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No.1648へ返信

all 親から子へ・・・プロローグ - takaci - 2008/07/08(Tue) 21:39:01 [No.1453]
親から子へ・・・1 - takaci - 2008/07/13(Sun) 18:00:05 [No.1461]
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親から子へ・・・14 - takaci - 2024/11/08(Fri) 17:42:41 [No.1648]
親から子へ・・・15 - takaci - 2024/11/08(Fri) 21:07:24 [No.1649]
親から子へ・・・16 - takaci - 2024/11/09(Sat) 21:43:00 [No.1650]
親から子へ・・・17〜Fin〜 - takaci - 2024/11/10(Sun) 10:34:28 [No.1651]


親から子へ・・・14 (No.1647 への返信) - takaci

「・・・あたしの、本当のお母さんは、東城綾なんですね・・・」









さつきに事実を告げられたあや乃は少なからずショックを受けていた。









「そう。生みの親は東城さんで、育ての親が西野さん。だからあや乃ちゃんにはふたりのお母さんがいるとも言えるよ」









さつきは優しい口調で事実を告げる。









「じゃあ、尚哉は本当の弟ではないんですね?」









「尚哉くんは真中と西野さんの再婚後に生まれた子だから、あや乃ちゃんの異母兄弟になるね」









「異母兄弟・・・そんなの作り話の世界の関係だと思ってたから、あたしが該当するなんて思わなかった。そんな素振りも一切なかった。お母さんはあたしと尚哉を分け隔てなく育ててくれた」









「今のあや乃ちゃんを見れば誰もが納得する。西野さんはちゃんとあや乃ちゃんの母親として立派に育てたよ。じゃなきゃこんな素直な子には育たないよ」









美鈴はそう言って母親のつかさのフォローをした。









「はい、それは理解しています。でもお母さんの本心は・・・お母さんを苦しめた恋敵の娘を育てるなんて・・・やっぱり辛かったのかなって思うと・・・」









「あや乃ちゃん、それは違う。西野さんは東城先輩の想いを引き継いだの。真中先輩との共通の目標を叶えようとして、そしてそれはもう目前まで迫っているのよ」








「あの、真中監督と東城綾の共通の目標って具体的にはどんなものなんですか?」









真司がそう尋ねると、さつきは再び話を戻した。









「それは真中と東城さんの渡米も関係している。心臓病の治療と、アメリカでの映画製作の下準備も兼ねていたの」









「アメリカで映画製作?どんな映画なんですか?」









「東城さんが中学時代から執筆を開始した小説の処女作よ。真中と知り合うきっかけにもなったふたりの宝物の壮大なストーリー」









「あの、ひょっとしてそれって石の巨人が出てくるお話ですか?壮大なファンタジー小説です」









ハッと思い出したあや乃も尋ねた。









「石の巨人って、あの白い本だよね?世界に3冊しかない本で、今はあや乃ちゃんが持ってる本!」










あや乃の言葉で真司も気づいた。









「そうだよ。あたしは読んだことないけど、本当に壮大なファンタジーみたいね」









「あたしは東城先輩が亡くなってから読ませて貰いました。普段の東城先輩の作風とはガラッと異なってて、でも読み込むと先輩らしさが伝わってきて、本当にいいお話です」










「あたしも何度も読みました。本当にいいお話で・・・あの本の作者は東城さんだったんだ・・・」









「あれを読んだあや乃ちゃんなら分かると思うけど、あんな壮大なストーリーの映画化なんて日本では絶対無理。だから真中先輩はアメリカに行って、海外での活動を続けたのよ」









「アメリカでは日本人の監督なんて最初は見向きもされなかったらしいけど、それでも真中は必死に頑張って、西野さんの支えもあって、今の真中の成功に繋がったのよ」









「そうですか・・・お母さんはちゃんと理解して、お父さんを支えていたんですね」









美鈴とさつきの説明であや乃もようやく理解を示した。









「こんなことは西野さんがあや乃ちゃんに直接話すのが筋だろうけど、出来なかったんだね。母親より女が勝っちゃったんだよ」









「西野さんはそれで母親失格と自分を責めてたけど、今のあや乃ちゃんと見ると仕方ない気もする。本当に東城先輩と瓜二つだから」









「あの、あたしってそこまで東城さんに似ているんですか?あのお母さんが不安になるくらいに?」









「「似てる!不安になって当然!」」








あや乃の素朴な疑問をさつきと美鈴のふたりで一刀両断した。









「あの、あたしお父さんは好きですけど、あくまでお父さんとしての好きであって、その、恋愛対象としては一切見れないですよ?」









「その言葉を西野さんに直接伝えてあげなよ。多分それだけで仲直り出来るよ」









「ええっ!?でもそれだとお母さんはあたしにヤキモチ妬いてたってことになりますよね?あのお母さんが・・・信じられない・・・」









さつきの言葉を鵜吞みに出来ないあや乃。










「まあ普通じゃあり得ないけど、あの怒涛の修羅場を展開した東城さんと西野さんだからねえ。普通の物差しでは測れないよ」









「西野さんは今でも東城先輩に対する負い目があると思う。もし東城先輩が存命してたら西野さんと結婚してないだろうからね」









「あのお父さんとお母さんが結婚しない?それも信じられない・・・東城さんってどんな人だったんですか?」









あや乃の中で綾に対する関心が高まった。









それを受けた美鈴は携帯を取り出し、









「だったらこれを聞いて。東城先輩からあや乃ちゃんへのメッセージがあるわ」









そう言ってイヤホンを差し出した。









「そ、そんなものがここにあるんですが、でもなんでそれを外村さんが?」










意外な展開に驚く真司。









そんな真司に対して美鈴は笑みを浮かべ、









「なに言ってるのよ。この音声データは真司くん、君があたしに届けてくれたものだよ」









「お、俺が?いつですか?」









「真中監督の新作披露パーティーにデータを届けてくれたでしょ。あれよ」









「あっ、あの優しい女性の声か。え?ってことは、あの新作映画が!?」









「そうよ。20年、いや30年掛かったけど。真中先輩と東城先輩の夢がようやく実現するの。あの発表会の構想も東城先輩の生前に準備してたのよ」








「俺、そんな超重要なデータを届けていたんですね・・・」








知らないことは怖いと痛感する真司だった。








「発表会で流したのは編集したショートバージョンだけど、ここには未編集のフルバージョンがある。英語だけど東城先輩からあや乃ちゃんへのメッセージも入っているわ」









「あたし、聞きます」








綾乃は緊張した面持ちでイヤホンを耳にセットした。









そして美鈴が音声データを再生。









携帯の液晶画面に5分ほどのデータであることが表示されている。









真司の脳内ではパーティー会場で聞いた綾のカタコト英語のメッセージが再生される。









(俺英語分からないから内容はさっぱりだけど、優しい声だったなあ)









再生から1分ほどで、あや乃の瞳から涙が溢れた。








当然のごとく真司は驚いたが、涙は溢れ続ける。









そんなあや乃をさつきと美鈴は優しく見守っていた。









データの再生が終了する頃のあや乃の顔は涙でくちゃくちゃだった。









「あや乃ちゃん・・・」









掛ける言葉が見つからない真司。









「・・・間違い・・・ない・・・東城さん・・・あたしの・・・お母さん・・・全部・・・分かってた・・・」









「えっ?」









驚く真司。









「あたしもそのデータは聞いた。真中先輩も西野さんも聞いてる。本当に母親は凄いよ」









美鈴もうっすらと涙を浮かべていた。


















真司とあや乃はさつきと美鈴にお礼を伝え、その後帰りの新幹線で揺られていた。









「ねえ真司くん、お願いがあるんだけど・・・」









「えっなに?俺に出来ることなら何でもするよ!」









「あの、迷惑なのは分かるけど、もうしばらくあたしを泊めて欲しいの」









「えぅなんで?もうお母さんと仲直り出来そうなんだよね?」









「確かに出来そうだけど、今はあたしから動きたくない。お母さんの気持ちの整理がついて、お母さんからの言葉を待ちたいの。そっちのほうが良い気がするんだ」









そう語るあや乃の瞳には迷いの色は見られなかった。









なら真司も拒否する理由は無い。









「OK了解した。親もあや乃ちゃん大歓迎だからウチは全く問題ないよ」









「真司くんありがとう。もうしばらくお世話になります」







丁寧にお辞儀をするあや乃は屈託のない笑みを見せていた。


[No.1648] 2024/11/08(Fri) 17:42:41
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