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ビームシールドが無い事について (No.664への返信 / 2階層) - 咲凪

イモータルジャスティスは、インフィニットジャスティスやデスティニーやライジングフリーダムに装備されていたビームシールドが備わっていない。

そして、ビームシールドは当然、無いより有った方が良いのは間違いない。


じゃあやっぱりイモータルジャスティスは他と比較して劣っているかといえば、それはまた違う話なのである。

ビームシールドの運用について、まずエネルギー効率の問題がある。
核動力やハイパーデュートリオンエンジンといった特別な動力炉を搭載した機体や大型機で初めて採用出来るものであり、
バッテリー駆動が基本となるコズミック・イラ世界の量産機がビームシールドを備えている事は稀である(量産試作機ではあるが、ハイペリオンGなどいない訳ではない)。
ではイモータルジャスティスも動力炉の都合でビームシールドを装備していないかといえば、
兄弟機であるライジングフリーダムはビームシールドを装備しているし、
そもそもこの二機は動力炉が2025年1月現在判明していないという事もあり、ビームシールド未搭載の理由を動力炉に見出す事は現時点では不可能である。

では一体何故イモータルジャスティスにビームシールドを装備させなかったかといえば、
それはイモータルジャスティスがコンパス正式採用機であり、量産を視野に入れていたからという事が理由ではないかと私は考える。

先述したように、ビームシールドは勿論あった方が良い。
だが、ライジングフリーダムのようにハイエンド機が果たして量産に向いているのか、と考えた時、私は疑問を感じざるを得ない。
何度も言うように、ビームシールドは当然無いより有った方が良い、絶対に良い。
だが、それは装備に必要なコストを考えた時、“絶対に必要”と言えるかどうかは別問題なのだ。
搭乗者の命に関わるのだから、防御装備は出来る範囲で充実させたいのは当然である。
しかし、イモータルジャスティスは既にVPS装甲という破格の防御機能に加えて、武器と兼用ではあるがシールドを装備しているのだ。
これに更にビームシールドも加えよう……というのは、ライジングフリーダムという前例があるにせよ、過剰に感じてしまうのも判らない話ではない。
(加えて、ライジングフリーダムはフラッグシップ機であり、搭乗者の階級は准将である、防御能力を出来るだけ上げるのも当然である)

ライジングフリーダムがハイエンドモデルとしてビームシールドを装備しているのだから、
イモータルジャスティスはビームシールドを持たないモデルとして、その必要性を検証する必要があったのかもしれない、と私は考えている。

じゃあ搭乗者のシン・アスカが割を食ったのかといえば、そうとも思わない。
装備しているシールドを民間人を護る為に使う程のパイロットが彼であり、
おそらく希望すればビームシールドの搭載も叶ったのではないかと思うのだが、シン・アスカ本人が特別にそれを要求していなかったのではないか……と、想像する所なのだ。
あったら良いけど、無くても良い、それならば無い方が整備も楽というものである。

なお、「そんな簡単にビームシールドの取り付けが出来るのか?」といえば、イモータルジャスティスに関しては出来る根拠があるのだ。
それこそライジングフリーダムの存在であり、
この兄弟機はフレームが同一である為、ビームシールドがどうしても必要、となればライジングフリーダムの腕を付けてしまえば良いのである。
勿論玩具ではないので、機体バランスの考慮や調整も必要になるのだろうが、
同じフレームの兄弟機が実働しているという裏付けがある分、
全く異なる機体にビームシールドを備え付けるよりも現実感のある話ではないかと思う次第である。

〇今回のまとめ〇
・そりゃああった方が良い。
・でも“あった方が良い”と“絶対必要”は別であるし、それを確かめる事も大事。
・そもそも、付けようと思えば付けられるんじゃないの?。


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[No.665] 2025/01/03(Fri) 11:10:46 (2159時間52分前)

武装が少ないのは効率化だという事 (No.663への返信 / 1階層) - 咲凪

イモータルジャスティスが不当な評価を受けている点について、
まず目につくのが同じジャスティスであるインフィニットジャスティスや、
兄弟機であるライジングフリーダムと比較して武装が少ない、という点である。

確かに、目を引く特殊な装備や武装が少ないイモータルジャスティスは前述した2機と比較して、超高性能機という印象は薄いかもしれない。
だが、よくよく考えてみて欲しいのは、武装が厳選されているという事は、その分効率化がされているとも言える。

武装が豊富な機体の利点が、戦闘において取れる択が多いという事や継戦能力が高いという所にあると私は考えるが、
その点において、イモータルジャスティスに不足があるかと言えばそうは思わない。

近接攻撃や射撃戦において、必要十分な火器は備えている事に加え、
使用する機会の乏しい武装を省く事は整備の際のチェック項目を減らして運用の利便性を上げる事にもつながる。
搭乗者であるシン・アスカはフォースインパルスのような機動性に優れ、MSとしては比較的スタンダードな武装構成を持つ機体に搭乗していた事もあるため、
フォースインパルスと同じく機動性に優れ、スタンダードな武装構成を持つイモータルジャスティスは本質的に扱い易い機体であった筈なのである。

なんなら脚部ビームブレイドが装備されている分、イモータルジャスティスは重武装なMSであると言える。
脚部に付いたビーム刃というものは何とも使いづらそうな印象を受けるが、これは常用を考えるからそのような結論に至るのである。
脚部のビーム刃は言わば隠し武器のようなものである為、
相手の虚を突いた格闘戦が必殺の一撃になるだけで、必要十分な装備であると私は考える。
(あるいはかつてシン・アスカが搭乗していたデスティニーに装備されていたパルマフィオキーナ掌部ビーム砲のように、優れたエースパイロットの行う格闘戦の“詰め”としての想定があったのかもしれない)

更に、イモータルジャスティスの特徴的な装備である、
フラッシュエッジ4シールドブーメランについて、言及しておかなくてはいけない。
これは兄弟機であるライジングフリーダムの装備した、
フラッシュエッジ3と比較して、ビーム刃が少ない事が比較対象として廉価版のような印象に繋がっている意見を目にした事があるが、私はそれに異を唱えたい。
フラッシュエッジ4はあれで良いのだ。
先述した武装を厳選する事による整備の際の効率化は勿論この装備ひとつに備わった機能にも同じことが言える。
ビーム刃を発生させる装置が一つ備わるだけで、チェック項目の増加や消耗に伴う補修部品の数が増える事は言うまでも無く、
フラッシュエッジ3やフラッシュエッジ4はドラグーン的(あるいはジャスティスの系列におけるリフターの役割)な活躍を見せる事が印象的だが、あくまで本質的にはあれはシールドなのである。
盾としての役割を満たす為の仕様として、攻撃力を増加させる事よりも盾としての信頼性を採ったのがフラッシュエッジ4の真価なのだ。
当たり前の話だが、様々な機構を搭載するよりも、構造を出来る範囲でシンプルに纏めた方が耐久性は高くなるし、信頼性も同様である。

これはライジングフリーダムの装備したフラッシュエッジ3が間違った仕様だとしている論ではない、
何故ならば、この2機はコンパス正式採用機として設計されたものであり、本格的な量産に向けて実働データを集めている最中で会ったろう事は想像に難くないからだ。

〇今回のまとめ〇
・武装は少ないのではなく、纏まっている。これは整備や補給の安定につながる。
・比較対象が武装てんこ盛りなだけで、イモータルジャスティスも武装は多い方。
・フラッシュエッジ4はあれで良い。


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[No.664] 2025/01/03(Fri) 10:13:52 (2160時間49分前)

イモータルジャスティスの世間の評価は不当であるという話 (親記事) - 咲凪

あれは本当に優れたMSなんやで

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[No.663] 2025/01/03(Fri) 09:41:24 (2161時間21分前)

GBD+C P0 (No.661への返信 / 1階層) - アズミ

 ――……骸の山の上にいた。

 心無き被造物の成れの果て。その墓場に、いた。
 
 私たちには心がなかった。何も語らず、涙も笑顔も浮かべる顔が無い。
 それでも、それぞれが想いを受け取った。夢を、愛を、誇りを受け取った。
 それはそれぞれ、ほんの一滴の光に過ぎず。
 けれど、骸の山の上に滴り落ちて輝きの泉となった。

 0と1の海の片隅に、一欠片の奇跡を起こすには十分な輝きだった。

 それを受け取って、私は――……


 

 GPEX SYSTEM
  START UP

 NEXT GUNPLA
   BATTLE
 READY TO DIVE?
  GO/CANCEL


>GO


 NOW DIVING...


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[No.662] 2018/02/22(Thu) 21:56:44 (62317時間6分前)

GBD+C プロローグ (親記事) - アズミ

※C.C.とは繋がりはありません

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[No.661] 2018/02/22(Thu) 21:55:32 (62317時間7分前)

コテパト。きゅう。 (No.659への返信 / 9階層) - アズミ


 電話の向こうの光矢以外は敬治一人きりの事務室に、ぱちん、と音がする。

『つーわけで、こっちで解ったのはここまでだ。後はデカのほうに当たるしかねえな』
「ふむ……、いつつ」

 思案しながら切ったせいで、深爪気味になった。
 渋面を作って爪切りを放り出し、肩に挟んだ受話器を持ち直す。

「あー……あいわかった、情報共有感謝する」

 何か気になる事件がある度、情報共有を行うのが光矢と敬治の通例であった。
 明確に捜査情報の漏洩にあたるのだが、特車隊の隊長にも黙認は取り付けている。初動で遅れる特車隊は現場の詳しい状況を把握しにくいし、一方で捜査の俎上に上がってしまえば警備会社からは手も足も出ない。
 これは事件の全貌を掴む上で必要に迫られての、官民一体の自主的な協力体制であった。

『あぁ、デカと言えばもう一つ。本庁の捜査一課からお客さんが来てる』
「なに?」
『さらに妙なのは、どういうわけだかウチのデカどもがそれを邪険にしてねえってことさ。タイミング的に今回の件がクサい……と俺は思うんだがな』

 本庁の人員が出張ってくるということは東京で起きた事件と関連があるということだろうが、警察は基本的に縦割りの組織で、管轄を飛び越えての活動は普通しないし、忌避される。
 所轄がそれに協力的というのは、余程にその事件が大規模か、あるいは所轄の手に負えない特殊性を持つかのどちらかだ。
 クサい。
 警察組織内にいた敬治であるからこそ、看過できるラインを超えるキナ臭さであった。
 これまでは多少妙なところはあるものの、単なるレイバー窃盗事件だったのだが。

「担当の刑事の名前はわかるか?」

 敬治は以前一時期、捜査一課に籍を置いていた時期がある。
 伝手がないでもないし、担当者がわかれば今回の件に関連する事案も辿ることができる。

『松井……なんつったかな、松井……』
「孝弘」
『そう、それだ。松井孝弘。知り合いか?』
「昔、世話になったことがある。……そっちから当たってみるか」
『んじゃ、そろそろ切るぜ。ソフィアちゃんあたりに知れると捜査情報の漏洩がどうのって煩いからな』
「あぁ、このお返しはいずれ、精神的にな」

 受話器を置く。
 見計らったかのようにスーが茶の乗った盆を片手に給湯室から戻ってきた。

「お電話終わりましたか?」
「終わるの待ってから出てきただろう、白々しい。喉渇いたから茶くれ」
「ご自分でどうぞ♪」

 いつも通り、盆の上には湯飲みが1つだけ。

「……あぁ、わかってたよ言ってみただけだ」

 嘆息して腰を上げる。
 事務員のフィス・ミリエラが非番なので、ポットは空のまま。舌打ちしてコンロに薬缶を乗せた。

「散らかったオフィスで茶をしばく中年2人。侘しい年越しですなぁ」
「こんな職種だ。出せるときに休みは出しとかないとならんだろう。侘しい年越しなのは同意だが」

 工事現場の交通整理など一部を除けば警備会社は年中無休であるが、レイバー警備はその中にあっては若干特殊な扱いとなる。
 というのも、商売道具であるレイバーがそれほど長時間稼働できないためである。ただ突っ立っているだけでもアクチュエーターは磨耗するし、バッテリーも消耗する。レイバーとの格闘戦など演じようものならメンテナンスを必ず挟む。
 一朝事あらば、とかく危険な職場である。人も機械も休息は極力取らせなければならない。
 バビロン・プロジェクトの護岸工事も年末は当然ストップするので、先のレイバー盗難のような突発的な事態でなければ出動はかからない。
 年末年始ぐらいは、ということで出社は敬治とスーのみとし、他の社員は休みか、最悪でも自宅待機としたのは敬治の配慮であった。

「正月くらい家に帰らなくてもよろしいので? せめて連絡の一つも寄越さないと細君がお冠でしょう」
「こういう仕事だ、嫁も子供もわかってるよ」

 正直、三行半を突きつけられてもしょうがないと半ば覚悟はしているのだが、どうにか連れ添って十余年。今のところ愛想を尽かされた様子はない。

「…………」
「なんだよ」
「あぁ、そういえば既婚者でしたねケイジさん。今ナチュラルにパティさんのこと聞いてました」
「……そっちはさっき電話入れた。紅白見てるとさ」
「そっちは連絡入れてるので?」
「わかってくれないからな」

 実のところ2時間ごとの連絡義務を課されているので、年明け直前にもう一度連絡を入れなければならない。
 新婚時代の嫁ですら此処まで束縛はしてこなかったと思うのだが。

「お熱いですなぁこのロリコン」
「会話をしろ」
「今頃一真さんはフィスさんとキャッキャウフフでしょうし康一さんもコレが出来たようですしロリコンケイジさんはロリコンゆえにロリとロリロリですし嫌ですねぇ、独り身はいよいよ私だけですか」
「だから会話をしろ。…………あ?」

 思わず間抜けな声を出す。
 ぴー、と笛を吹いた薬缶を、しばらく眺めた。

「マジで?」
「嫌ですなぁ、私が既婚者に見えます?」
「そこじゃねえ、その前」
「一真さんがフィスさんと年越しデート」
「そこでもねえ。っていうかまだその段階なのかよあの2人」

 もう付き合って2年ほどになるはずなのだがどんだけ初々しいのだ。中学生か。いや今時中学生でもたまに行くところまで行ってしまう。小学生か。

「康一に?女?」
「出来たようですよぉ、どうやらホントに。最近、勤務明けはすぐ帰りますしあれは同棲までいってるんじゃないですかねぇ」
「ほーぉ」

 安い茶葉の入った急須から愛用の湯飲みに茶を注ぎ、入れすぎてその場でひと啜り。
 いつまで経っても利かん坊のあの糞餓鬼に。女。

「奇特なヤツもいたもんだ」


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[No.660] 2018/01/02(Tue) 22:14:29 (63540時間48分前)

コテパト。はち。 (No.658への返信 / 8階層) - アズミ

 上司一つで職場の居心地というのはがらりと変わる。
 太平洋沖に浮かぶ“べるもっと号”の、底冷えのする格納庫に入るたび伊豆内はそれを再認識せずにはいられない。

「テストパイロットは3人用意していただける、という話だったはずですが」
「すまんな、“パレット”のほうで少々アクシデントがあった」

 伊豆内の言葉に、現在の上司……ジー・ラマヌジャンはバツが悪そうに肩を竦めた。

「多少遅れるが補充は来る。今はアンドレイで我慢してくれ」
「スケジュールの遅れは」
「もちろん、許容する。まだ半信半疑なようだがね、イズウチ――」

 ラマヌジャンは視線をハンガーに向けた。
 機械の巨人が、バイザー奥から無機質な眼差しを2人に向けている。

「アジアマネージャーはおたくらの玩具を高く評価しているんだ。我々は“評価して欲しければ売り物になるものを持って来い”と言ってるんじゃあない、“商品にするから売れるようにしてくれ”と言っている」
「理解しているつもりです。だから、それまで待ってはいただけるし手段は融通してもらえる」
「その通りだ」

 互いに納得は得られたと見たか、ラマヌジャンは改めて巨人に視線を向ける。

「だいぶ外見が変わったな」
「グリフォンは知られすぎていますから、さすがにそのままというわけには。中身は基本的にそのままですよ」
「今度は黄色か」
「アジアマネージャーの希望ですよ、向こうじゃ縁起がいいとか」

 伊豆内は正直なところ、この軽薄な黄色が好きではなかった。
 きっと前のパイロットや――“彼”がここにいたならば、酷評した上で即刻変えさせたに違いない。そう、埒もつかないことを考える。

「一先ずはアンドレイだけでスケジュールを進めます」
「補充が来るまで派手な工程は控えてもらいたいが」
「もちろん、こちらだってたった一人のテストパイロットに危ない橋は渡らせたくありません。……が、もう一度だけ確認します」

 ラマヌジャンを見る。相手はこちらに視線を向けない。
 
「いずれ搭乗者制限を撤廃するぶんデチューンは避けられませんから、その分は汎動作の最適化で取り返します。で、あれば実地で動かして経験値を積むのは必要不可欠です。つまり――……」
「軍事用レイバーに穴掘りをさせても意味はない。火器の扱いならアジアには幾らでも鉄火場がある。だが殴り合いならば“ココ”が一番だ」
「……いいんですね?」
「もう一度言うぞ、イズウチ」

 ラマヌジャンはそこで初めて視線を合わせた。
 底冷えのする不敵な笑み。これだけは、かつての上司を想起させる。

「コイツを売れるようにしてくれ。手段は問わん、派手にやればいい」



 黄色いレイバーの首が後方にスライドして、中からアンドレイが身を乗り出してくる。
 アンドレイ・ドラグノフ。名前の通りロシア出身だが、黒髪黒瞳で注視しなければ日本の街並みに溶け込める外見だった。
 “そういうオーダーがしてある”。

「イズウチさん、A9の初期設定、終わりました」
「ASURAの感触はどうだ」
「あまり辛くないですね。思ったほどには」

 ぐりぐりとこめかみを揉んで言う。
 間脳電流を拾ってレイバーの挙動に反映する、現行のフォーマットとは全く異なる制御系である。レイバーという機械の制御系としては理想系であると伊豆内は未だ信仰しているが、一方でパイロットから見た扱いやすさという観点からすれば甚だ問題が多い。
 以前は一度起動するごとに副腎など内分泌系への影響を調査しなければならないほどデリケートな代物だったが、技術革新とシステムの緩和を行ったことで幾らかマシにはなっているはずだった。
 適正があるとはいえ、アンドレイへの影響が思ったより少ないのはまだ医療スタッフが合流していない現状、明るい情報と言える。

「実働は当分先だ。今はゆっくり休んでくれ」
「わかりました」

 素直に頷いてA9から降りるドラグノフに、伊豆内は何処か拍子抜けを感じて頭を搔く。

「どうしました?」
「……いや、君は素直でいいな、と思ってね」
「はぁ……?」

 腕時計を見る。あと数時間で年が明ける。
 2005年。あの日々から、もう6年が経とうとしている。

「……企画7課は遠くなりにけり、だな」


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[No.659] 2018/01/02(Tue) 14:34:11 (63548時間28分前)

コテパト。なな。 (No.657への返信 / 7階層) - アズミ

 取調べというと刑事のイメージが強いだろうが、無論のこと交通事故ならば初動が交通課が行うし、レイバー犯罪ならば特車隊が行う。
 26日の早朝、17管区において発生したレイバー窃盗事件の容疑者3名は十神の一行に取り押さえられた後、到着した県警特車隊により逮捕。速やかに連行された。
 うち、擱座したタイラント2000から救出、確保された2名はお定まりの金に釣られた外国人労働者であった。供述から金の流れを辿っているが、恐らく教唆犯までは辿りつけまい。蜥蜴の尻尾は当然の如く切られる。
 問題は、最後の一人。
 ヘラクレス21の搭乗員であった、少年である。

「ねー、俺腹減っちゃったよ。カツ丼出ないの? カツ丼」

 今時珍しいほどステレオタイプな取調べ観でそんなことをのたまうこの少年は、どうやら単独犯であるようだった。
 他の2人は同一の手法で金が振り込まれ、示し合わせてレイバーを不正起動したわけだが、2人ともこの少年に関しては全く知らないという。
 状況的にもタイラント2機は計画性を以って逃走を図り警備用レイバーとの遭遇後も連携を取ることができたが、この少年に関してはいち早く遭遇した上、他の2名との合流を企図した様子がない。
 取調べは慎重に行わなければならなかった。無論カツ丼などもってのほかだ。
 相対する県警特車隊の2号機バックス、ソフィア・アグネート巡査部長はつれない態度で切って捨てる。

「古いドラマの見過ぎだな。調書の公平性を保つため、警察が被疑者に物品の授受を行うことはない」

 実際には武器になるものを与えない、という意図もある。丼程度の重量と硬度があれば、十分に凶器にはなり得るのだ。

「ちぇー」

 口を尖らせる少年は、10台半ば相応の幼い態度を崩さない。およそ万引き程度の軽犯罪もやらかすタイプには見えず、とてもレイバー窃盗犯には見えなかった。
 だが、現行犯である以上その事実は覆しようがない。
 むしろ、およそ犯罪と結びつかないパーソナリティを警戒すべき事項とソフィアは認識していた。

「氏名を述べなさい」
「シオン」
「……氏名、と言ったのだが」
「そんなこと言われても、苗字なんて無いしさ」
「無い?」
「いや、決めてはあるのかな? でもパスポートとかまだもらってなかったし、たぶん戸籍ー……とか? もないしなぁ。とりあえずシオンって呼ばれてたんだけど」

 突飛な告白だったが、そこはモスクワ市警からレイバー犯罪の最新事情を学ぶため研修で回されてきた才媛である。ソフィアは暫しの逡巡で一つの可能性に行き当たった。

「……貴様、密入国者か」
「あぁ、そうそう。そういう感じ」

 少年……シオンは事も無げに肯定する。

「人を探さなきゃなんなくてさ。逃げてきたんだよね、船から」

 件の現場は(護岸工事用のレイバー駐機場なのだから当然だが)港に近い。

「どの船だ、名前は」
「わかんないよそんなの」

 ソフィアは思わず舌打ちするが、シオンは気にした様子もなく続ける。

「レイバーがあればなんとでもなるって思ったんだけどなー……全然操縦方法違うんだもんさ」
「……?」

 眉をひそめる。
 レイバーは現在の主要なメーカー各社協力の下開発された「レイバー90」を元にしているため、操縦法はどのメーカーの商品でもだいたい同じだ。
 そこを詰めて質問する前に、背後のドアが開いた。

「へいへい、ソフィアちゃんそこまでだ」
「コウヤ」

 ソフィアの相方……2号機オフェンスの川西光矢巡査である。
 およそ彼女の国の基準からすると官憲らしさから大きく外れた軽薄な男であるが、レイバー搭乗員としての腕だけは彼女も信頼している。

「選手交代だってよ」

 くい、と背後を顎で示す。そこには背広の男が2人。

「捜査一課か」

 特車隊はあくまで警備業務を行う部署であり、本格的な事件捜査は刑事の領分だ。
 ソフィアも下手にごねる事はせず、大人しく刑事たちに席を譲った。
 が、最後に。

「……人を探していると言ったな、シオン」
「うん」

 察しは良いほうらしい。唐突な質問にもシオンは戸惑うことなく応えた。

「アンドレイとアリアっていうんだ。見つけたら教えてよ、お姉さん」


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[No.658] 2017/12/30(Sat) 00:02:36 (63635時間0分前)

コテパト。ろく。 (No.656への返信 / 6階層) - アズミ

 冷蔵庫に残ったキノコ類、小エビ、カニカマを適当に放り込んだ溶き卵を雑にオムレツにして白飯に乗せ、白だし、みりんと片栗粉で作った餡をかければ天津飯の出来上がりである。
 別に餡を省いてオムライスでもいいのだが、中華にすることで何となく“男の料理”という体裁を整えるのが志摩康一の美学であった。

「晩飯できたぞー」

 ユニットバスに声をかける。

「今出るー」

 シャワーを浴びて気を取り直したのか、中から返ったアリアの声はもう朝の調子であった。
 安堵して適当な皿に盛り、ちゃぶ台に並べる。蛇口を捻る音からユニットバスの扉が開くまで、余りに間がなかった辺りで若干嫌な予感がした。

「ごはん、なに?……わっ!?」
「服を!着ろ!」

 全裸で出てきたアリアの顔に脇に畳んでおいたバスタオルを叩きつける。
 アリアはタオルでそのまま頭をわしわしと拭きながら(つまり身体さえ拭いていなかった)口を尖らせる。

「全部洗濯しちゃったんだもん」
「なんで全部洗濯するんだよ!」
「今までビジネスホテル住まいだったから暫く洗濯できてなくてさー。このへんコインランドリー少ないよね」

 バビロン・プロジェクトの延長で人が増えにわかに需要は増大しているが、基本的には片田舎である。確かに根無し草にはまだまだ不便な地域であった。

「とにかくなんか着ろ!」
「いまさら気にしなくてもいいじゃん、さんざん見たんだし」
「憶えてないっつってんだろ!」

 だいたいにしてセックスしたからと言って裸が恥ずかしくないというのは何か違うと思うのは童貞の浅はかさであろうか。
 いやアリアの主張を認めれば童貞ではないのだが、覚えてないのだから心は間違いなく童貞なのだ。

「じゃあ」

 そこまでは、からかうような笑みがあった。
 が、そこで恥じらいが混じったらしく、視線が逸れる。
 「えー、と」と言い澱み、首にかけたタオルをきゅ、と持って心なし胸を隠した。

「今日……えっち、する?」

 言葉に詰まる。
 志摩康一はまだ童貞なので。少なくとも心は童貞なので。

「きょ」

 一も二もなく首を縦に振りたかったというのは、間違いなく本音なのだが。

「今日は……いい」

 怖気づいてしまうのも、仕方のないことだったのだ。
 心は童貞なので。

 結局、アリアには康一の服を適当に着ていてもらうことになった。



 アリアを疑うことはやめた。
 やめたのだが、だからと言ってセックスどころか同衾するほどの踏ん切りもつかず。
 結局、同僚を泊める時に使っているソファベッドを出して、アリアにはそこで寝てもらうことになった。

 寝床に入ってどれくらいが経っただろう。
 何だか眠れないことを自覚した直後なので、30分ほど後のような気もするし、0時を既に回っていたような気もする。

「……コーイチ、起きてるー?」

 アリアが話しかけてきた。
 軽く伺うが、背を向けたままで康一からは表情が見えない。

「起きてる」
「言い忘れてたけど、お金と鍵、戸棚に入れといたから」
「ん?……んー……」

 朝渡した5万のことだと気づくのに、少しかかった。

「無用心じゃない?」
「何が」
「アタシが泥棒だったらさ、お金と鍵持って出かけてる間に逃げてたよ」
「泥棒じゃないんだろ?」
「…………まぁ、そうだけど。昨日あったばっかりなんだからさ、疑うのがフツー……じゃない?」
「疑わないことにしたんだよ。……騙されてたらその時はその時だって、もう決めたんだ」
「…………そう」

 会話が途切れた。
 実際のところ。疑うことはやめたのだが、彼女の話を全て鵜呑みにしたわけではなかった。
 康一の個人情報ぐらい寝ている間に持ち物から調べようはあっただろうし、幾ら酔っていたからといって一夜を共にしておいて相手のことを全く憶えていないというのは聊か疑わしくはある。
 だが、疑うことはやめたのだ。信じられなくても、信じることにした。
 だから。

「……あのな、眠たければそのまま寝ちまっていいんだが」

 今、朝の話の続きをすることにした。
 寝たふりを決め込んでもいい、という逃げ場を用意した上で。

「俺、どうすればいい? その……なんつーか。責任の取り方、っつーか」

 返事はない。

「何でもするからさ」

 返事はない。
 間が持たなくて、言葉を捜す。

「……でも、出来ればお前さえよければ」
「一緒に」

 出しかけた言葉の続きを、アリアが継いだ。
 思わず押し黙る。たっぷり3分は開けて、アリアが続けた。

「……一緒に、いてもいい?」

 それは康一が言いかけた言葉とは微妙に違ったものだったが。

「暫くで、いいから。ここにいさせて」

 康一が出しかけた結論よりもゆっくりで、心地の良い条件だった。

「……金と鍵さ、やっぱしばらく持ってろよ」

 息を、吐く。
 少し眠気がやってきた。懸念が一つ片付いて、気が抜けたのかもしれない。

「歳が空けたら、財布と合鍵を作りにいこう」
「……ん」

 アリアの小さい返事を聞いて、康一は意識を眠りに委ねた。


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[No.657] 2017/12/28(Thu) 23:08:52 (63659時間54分前)

コテパト。ご。 (No.655への返信 / 5階層) - アズミ

 警備用レイバーが出動すれば、必ず何かが壊れる。
 壊れたならば直すのに当然金がかかり、当事者がそれを報告しなければ役所も会社も保険屋も金を出せない。
 なので、レイバー警備とはただ出動して暴れればいい職業ではなく、出動の後には必ずデスクワークが存在するのである。

「あ゛ー……終わった、終わった……」

 自機と確保したレイバーの破損状況、周辺の被害状況、出動状況を時間ごとに明記した業務報告、etc.
 康一が一通りの事務作業を終えた頃には、既に日が沈み始めていた。時計を見るとPM4:00ジャスト。結局半日労働である。
 しばしばする目を抑えていると、オフィスのドアが開いてぐったりとした一真が入ってきた。

「こっちも終わったー……いや、これから始まりなんだけど」

 自機の被害状況を纏めようにも、まず整備の検分に立ち会わなければならない。
 なので、一真のデスクワークはこれから始まりだった。
 まぁもともと今日は24時間勤務であるのだが、万事手の足りない十神では搭乗員とて検分の間ただ見ているだけというわけにはいかないし、破損状況によっては作業の間整備班や経理のお小言を聞き続けなければならないためこれが実に疲労感がある。
 押し合い圧し合いをやらかして膝のアクチュエーターをお釈迦にしたとあっては小言もさぞねちっこく長かったことだろう。

「レイバーの格闘戦は蝶のように舞い、蜂のように刺すを旨とすべし。っつわれてもなー」
「実際はそう上手くはいかんからな。まぁ、お疲れ」

 アウトレンジからの急所への一撃で無力化するというのは実際理想的で、整備班のお小言に頻出する決まり文句なのだが、視界の利かない夜間戦闘でそれをやってのけるのはもういっそ神業である。
 これから連中が丸一日はハンガーにカンヅメになると思えば所詮理想論と切り捨てるまではし難いが、まぁ……精進あるのみ、といったところか。

「んじゃ、こっちは片付いたしお先に失礼するわ」
「おやぁ? もうお帰りですか、康一さん」

 PCを片付けてデスクから立ち上がった康一に、茶の載ったお盆を片手に給湯室から顔を出して、スーが言う。
 なお事務仕事に精を出す若人に茶を入れてくれた……わけではない。自分で飲む分だけだ。いつものことである。

「報告書は提出したけど、なんか他にあるか?」
「いーえぇ、そういうわけじゃありませんが。いつもは仕事も無いのに無駄ーにオフィスに居座って青春を無為に消費しとる康一さんがこうもすぐお帰りになられるのは珍しいな、と思いまして?」
「ほっといてくれ。用事があるんだよ」
「ははぁ……さては」

 ず、と突き刺すように小指を突き出してくる。

「コレが出来ましたか」

 いつもの事ながら、この怪しげな中国人は妙に勘が鋭い。
 が、ここで動揺してはおちょくる隙を与えるだけだ。康一は努めてポーカーフェイスでこれを流した。

「……まぁな。んじゃ、お疲れ」

 大股開きでオフィスを出る。
 スーはしかし別段驚くでもなく、ほほうと一言漏らして茶を一啜り。
 視線を移すと。

「マジでか」

 こちらは目を点にした一真と、目があった。




 アパートに帰り着くと、部屋からもくもくと白煙が上がっていた。
 呆気に取られて立ち尽くしていると、ドアがどばん!と開いて中からのっしのっしと小柄な人影が出てくる。

「……よっす」
「よ、よっす」

 大家の娘だった。名をルーナ・セノ。若干12歳ながら、留守がちな母にかわりアパートの管理を代行している少女である。
 ルーナはけほ、けほ、と小さく咽た後、康一をじろりと見る。

「……次、彼女にフライパンを握らせたら出てってもらうから……」

 小さな声だが、明朗で鋭い宣告だった。
 今ひとつ状況が飲み込めないままこくこくと頷くと、再びルーナはのしのしと康一の横を通り抜けて管理人室に去っていく。
 ドアを開けると、換気扇が全力運転するキッチンの前で、大穴の開いたフライパンを片手に煤だらけのアリアが立っていた。

「な、なんじゃこりゃ!?」

 いや、何となく、朧気には分かる。たぶん、料理に失敗したのだ。
 そうとしか考えられないが、何をどう作ろうとしたらフライパンに大穴が開くのかがさっぱり解らない。

「コーイチ、ゴメン……夕食作ってあげようとしたんだけど……」

 アリアは大いに反省している様子だった。フライパンを片手に泣きそうな声をあげる。
 とりあえず康一は何を言っていいかわからず当惑し、

「何、作ろうとしたんだ」

 口を突いて出たのはそんな何とも間抜けな問いだった。

「パンケーキ……」
「夕食にパンケーキぃ?」

 腹持ちは、まぁいいかもしれないが。

「キキが作ってたから」
「ジブリかよ……」

 13歳の魔女見習いならともかく、21歳男性警備員の晩飯としては聊かファンシーに過ぎる。
 というかパンケーキを作ろうとして何でフライパンに穴が開くのか。そもそも失敗する時点でなかなかハードルが高いと思うのだ、パンケーキ。

「あー……とりあえず顔見せろ、顔」

 こうも反省していると責める気にもならず、ひとまずハンカチで顔の煤を拭いてやる。
 ついでにちーん、と鼻をかんできたのも、まぁ見逃すことにした。

「まず風呂入っちまえ、煤だらけだぞお前。その間に飯は用意するから」
「ん……ゴメン」

 アリアをユニットバスに追いやってから、康一は嘆息して雑巾を手に取った。


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[No.656] 2017/12/26(Tue) 23:31:12 (63707時間31分前)


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