:19 [No.536]
迷子船5 - ジョニー - 2013/08/31(Sat) 22:38:55 [No.559]


迷子船5 (No.536 への返信) - ジョニー

 奏甲支援船シャッフェムッタの面々が志摩康一と出会って約半月が過ぎ、康一と真也、そしてエアヴァの3人がシャッフェムッタの一室で情報交換を行っていた。

「この半月でうちらに関してはまぁお得意様も出来たわ、そのお得意様で問題もあったけどそれは後に回しとくわ。シマっちとシンヤっちはどうや?」

「こっちは相も変わらず本命に関しては空振りだ」

 隠し工房として無事軌道に乗りつつあると語るエアヴァと、時渡りの門で空振りが続いていると語る康一。自然二人は残りの一人である真也の方に視線を向ける。

「僕の方は順調といえば順調です」

 身分を隠した英雄と歌姫として傭兵紛いの仕事をして、同時に遺跡方面を康一に任せて他のところからの情報収集に努めいる真也は複雑な顔で順調だと語る。
 主に工房から有益ながらもある種危険な情報を得たと真也は語る。

 真也の絶対奏甲であるブリッツ・リミットは本来赤い部分を濃い青に塗った以外は外見は通常機と同じだったがこの時代で運用するにあたり装甲にやや華美な装飾を施して貴族機らしく偽装してブラウ・ブリッツと呼称させている。もっとも仲間内では普通にブリッツと呼ばれているが。
 そして貴族機のブリッツの専属整備士と称してシャッフェムッタの何人かを連れて工房に入れている。機密と称してブリッツ・リミットをこの時代の人間に触れさせない為であるが、同時に工房から情報を得る役にも立っている。

「まず当然と言えば当然ですが、この時代に来たのは僕らだけじゃないという確証を得ました」

「あぁ、それはうちらも得てるわ。なにせ客の一人がよりにもよってブリッツ・リミット売りにきおったからな」

 エアヴァの言葉に真也と康一がぎょっとする。
 貴族機として偽装した真也のブリッツはパッと見では印象は異なるので自分達の時代の人間かあるいは見比べでもしない限り同じ奏甲とは早々には分かり辛いがまさによりにもよっての奏甲である。

「後で言おうとしたのがこれでな。なんでも蟲化しかけた英雄が暴れてたのを倒したらしいんやけど、どう見ても訳あり奏甲やから隠し工房の此処に売りに来たわけや」

 表の工房に持って行って王侯貴族絡みのごたごたに巻き込まれたくない。しかしブリッツ・リミットとの戦闘でシャルラッハロートが損傷して穴埋めはしたい。だから隠れ工房に持ち込むというのはまぁ理解できる話ではある。

「奏座周りが蟲化に巻き込まれたのと倒された時にぶっ刺されたので機体自体は使い物にならんけど、バラしてシンヤっちのブリッツの予備部品を入手できたのは幸いだったわ」

「代金はどうしたんだ?」

「それはグラオグランツと交換にしたわ。動かせる奏甲を手放すのは惜しかったけどブリッツの部品確保の方が重要やからな」

 蟲化に巻き込まれた機体と聞いて真也が渋い顔をするが予備部品として問題ないというのなら我慢すべきだろうと言葉を飲み込む。
 同時に技術流失の問題も、そもそもブリッツ・リミットが持ち込まれた段階で現物から解析されるのは時間の問題であると諦めたそうだ。

「ブリッツ・リミットとグラオグランツの交換ってとんだぼったくりだな」

「まぁ壊れた奏甲と中古でも問題なく稼働する奏甲なら問題ないやろ、向こうも喜んどったし。で、シンヤっちの話の続きは?」

「あ、あぁそうでしたね。どうも工房に見慣れない奏甲が持ち込まれることが結構起きてるそうで……そういう意味では僕も似たようなものですが偽装したお蔭で余計なことに巻き込まれずに済んでます」

 200年前と事前に知ることが出来た事、そして専属整備士を用意できた事など幾つもの幸運が重なり、ブラウ・ブリッツという身分を隠した訳ありの貴族専用機として遠巻きに見られるだけで済んでいる。

「それと……どうやら恵みの塔が歌姫大戦で被害を受けて現在機能していないらしいという噂が」

「おい、それって……」

「もちろんただの噂です。だけど、工房でも比較的地位のある人から聞いた噂ですし、見慣れない奏甲や英雄などが目撃され出して前後から黄金の歌姫が姿を消したという話もあって」

 3人が揃って顔を見合わせる。
 それは彼らがこの時代にやってきた原因かもしれない話なのだ。無論、確実な話ではなく本当だという証拠はないと真也は付け加える。

「あぁそれと康一さん、暫くヴァッサァマイン方面とトロンメル方面は避けた方がいいです。あとザンドカイズも」

「あ? どういうことだ」

「ヴァッサァマインで十二賢者の生き残りを称した人物が、自分達を謀殺した三姫を非難して決起したとか……厄介なことに見慣れぬ奏甲を多数保有して武装しているとか、その奏甲の特徴を聞いたんですけどキューレヘルトやローザリッタァっぽいです」

「自由民か」

 生き残りがこっちに来てたのかよ、と康一が悪態を付き。おそらくと言いながら真也が頷く。

「それとトロンメルでは巨大な船が漂着したとかで騒ぎになってるらしいです」

「巨大な船? おい、まさか」

 康一の違っていて欲しいと思いがこもった問いかけに、真也は重々しく頷く。

「そのまさかです。多分白銀の歌姫の軍勢がポザネオ上陸に使った艦隊の奏甲空母の一つだと思います」

 現代にしろ此方にしろ実物を見たわけではないですが、話しを聞いた限りでは特徴は一致してします。と重々しく語る。

「幸いと言うべきか。どうも争いになったという話しは聞きませんから奏甲や人員は乗っていないか、最小限だったとは考えられます」

「救いにならねぇよ。それっぽっちじゃ」

 まぁそうですよね、と頷き。奏甲支援船どころではない大物がこの時代に流れ着いていることに皆して溜め息を付く。

「ヴァッサァマインとトロンメルは分かった。で、近場のザンドカイズは?」

「そっちは領主の宿縁の英雄が現れたという話で……その英雄が問題なんですよ」

「ふぅん、未来の有名人なのか?」

 康一さんには分からないと思いますが、と前置きする。

「一部では有名でしたね。マカール=パンスコヴァといいます」

「ハァ!? マジでかい」

 エアヴァのマカールという名前を聞いて驚きの声を上げる。
 康一はその名前を知らず、誰だか知っているらしい真也とエアヴァに説明を求める。

「あー……現世騎士団のメンシュハイト・ノイを開発した英雄の技術者がその名前のはずや。無色なる工房では一時期よく聞いた名前やから間違いないはずや」

「無論、単なる偶然という可能性もありますがそのマカールが宿縁になってから妙な私兵が集まり出したらしく」

「私兵だぁ?」

「英雄崩れの野盗のような連中を雇い入れて再教育して野盗を減らすことが目的と言われてますね。そして私兵の長を務めているのが、漆黒の華色奏甲を駆る英雄」

 この名前は康一さん達以外は全員聞いたことぐらいはあると思いますよ、と嫌悪を滲ませて真也は語る。

「ギュンター=ハインケル。最後のシュピルディム攻防戦で抱き込んだ部下達と共にシュピルドーゼを裏切り、シュピルディム防衛部隊を内側から食い破った現世騎士団の団員のスパイだった男です」


[No.559] 2013/08/31(Sat) 22:38:55

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