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No.14へ返信
潜入捜査のアレやコレ
- たきゆき -
2019/02/16(Sat) 02:58:40
[No.4]
└
Re: 潜入捜査のアレやコレ
- たきゆき -
2019/02/16(Sat) 02:59:35
[No.5]
└
Re: 潜入捜査のアレやコレ
- たきゆき -
2019/02/16(Sat) 03:00:13
[No.6]
└
Re: 潜入捜査のアレやコレ
- たきゆき -
2019/02/16(Sat) 03:00:52
[No.7]
└
Re: 潜入捜査のアレやコレ※流血表現有
- たきゆき -
2019/04/30(Tue) 01:27:56
[No.13]
└
Re: 潜入アレやコレ6
- たきゆき -
2019/05/15(Wed) 01:58:17
[No.14]
└
後日談のような感じ
- たきゆき -
2019/07/26(Fri) 01:37:24
[No.23]
Re: 潜入アレやコレ6
(No.13 への返信) - たきゆき
今、目の前には二枚の書類があった。
一枚を手にして、目を通す。
書かれていたのは、事の発端となる案件だった。
滝雪の論文が、否、六花の論文が流出したのは何故だったのか。
犯人は、六花が引きこもり、研究論文を作成する父親所有の屋敷の使用人だった。
滝雪にとっても、数少ない年の近い知り合いで、研究室の清掃を頼める程度には親しかったのだろう。
滝雪がハンターになり、家に帰る回数が減り、顔を合わせることが減った。
だから知らなかった。
そんな彼女の家族が病気に倒れていたなど。
借金を返済しなくてもよい代わりに、研究論文を盗んでこいと脅されていたなど。
これまで雇い入れ大事にしてくれた家と、家族。それらを秤にかけて、悩んで悩んで。
そして、選んだ。
ゴミ箱に捨てたものだったら、きっと研究発表がかぶることはないだろう。
捨てたんだから、大した結果ではないだろう。きっとこれを持って行ったところで、失敗になるに違いない。だって、捨てたんだもの。
そう自身に言い聞かせながら、持ち出して、結果起こったのが今回の騒動だった。
このことは、ギルドナイトが調べ上げるより先に、滝雪本人が知るところとなり、その後始末として飛び出したというのが、独断行動の経緯だ。
また、責めたのだろうか、という考えた過ぎって、奥歯を強く噛みしめた。
『あの時』、崩壊のきっかけを見落として、気付かなかった。
そのせいで後手に回ることになったことを後悔していた滝雪の姿が脳裏に浮かぶ。
『もっと早く気付いて入れば』
小さく呟いた声を、覚えている。
同じように、使用人の彼女のことに、もっと早く気付いていれば、と。
いつもまっすぐ伸ばしている背中を丸めた、後ろ姿を幻視する。
バサリと投げ捨てるようにして、目を通していた書類を机に投げ、もう一枚の書類を手に取った。
それはカルテだった。
書類の上部に聞き慣れない単語が記されている。
『過沈静』
難しい医療用語が並んでいるが、要は沈静作用のある薬物が効きすぎた状態であるということらしい。
幸いにも内臓の機能低下は見られず、数日中に意識の回復は見込まれるものの、それまでの体力低下と衰弱がネックとなり、いつ目覚めるとははっきりしない。
患者の体力低下が著しかった場合は、そのまま目覚めなかったことも十分に考えられる。 ただ眠っているだけの現状は、いくらか衰えようとも基本はハンターとして頑強な肉体を保っていたが故の幸運であろう。
そのようなことを記されたカルテの端から端までをきちんと読み、それもまた同様に机に投げて、大きくため息をつく。
あの日から一週間。
滝雪は未だに目を覚まさない。
時刻は明け方近く。
日が昇り、西の空が白々むまであと僅かという時間帯。
音を立てないように静かに足を踏み入れた部屋からは、病院独特の消毒液の匂いがした。
部屋の中央にあるベッドの上にはここ数日と全く変わらない光景。
白いシーツに散らばる長い茶色の髪。
掛け布団の外に出された入院衣に包まれた腕には点滴の管がつながり、指先は真っ白な包帯で厳重に包まれている。
ベッド横に置かれた椅子を軽くひいてそこに腰掛け、その指先をゆっくりと包んだ。
指先で感じるのは包帯の布の感覚と、その向こうからじわりと伝わるほのかな熱。
数日前はその熱すらなかったのを思いだし、少し肩から力が抜けた。
そのまま重力に従うように頭を垂れ俯き、 額をベッド柵に落とし、深く呼吸をする。
後始末で深夜まで仕事をしては仮眠明けに病室を覗く日々も今日で何日目か。
「……ユキ」
目を閉じ、ぽつりとその名を呟く。
と。
ゆるり、と包帯に包まれた指先が曲がった。
「…………ぉ、く……」
「っ!?」
掠れた囁きに、がばりと顔を起こした。
ぼんやりと焦点の定まらない、黒い瞳が、それでも目を凝らすようにしてこちらを見ていた。
「ユキ! 目ぇ覚めたか!!」
「れ、お、くん」
「待っとれ! 今医者呼ぶ」
「だいじょぶ」
「っだいじょぶじゃなくて」
「へーき。ん゛ん!! 何日、寝てた?」
言葉を重ねるごとに、言葉がはっきりし、焦点があっていく滝雪に、体調に緊急性がないと察し、浮かせかけた腰を下ろす。
「一週間だ」
「あっちゃ、ぁ……。今の体感から、して、一日とかじゃない、かなって思ったけど、思った、より」
目線が厳しいものになるのは止められなかった。
「何を、暢気に」
「ごめん」
「許さん」
憔悴の気配が漂う頬にへらりとした笑みを浮かべて謝罪した滝雪を一言で切って捨てる。
「……ごめん、ってば」
「許さん」
「レオくん」
繰り返す謝罪をやはりはっきりと断わると、困ったように名前を呼ばれた。
「絶対に、許しちゃらん」
「……その、心配をかけたことに関してはそのぉ」
「お前が」
目を泳がせながら何かを言おうとした滝雪の言葉を遮る。
「俺にお前を、看取らせようしたことなんぞ、許すワケがない」
「っつ!」
ぎゅっと包帯越しの指を強く握った事で、未だ直りきらぬ傷が痛みうめき声を上げる。
それでも手の力を抜くことなく、厳しい目で顔を覗きこんだ。
「看取らせる、つもりは」
「あーな、目ぇ覚ます算段はあったんだろうよ。ほんでも、あの瞬間」
最後のまぶたを閉ざす直前のごめんの瞬間。
「ちっとでも、頭を過ぎった。違うか?」
このままもし、目が覚めなかったら、自分の最後を見届けるのはレオニノになるのでは、と。
「…………あー」
言葉が続かない。それが答えだ。
開きかけた口を閉じて、しばし迷って、握られているのとは反対の手を伸ばす。
緩慢な動きで伸ばされる手を、避けることなく受け入れられたレオニノの頬に添える。
「うん。ごめん」
「せやから、許さんち言うて」
「だって、来てくれるんだもの」
「はぁ?」
「一人で、やらなきゃって思ってたのに、来てくれるし。いてくれるし。最後まで、自分もやりたいじゃない」
それはあの狩りに強引に参戦したことだろう。
「でもまぁ、最後ちょっと弱気になっちゃったのはごめん」
罰が悪そうに眉を落として、慰めるように頬を撫でる。
「怖い思いさせて、傷つけてゴメンね」
普段なら子供扱いするなと言って手を離させるのだが。
深々とため息をついて、ぐっと身を乗り出して頬をすり寄せると、目の前の体がぎくりと強ばった。
「何や」
「い、いや、ほら嫌がるかなって思ったから」
僅かに頬が赤くなって、目が泳ぎ始める滝雪に少し面白くなってきて。
「あーー傷ついた傷ついた。誰のせいやろな?」
「もー、ごめんってば」
ぐりぐりと頭を寄せると、弱り切った顔になる。
忙しなく目線が泳ぐのは、自分を意識し始めた証拠でもあるので、悪い気はしない。
「反省したか」
「しました!」
「じゃあ、当分ここに監禁な」
「……は!?」
突然飛び出した不穏な単語にぎょっとして目を見開く。
「え!? 何それ!?」
あわあわと焦りながら上半身を起こそうとする肩を軽く押さえて動きを押さえ、声を改める。
「G級ハンター滝雪。今回の案件、ギルドへの報告なく独断行動を行った件について、危険人物と判断。ギルドナイトの権限にて、身柄を拘束させてもらう。外部への連絡も一切禁止だ」
「は!? え、待って、待って!?」
「待たない。黙って、ココで養生しぃや」
「え、えぇぇ…」
にやりと悪い笑みを浮かべるレオニノを、未だ状況を把握しかねた、困惑の表情で見あげるのだった。
[No.14]
2019/05/15(Wed) 01:58:17
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> 今、目の前には二枚の書類があった。 > 一枚を手にして、目を通す。 > 書かれていたのは、事の発端となる案件だった。 > 滝雪の論文が、否、六花の論文が流出したのは何故だったのか。 > 犯人は、六花が引きこもり、研究論文を作成する父親所有の屋敷の使用人だった。 > 滝雪にとっても、数少ない年の近い知り合いで、研究室の清掃を頼める程度には親しかったのだろう。 > 滝雪がハンターになり、家に帰る回数が減り、顔を合わせることが減った。 > だから知らなかった。 > そんな彼女の家族が病気に倒れていたなど。 > 借金を返済しなくてもよい代わりに、研究論文を盗んでこいと脅されていたなど。 > これまで雇い入れ大事にしてくれた家と、家族。それらを秤にかけて、悩んで悩んで。 > そして、選んだ。 > ゴミ箱に捨てたものだったら、きっと研究発表がかぶることはないだろう。 > 捨てたんだから、大した結果ではないだろう。きっとこれを持って行ったところで、失敗になるに違いない。だって、捨てたんだもの。 > そう自身に言い聞かせながら、持ち出して、結果起こったのが今回の騒動だった。 > このことは、ギルドナイトが調べ上げるより先に、滝雪本人が知るところとなり、その後始末として飛び出したというのが、独断行動の経緯だ。 > また、責めたのだろうか、という考えた過ぎって、奥歯を強く噛みしめた。 > 『あの時』、崩壊のきっかけを見落として、気付かなかった。 > そのせいで後手に回ることになったことを後悔していた滝雪の姿が脳裏に浮かぶ。 > 『もっと早く気付いて入れば』 > 小さく呟いた声を、覚えている。 > 同じように、使用人の彼女のことに、もっと早く気付いていれば、と。 > いつもまっすぐ伸ばしている背中を丸めた、後ろ姿を幻視する。 > バサリと投げ捨てるようにして、目を通していた書類を机に投げ、もう一枚の書類を手に取った。 > それはカルテだった。 > 書類の上部に聞き慣れない単語が記されている。 > 『過沈静』 > 難しい医療用語が並んでいるが、要は沈静作用のある薬物が効きすぎた状態であるということらしい。 > 幸いにも内臓の機能低下は見られず、数日中に意識の回復は見込まれるものの、それまでの体力低下と衰弱がネックとなり、いつ目覚めるとははっきりしない。 > 患者の体力低下が著しかった場合は、そのまま目覚めなかったことも十分に考えられる。 ただ眠っているだけの現状は、いくらか衰えようとも基本はハンターとして頑強な肉体を保っていたが故の幸運であろう。 > そのようなことを記されたカルテの端から端までをきちんと読み、それもまた同様に机に投げて、大きくため息をつく。 > > あの日から一週間。 > 滝雪は未だに目を覚まさない。 > > > 時刻は明け方近く。 > 日が昇り、西の空が白々むまであと僅かという時間帯。 > 音を立てないように静かに足を踏み入れた部屋からは、病院独特の消毒液の匂いがした。 > 部屋の中央にあるベッドの上にはここ数日と全く変わらない光景。 > 白いシーツに散らばる長い茶色の髪。 > 掛け布団の外に出された入院衣に包まれた腕には点滴の管がつながり、指先は真っ白な包帯で厳重に包まれている。 > ベッド横に置かれた椅子を軽くひいてそこに腰掛け、その指先をゆっくりと包んだ。 > 指先で感じるのは包帯の布の感覚と、その向こうからじわりと伝わるほのかな熱。 > 数日前はその熱すらなかったのを思いだし、少し肩から力が抜けた。 > そのまま重力に従うように頭を垂れ俯き、 額をベッド柵に落とし、深く呼吸をする。 > 後始末で深夜まで仕事をしては仮眠明けに病室を覗く日々も今日で何日目か。 > 「……ユキ」 > 目を閉じ、ぽつりとその名を呟く。 > と。 > ゆるり、と包帯に包まれた指先が曲がった。 > 「…………ぉ、く……」 > 「っ!?」 > 掠れた囁きに、がばりと顔を起こした。 > ぼんやりと焦点の定まらない、黒い瞳が、それでも目を凝らすようにしてこちらを見ていた。 > 「ユキ! 目ぇ覚めたか!!」 > 「れ、お、くん」 > 「待っとれ! 今医者呼ぶ」 > 「だいじょぶ」 > 「っだいじょぶじゃなくて」 > 「へーき。ん゛ん!! 何日、寝てた?」 > 言葉を重ねるごとに、言葉がはっきりし、焦点があっていく滝雪に、体調に緊急性がないと察し、浮かせかけた腰を下ろす。 > 「一週間だ」 > 「あっちゃ、ぁ……。今の体感から、して、一日とかじゃない、かなって思ったけど、思った、より」 > 目線が厳しいものになるのは止められなかった。 > 「何を、暢気に」 > 「ごめん」 > 「許さん」 > 憔悴の気配が漂う頬にへらりとした笑みを浮かべて謝罪した滝雪を一言で切って捨てる。 > 「……ごめん、ってば」 > 「許さん」 > 「レオくん」 > 繰り返す謝罪をやはりはっきりと断わると、困ったように名前を呼ばれた。 > 「絶対に、許しちゃらん」 > 「……その、心配をかけたことに関してはそのぉ」 > 「お前が」 > 目を泳がせながら何かを言おうとした滝雪の言葉を遮る。 > 「俺にお前を、看取らせようしたことなんぞ、許すワケがない」 > 「っつ!」 > ぎゅっと包帯越しの指を強く握った事で、未だ直りきらぬ傷が痛みうめき声を上げる。 > それでも手の力を抜くことなく、厳しい目で顔を覗きこんだ。 > 「看取らせる、つもりは」 > 「あーな、目ぇ覚ます算段はあったんだろうよ。ほんでも、あの瞬間」 > 最後のまぶたを閉ざす直前のごめんの瞬間。 > 「ちっとでも、頭を過ぎった。違うか?」 > このままもし、目が覚めなかったら、自分の最後を見届けるのはレオニノになるのでは、と。 > 「…………あー」 > 言葉が続かない。それが答えだ。 > 開きかけた口を閉じて、しばし迷って、握られているのとは反対の手を伸ばす。 > 緩慢な動きで伸ばされる手を、避けることなく受け入れられたレオニノの頬に添える。 > 「うん。ごめん」 > 「せやから、許さんち言うて」 > 「だって、来てくれるんだもの」 > 「はぁ?」 > 「一人で、やらなきゃって思ってたのに、来てくれるし。いてくれるし。最後まで、自分もやりたいじゃない」 > それはあの狩りに強引に参戦したことだろう。 > 「でもまぁ、最後ちょっと弱気になっちゃったのはごめん」 > 罰が悪そうに眉を落として、慰めるように頬を撫でる。 > 「怖い思いさせて、傷つけてゴメンね」 > 普段なら子供扱いするなと言って手を離させるのだが。 > 深々とため息をついて、ぐっと身を乗り出して頬をすり寄せると、目の前の体がぎくりと強ばった。 > 「何や」 > 「い、いや、ほら嫌がるかなって思ったから」 > 僅かに頬が赤くなって、目が泳ぎ始める滝雪に少し面白くなってきて。 > 「あーー傷ついた傷ついた。誰のせいやろな?」 > 「もー、ごめんってば」 > ぐりぐりと頭を寄せると、弱り切った顔になる。 > 忙しなく目線が泳ぐのは、自分を意識し始めた証拠でもあるので、悪い気はしない。 > 「反省したか」 > 「しました!」 > 「じゃあ、当分ここに監禁な」 > 「……は!?」 > 突然飛び出した不穏な単語にぎょっとして目を見開く。 > 「え!? 何それ!?」 > あわあわと焦りながら上半身を起こそうとする肩を軽く押さえて動きを押さえ、声を改める。 > 「G級ハンター滝雪。今回の案件、ギルドへの報告なく独断行動を行った件について、危険人物と判断。ギルドナイトの権限にて、身柄を拘束させてもらう。外部への連絡も一切禁止だ」 > 「は!? え、待って、待って!?」 > 「待たない。黙って、ココで養生しぃや」 > 「え、えぇぇ…」 > にやりと悪い笑みを浮かべるレオニノを、未だ状況を把握しかねた、困惑の表情で見あげるのだった。
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