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all 親から子へ・・・プロローグ - takaci - 2008/07/08(Tue) 21:39:01 [No.1453]
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親から子へ・・・17〜Fin〜 - takaci - 2024/11/10(Sun) 10:34:28 [No.1651]


親から子へ・・・17〜Fin〜 (No.1650 への返信) - takaci

その日の夜。









あや乃の家の居間に父親の淳平、母親のつかさがあや乃の対面に座っていた。









そしてあや乃の隣に真司が座っている。









最初は断ったが、あや乃の申し出により真司も立ち会うことになり、淳平もつかさも何も言わなかった。









「あや乃ごめんね。こんな大事なことは親から直接伝えるべきなんだけど、それが出来なくて・・・やっぱり母親失格だな」









そう言って苦笑いを浮かべるつかさ。









「あたしもそうして欲しかったけど、それが出来なかったことはちゃんと理解したから。特にお母さんは複雑だったんだよね」









あや乃はそう言ってやや落ち込み気味のつかさを励ます。









「さつきと美鈴から話を聞いたらしいけど、どこまで聞いたんだ?」








「ほぼ全部聞いたと思う。学生時代からお父さんの再婚までの経緯と、あと綾お母さんからのあたしへのメッセージも聞いたよ」









「綾お母さん、か。あや乃からそう呼ばれれば、天国の綾も喜んでいるだろうな」









悲しみと喜びが混ざった複雑な笑みを浮かべる淳平。









「あたしにはふたりのお母さんがいる。生んでくれた綾お母さんと、育ててくれた今のお母さん。ふたりともあたしにとって大切な人。でもお母さんは内心複雑な気持ちであたしを育てていたんだよね・・・」









「確かにそう思われても仕方ないけど、お腹を痛めた子じゃないけど、お父さんの子であることは事実。お母さんは母親の自覚を持って、あや乃に愛情を注いで育てた。そしてそれが東城さんとの約束だったから」









「お母さんと綾お母さんの約束?」









「これはさつきちゃんも美鈴ちゃんも知らない話。お母さんね、お父さんと一緒に東城さんの最期を見届けたのよ」









「えっ、そうなの?」










「お母さんはお父さんを東城さんに奪われてから、その悲しみから逃げるためにずっとフランスで仕事をしていた。それでもお父さんを忘れることは出来なかった。だからお父さんからの連絡をずっと待ってた」









つかさは当時の辛さを思い出し、少し涙ぐむ。









「そう、だよね。お母さんはお父さんのこと大好きだから、当然だよね」









「お母さんはフランスで4年待ってた。それで師匠経由でお父さんから『東城さんの最期を見届けて欲しい』って連絡が来て、すぐにアメリカに向かったのよ」









「なんか、そのバイタリティの強さはお母さんらしさを感じるよ」









つかさの心の強さを知ったあや乃は笑みを見せる。











「最期の東城さんは穏やかだった。まずお母さんからお父さんを奪ったことを謝ってくれて、そしてあや乃のことをお願いされた。お父さんとの共通の夢を見届けさせて欲しいと・・・もちろん全部引き受けたよ」









「お父さんとの共通の夢・・・それがあの白い本の映画化だよね?」









今度は淳平に目を向ける。









「ああ。映画はもうほとんど出来ている。来月にワールドプレミアだ。それをあや乃にも見届けて欲しい」









「うん。あのお話の映画はあたしも見たい。特に石の巨人がどうなるのかとても楽しみ!」









あや乃は飛び切りの笑顔を見せた。









「ようやく・・・ようやく叶うんだね。淳平くんと東城さんとあたしの夢が・・・」









つかさは感慨深げな表情を見せる。









「あ、あとねお母さん、あたしお父さんのことは好きだけど、あくまでお父さんとしての好きだから。恋愛対象としては一切見てないからね」









「・・・ホント?本当に本当?嘘だったら許さないよ?」








あや乃のこの言葉でつかさの瞳は輝きを増した。









「もうお母さん本当にそんな心配してたの?あたしがお父さんのことを真剣に好きになるわけないよ!」









つかさの態度を目の当たりにしたあや乃は呆れ顔を見せる。









「でもあや乃は東城さんの忘れ形見で、今は東城さんの生き写しで・・・いつかお父さん奪われると本気で心配してたんだから!」









つかさらしい悩みが打ち明けられると、部屋の中は爆笑に包まれた。









「もうお母さんったら・・・それに今のあたしには好きな人がいるの。いつかふたりに紹介したいと思っている素敵な男の子がいるよ」









「そうか。ひょっとしてその男の子はもうこの部屋の中にいたりするのかな?」








淳平はそう言って真司に視線を向けると、真司の胸が高鳴った。









あや乃は一旦真司に視線を向け、その後は恥ずかしそうに俯き、










「・・・そうだといいけど、今はまだ紹介出来ない。でも近いうちに紹介出来る日が来るようにあたし頑張るから」









真っ赤な顔で本心を打ち明けた。









(これってあや乃ちゃんからの告白?でもこのタイミングで返事するのは違うよな・・・)









真司の胸はさらに高鳴っていた。



















翌月。









真中監督の新作のワールドプレミアが開催された。









原作は東城綾。









日本人原作、そして日本人監督というハリウッド映画だった。








壮大なストーリーに相応しい規模の大きい映画。









中でも石の巨人の登場シーンはハリウッド映画の中でも屈指の名シーンとなっていた。









その日の夜のとある公園。







「凄かったねあの映画。あんな映画を作れるあや乃ちゃんのお父さんは本当に凄いよ!」










あや乃と一緒に映画を見た真司の興奮はまだ覚めない。









「そうだね。本当に凄かった。あれがお父さんと綾お母さんの夢の結晶だったんだ・・・」









あや乃は生みの母の綾の遺志を受け継ぎ、夢を見届ける役割を果たしていた。









「真司くん、あたしは、真司くんが好きです」









「あや乃ちゃん・・・」









いつか来るだろうと思っていた告白。









「今のあたしにはまだ将来の大きな夢は無い。でもいつか見つけたい。そしてそれを真司くんと叶えたい。お父さんとお母さんたちのように・・・」









あや乃の告白を受け、真司は思わず華奢な身体を抱きしめる。









「俺も同じ気持ちだよ。俺もあや乃ちゃんが好きだ」









「本当にあたしでいいの?亜美ちゃんのように可愛くないし、大沢先輩のように綺麗じゃないよ?」











「あのふたりは関係ない。俺にはあや乃ちゃんだけでいい。あや乃ちゃんが傍にいてくれれば満足だから」









「真司くん・・・大好き・・・」









「あや乃ちゃん・・・」









夜の公園で、そっと唇を重ね合わせた。


















この映画で、淳平はその年のアカデミー賞の監督賞を受賞した。









淳平と綾の20年越しの夢が叶った瞬間。









だが、このふたりの力だけでは叶わなかった夢。









淳平と綾、そしてつかさの3人で叶えた夢だった。









〜Fin〜


[No.1651] 2024/11/10(Sun) 10:34:28
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