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No.23へ返信
潜入捜査のアレやコレ
- たきゆき -
2019/02/16(Sat) 02:58:40
[No.4]
└
Re: 潜入捜査のアレやコレ
- たきゆき -
2019/02/16(Sat) 02:59:35
[No.5]
└
Re: 潜入捜査のアレやコレ
- たきゆき -
2019/02/16(Sat) 03:00:13
[No.6]
└
Re: 潜入捜査のアレやコレ
- たきゆき -
2019/02/16(Sat) 03:00:52
[No.7]
└
Re: 潜入捜査のアレやコレ※流血表現有
- たきゆき -
2019/04/30(Tue) 01:27:56
[No.13]
└
Re: 潜入アレやコレ6
- たきゆき -
2019/05/15(Wed) 01:58:17
[No.14]
└
後日談のような感じ
- たきゆき -
2019/07/26(Fri) 01:37:24
[No.23]
後日談のような感じ
(No.14 への返信) - たきゆき
「あのさぁ…」
白を基調とした室内。
窓は開け放たれた上で白いレースのカーテンが設置されており、時折風で揺れる。
そんな景色を見ながらぽつりと声を漏らす。
「んー?」
それに生返事をしながら、手の中のナイフをなめらかに滑らせた彼の手元からは、しゃりしゃりと断続的な音がしている。
「仮にもギルドナイトの頂に立つ人間が、こんなに暇なわけないよね?」
呆れたような口調とジド目を、ベッドサイドの椅子に腰掛け、リンゴを向いている男に向ける。
「仮にもってどーゆー意味や」
ちらりとも視線を向けずに、むき終わった一切れをぐいっと口元に突き出されてため息。
「だぁから、なんっでレオ君が私に付き添ってリンゴなんか剥いてんの!って言ってるの!」
ずいっとレオニノに向けた滝雪の手は、添え木代わりの分厚い布きれごと指先までぐるぐる巻きにされている。
「お前のその手じゃ、リンゴも剥けんじゃろ」
「いやそれはそうだけど!」
「普段なら回復薬とかって手ェもあるんに、お前が変なモン飲んどるせいで使えんからしゃーない」
「う、うぐ……そ、それは、その、悪かったけど」
どういう副作用が出るかもはっきり分からない薬を飲んだ上、昏睡状態におちいった滝雪は、現在その薬が抜けきるまで一切の薬剤を使用禁止状態であった。
他の薬を使用することで化学反応がおきないとも限らない。
故に、自分の本来の治癒能力に頼るしかない。
ずる剥けになった手のひらの回復は、普段を思えば、亀の這うような速度でしか回復していかない。
それらすべてが自業自得である以上、そこを突かれると目を泳がせて謝罪するしかない。
だが、本題はそこではなく。
「それにお前は今、危険人物としてギルドナイトで監禁中やぞ。見張りくらい付くにきまっとる」
「だ、だからって、忙しいレオくんじゃなくても良くない?」
「お前は油断ならん」
「はあ?」
「人たらしだからな。下手な人選だと丸め込まれかねんやろ」
「しっつれいな!人を詐欺師みたいに」
「悪意がないだけ、余計手に追えん」
「えーー。大袈裟な」
「心配いらん。適切な人材が来るまでの繋ぎや」
「適切な人材ぃ」
眉間に眉を寄せた滝雪に、いいから食えと言わんばかりに切ったリンゴをつき出す。
レオニノの表情は穏やかでフラットだ。
滝雪の苦情を気にした様子もない。
わかっているからだ。本当は。
滝雪だって、レオニノがここにいるのは、必要性にかられたからだと。私情が全くないとは言えないし、かこつけてる部分もあろうが、それだけではない。
だからこの会話はただのじゃれ合いに過ぎない。
理解しているからこそ。
仕方ないなぁと言わんばかりの表情でがぶりと噛みついた滝雪の眉間からは速攻で皺が消える。
「ん。美味しい!」
「やろ?」
口のなかに広がる果汁の瑞々しさに、歓声をあげて微笑み、穏やかな時間を楽しんでいると、どこかから廊下を駆ける音が響いた。
「ん?」
「……来たな」
もぐもぐしながら目で問う滝雪に応えることなく独白して素早くリンゴを皿に下ろして立ち上がる。
と同時に、バアン!!と激しい音を立ててドアが跳ね開けられた。
「姐さん!?!」
飛び込んできたのは赤髪の女性ハンターだった。
「ヴェレ!」
その姿を見た瞬間、嬉しげにトーンをあげた滝雪とは裏腹に、ハンター、ヴェレッタはもどかしげに声を荒げる。
「怪我して倒れて、入院中って何事! おまけに身柄拘束って!」
心配そうに顔を曇らせて駆け寄り、急いでベッドの上の姿を目で検分する。
「手、どうしたの? もう、また一人で無茶したんでしょ!!」
「あっ。いやいや大したことないから」
「自作の効能不明な薬で痛み消して、ハンマー握って大暴れして、手の平の皮膚ほぼ全部剥けたんだよな」
「ちょ、レオくん!」
「おまけにそのまま昏倒して、昏睡状態」
「レオ君、しーっしーっ」
明らかに、「やばい!」という顔をした滝雪の横で重ねられた暴露に、その表情が悲しげに曇っていく。
「い、いやあのね? 本当にもう大丈夫だから! 色々あったトラブルはかなり序盤でレオくん来てくれたし! 怪我はね、その久しぶりの狩りではしゃいじゃった結果っていうか。その……えと、ご、ごめんね?」
「ねぇさぁん?」
「ひえ」
心配と怒りとを混ぜ混んだ表情に、あわあわと手を意味もなくばたつかせながら謝罪を重ねる。
「うん。やっぱり、適任やな」
うんうんと頷きながら言うレオニノに、滝雪は恨めしげな眼差しを、ヴェレッタは訝しげな眼差しを向ける。
「適任って」
「やから、コイツの見張り」
「見張り?」
「まぁ、任務やな。コイツが他の誰かと接触せんように見張れ」
「接触ってむぐっ」
ベッドサイドのテーブルにリンゴののった皿を置きながらの言葉に、思わず反論しようとした滝雪の口に、リンゴの一欠けをぐいっとねじ込んで言葉を封じる。
「ギルドナイトに、いや、俺に不利益がないようにするため、元凶になった盗人を庇うため、自分一人で責任を背負おうと画策しかねんコイツを見張れ。一切他者との接触を許すな」
厳しく強い口調で言いながら、ヴェレッタを見つめる。
その目を受けてヴェレッタはこくりと頷いた。
「了解」
「じゃ、ここは頼んだ。ユキ、大人しぃしとけよー」
恨めしげな顔のままの滝雪にもしっかりと釘を刺してから、レオニノが部屋を後にする。
ぱたんとドアが閉まるのと、口に放り込まれたリンゴを食べ終わるのがほぼ同時。
落ちた沈黙に、ハハ、と乾いた笑いが漏れた。
「ばれてーら」
「ばれないと思う方が嘘でしょ」
呆れかえった声に、へにゃりと笑う滝雪の横、レオニノが先ほどまで座っていた椅子に座る。
「姐さんさ」
ひょいっとその顔を覗き込んで、その琥珀のような瞳が真摯な光を宿す。
「あの頃と変わらず、私達のこと好き?」
「勿論よ。何を言うの。当たり前じゃない」
その問いに驚いたように目を瞬き、憮然と返すのを受けて、頷く。
「うん。私も変わらず姐さんが大好き。だからさ、姐さんが私達を守りたいって思ってくれるように、私達も守りたいって思うの。前みたいに一緒にいれないから、前よりもずっと」
姐さんもそう? と問われて、ゆっくりと苦笑した。
そうだと答えるように頷きながらも、両手を伸ばして、その頬を包む。
指先は白い包帯に包まれているし、固定具のせいで感覚は伝わらない。だから顔を引き寄せて、こつんと互いの額を触れあわせた。
はっきりと自分の心情を直球で伝えてくる。ヴェレッタのそういうところに弱いのは今も昔も変わらないのを思い知る。
「いつの間にそんな殺し文句を言うようになったのかしら」
「姐さんの影響じゃない?」
「えーー。嘘だーー」
「姐さん自覚ないんだもん」
至近距離で笑い合いながら、甘えるようにハグするのを受け入れる。
「仕方ない。諦めて大人しくしとこうかな」
「やったね!」
「せっかく久しぶりに会ったんだし、最近のヴェレについてお話聞きたいなぁ?」
「姐さんの話もね!」
仕方ない、肩を落として見せてから、愛おしげな眼差しでヴェレッタに微笑む滝雪に、ヴェレッタも屈託ない笑みを返す。
身柄拘束という不穏極まりない単語で作られた庇護の檻にて、当分行動を制限されることが決定しながらも、滝雪は幸せそうに笑うのだった。
[No.23]
2019/07/26(Fri) 01:37:24
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> 「あのさぁ…」 > 白を基調とした室内。 > 窓は開け放たれた上で白いレースのカーテンが設置されており、時折風で揺れる。 > そんな景色を見ながらぽつりと声を漏らす。 > 「んー?」 > それに生返事をしながら、手の中のナイフをなめらかに滑らせた彼の手元からは、しゃりしゃりと断続的な音がしている。 > 「仮にもギルドナイトの頂に立つ人間が、こんなに暇なわけないよね?」 > 呆れたような口調とジド目を、ベッドサイドの椅子に腰掛け、リンゴを向いている男に向ける。 > 「仮にもってどーゆー意味や」 > ちらりとも視線を向けずに、むき終わった一切れをぐいっと口元に突き出されてため息。 > 「だぁから、なんっでレオ君が私に付き添ってリンゴなんか剥いてんの!って言ってるの!」 > ずいっとレオニノに向けた滝雪の手は、添え木代わりの分厚い布きれごと指先までぐるぐる巻きにされている。 > 「お前のその手じゃ、リンゴも剥けんじゃろ」 > 「いやそれはそうだけど!」 > 「普段なら回復薬とかって手ェもあるんに、お前が変なモン飲んどるせいで使えんからしゃーない」 > 「う、うぐ……そ、それは、その、悪かったけど」 > どういう副作用が出るかもはっきり分からない薬を飲んだ上、昏睡状態におちいった滝雪は、現在その薬が抜けきるまで一切の薬剤を使用禁止状態であった。 > 他の薬を使用することで化学反応がおきないとも限らない。 > 故に、自分の本来の治癒能力に頼るしかない。 > ずる剥けになった手のひらの回復は、普段を思えば、亀の這うような速度でしか回復していかない。 > それらすべてが自業自得である以上、そこを突かれると目を泳がせて謝罪するしかない。 > だが、本題はそこではなく。 > 「それにお前は今、危険人物としてギルドナイトで監禁中やぞ。見張りくらい付くにきまっとる」 > 「だ、だからって、忙しいレオくんじゃなくても良くない?」 > 「お前は油断ならん」 > 「はあ?」 > 「人たらしだからな。下手な人選だと丸め込まれかねんやろ」 > 「しっつれいな!人を詐欺師みたいに」 > 「悪意がないだけ、余計手に追えん」 > 「えーー。大袈裟な」 > 「心配いらん。適切な人材が来るまでの繋ぎや」 > 「適切な人材ぃ」 > 眉間に眉を寄せた滝雪に、いいから食えと言わんばかりに切ったリンゴをつき出す。 > レオニノの表情は穏やかでフラットだ。 > 滝雪の苦情を気にした様子もない。 > わかっているからだ。本当は。 > 滝雪だって、レオニノがここにいるのは、必要性にかられたからだと。私情が全くないとは言えないし、かこつけてる部分もあろうが、それだけではない。 > だからこの会話はただのじゃれ合いに過ぎない。 > 理解しているからこそ。 > 仕方ないなぁと言わんばかりの表情でがぶりと噛みついた滝雪の眉間からは速攻で皺が消える。 > 「ん。美味しい!」 > 「やろ?」 > 口のなかに広がる果汁の瑞々しさに、歓声をあげて微笑み、穏やかな時間を楽しんでいると、どこかから廊下を駆ける音が響いた。 > 「ん?」 > 「……来たな」 > もぐもぐしながら目で問う滝雪に応えることなく独白して素早くリンゴを皿に下ろして立ち上がる。 > と同時に、バアン!!と激しい音を立ててドアが跳ね開けられた。 > 「姐さん!?!」 > 飛び込んできたのは赤髪の女性ハンターだった。 > 「ヴェレ!」 > その姿を見た瞬間、嬉しげにトーンをあげた滝雪とは裏腹に、ハンター、ヴェレッタはもどかしげに声を荒げる。 > 「怪我して倒れて、入院中って何事! おまけに身柄拘束って!」 > 心配そうに顔を曇らせて駆け寄り、急いでベッドの上の姿を目で検分する。 > 「手、どうしたの? もう、また一人で無茶したんでしょ!!」 > 「あっ。いやいや大したことないから」 > 「自作の効能不明な薬で痛み消して、ハンマー握って大暴れして、手の平の皮膚ほぼ全部剥けたんだよな」 > 「ちょ、レオくん!」 > 「おまけにそのまま昏倒して、昏睡状態」 > 「レオ君、しーっしーっ」 > 明らかに、「やばい!」という顔をした滝雪の横で重ねられた暴露に、その表情が悲しげに曇っていく。 > 「い、いやあのね? 本当にもう大丈夫だから! 色々あったトラブルはかなり序盤でレオくん来てくれたし! 怪我はね、その久しぶりの狩りではしゃいじゃった結果っていうか。その……えと、ご、ごめんね?」 > 「ねぇさぁん?」 > 「ひえ」 > 心配と怒りとを混ぜ混んだ表情に、あわあわと手を意味もなくばたつかせながら謝罪を重ねる。 > 「うん。やっぱり、適任やな」 > うんうんと頷きながら言うレオニノに、滝雪は恨めしげな眼差しを、ヴェレッタは訝しげな眼差しを向ける。 > 「適任って」 > 「やから、コイツの見張り」 > 「見張り?」 > 「まぁ、任務やな。コイツが他の誰かと接触せんように見張れ」 > 「接触ってむぐっ」 > ベッドサイドのテーブルにリンゴののった皿を置きながらの言葉に、思わず反論しようとした滝雪の口に、リンゴの一欠けをぐいっとねじ込んで言葉を封じる。 > 「ギルドナイトに、いや、俺に不利益がないようにするため、元凶になった盗人を庇うため、自分一人で責任を背負おうと画策しかねんコイツを見張れ。一切他者との接触を許すな」 > 厳しく強い口調で言いながら、ヴェレッタを見つめる。 > その目を受けてヴェレッタはこくりと頷いた。 > 「了解」 > 「じゃ、ここは頼んだ。ユキ、大人しぃしとけよー」 > 恨めしげな顔のままの滝雪にもしっかりと釘を刺してから、レオニノが部屋を後にする。 > ぱたんとドアが閉まるのと、口に放り込まれたリンゴを食べ終わるのがほぼ同時。 > 落ちた沈黙に、ハハ、と乾いた笑いが漏れた。 > 「ばれてーら」 > 「ばれないと思う方が嘘でしょ」 > 呆れかえった声に、へにゃりと笑う滝雪の横、レオニノが先ほどまで座っていた椅子に座る。 > 「姐さんさ」 > ひょいっとその顔を覗き込んで、その琥珀のような瞳が真摯な光を宿す。 > 「あの頃と変わらず、私達のこと好き?」 > 「勿論よ。何を言うの。当たり前じゃない」 > その問いに驚いたように目を瞬き、憮然と返すのを受けて、頷く。 > 「うん。私も変わらず姐さんが大好き。だからさ、姐さんが私達を守りたいって思ってくれるように、私達も守りたいって思うの。前みたいに一緒にいれないから、前よりもずっと」 > 姐さんもそう? と問われて、ゆっくりと苦笑した。 > そうだと答えるように頷きながらも、両手を伸ばして、その頬を包む。 > 指先は白い包帯に包まれているし、固定具のせいで感覚は伝わらない。だから顔を引き寄せて、こつんと互いの額を触れあわせた。 > はっきりと自分の心情を直球で伝えてくる。ヴェレッタのそういうところに弱いのは今も昔も変わらないのを思い知る。 > 「いつの間にそんな殺し文句を言うようになったのかしら」 > 「姐さんの影響じゃない?」 > 「えーー。嘘だーー」 > 「姐さん自覚ないんだもん」 > 至近距離で笑い合いながら、甘えるようにハグするのを受け入れる。 > 「仕方ない。諦めて大人しくしとこうかな」 > 「やったね!」 > 「せっかく久しぶりに会ったんだし、最近のヴェレについてお話聞きたいなぁ?」 > 「姐さんの話もね!」 > 仕方ない、肩を落として見せてから、愛おしげな眼差しでヴェレッタに微笑む滝雪に、ヴェレッタも屈託ない笑みを返す。 > 身柄拘束という不穏極まりない単語で作られた庇護の檻にて、当分行動を制限されることが決定しながらも、滝雪は幸せそうに笑うのだった。
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