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親から子へ・・・17〜Fin〜 (No.1650への返信 / 17階層) - takaci

その日の夜。









あや乃の家の居間に父親の淳平、母親のつかさがあや乃の対面に座っていた。









そしてあや乃の隣に真司が座っている。









最初は断ったが、あや乃の申し出により真司も立ち会うことになり、淳平もつかさも何も言わなかった。









「あや乃ごめんね。こんな大事なことは親から直接伝えるべきなんだけど、それが出来なくて・・・やっぱり母親失格だな」









そう言って苦笑いを浮かべるつかさ。









「あたしもそうして欲しかったけど、それが出来なかったことはちゃんと理解したから。特にお母さんは複雑だったんだよね」









あや乃はそう言ってやや落ち込み気味のつかさを励ます。









「さつきと美鈴から話を聞いたらしいけど、どこまで聞いたんだ?」








「ほぼ全部聞いたと思う。学生時代からお父さんの再婚までの経緯と、あと綾お母さんからのあたしへのメッセージも聞いたよ」









「綾お母さん、か。あや乃からそう呼ばれれば、天国の綾も喜んでいるだろうな」









悲しみと喜びが混ざった複雑な笑みを浮かべる淳平。









「あたしにはふたりのお母さんがいる。生んでくれた綾お母さんと、育ててくれた今のお母さん。ふたりともあたしにとって大切な人。でもお母さんは内心複雑な気持ちであたしを育てていたんだよね・・・」









「確かにそう思われても仕方ないけど、お腹を痛めた子じゃないけど、お父さんの子であることは事実。お母さんは母親の自覚を持って、あや乃に愛情を注いで育てた。そしてそれが東城さんとの約束だったから」









「お母さんと綾お母さんの約束?」









「これはさつきちゃんも美鈴ちゃんも知らない話。お母さんね、お父さんと一緒に東城さんの最期を見届けたのよ」









「えっ、そうなの?」










「お母さんはお父さんを東城さんに奪われてから、その悲しみから逃げるためにずっとフランスで仕事をしていた。それでもお父さんを忘れることは出来なかった。だからお父さんからの連絡をずっと待ってた」









つかさは当時の辛さを思い出し、少し涙ぐむ。









「そう、だよね。お母さんはお父さんのこと大好きだから、当然だよね」









「お母さんはフランスで4年待ってた。それで師匠経由でお父さんから『東城さんの最期を見届けて欲しい』って連絡が来て、すぐにアメリカに向かったのよ」









「なんか、そのバイタリティの強さはお母さんらしさを感じるよ」









つかさの心の強さを知ったあや乃は笑みを見せる。











「最期の東城さんは穏やかだった。まずお母さんからお父さんを奪ったことを謝ってくれて、そしてあや乃のことをお願いされた。お父さんとの共通の夢を見届けさせて欲しいと・・・もちろん全部引き受けたよ」









「お父さんとの共通の夢・・・それがあの白い本の映画化だよね?」









今度は淳平に目を向ける。









「ああ。映画はもうほとんど出来ている。来月にワールドプレミアだ。それをあや乃にも見届けて欲しい」









「うん。あのお話の映画はあたしも見たい。特に石の巨人がどうなるのかとても楽しみ!」









あや乃は飛び切りの笑顔を見せた。









「ようやく・・・ようやく叶うんだね。淳平くんと東城さんとあたしの夢が・・・」









つかさは感慨深げな表情を見せる。









「あ、あとねお母さん、あたしお父さんのことは好きだけど、あくまでお父さんとしての好きだから。恋愛対象としては一切見てないからね」









「・・・ホント?本当に本当?嘘だったら許さないよ?」








あや乃のこの言葉でつかさの瞳は輝きを増した。









「もうお母さん本当にそんな心配してたの?あたしがお父さんのことを真剣に好きになるわけないよ!」









つかさの態度を目の当たりにしたあや乃は呆れ顔を見せる。









「でもあや乃は東城さんの忘れ形見で、今は東城さんの生き写しで・・・いつかお父さん奪われると本気で心配してたんだから!」









つかさらしい悩みが打ち明けられると、部屋の中は爆笑に包まれた。









「もうお母さんったら・・・それに今のあたしには好きな人がいるの。いつかふたりに紹介したいと思っている素敵な男の子がいるよ」









「そうか。ひょっとしてその男の子はもうこの部屋の中にいたりするのかな?」








淳平はそう言って真司に視線を向けると、真司の胸が高鳴った。









あや乃は一旦真司に視線を向け、その後は恥ずかしそうに俯き、










「・・・そうだといいけど、今はまだ紹介出来ない。でも近いうちに紹介出来る日が来るようにあたし頑張るから」









真っ赤な顔で本心を打ち明けた。









(これってあや乃ちゃんからの告白?でもこのタイミングで返事するのは違うよな・・・)









真司の胸はさらに高鳴っていた。



















翌月。









真中監督の新作のワールドプレミアが開催された。









原作は東城綾。









日本人原作、そして日本人監督というハリウッド映画だった。








壮大なストーリーに相応しい規模の大きい映画。









中でも石の巨人の登場シーンはハリウッド映画の中でも屈指の名シーンとなっていた。









その日の夜のとある公園。







「凄かったねあの映画。あんな映画を作れるあや乃ちゃんのお父さんは本当に凄いよ!」










あや乃と一緒に映画を見た真司の興奮はまだ覚めない。









「そうだね。本当に凄かった。あれがお父さんと綾お母さんの夢の結晶だったんだ・・・」









あや乃は生みの母の綾の遺志を受け継ぎ、夢を見届ける役割を果たしていた。









「真司くん、あたしは、真司くんが好きです」









「あや乃ちゃん・・・」









いつか来るだろうと思っていた告白。









「今のあたしにはまだ将来の大きな夢は無い。でもいつか見つけたい。そしてそれを真司くんと叶えたい。お父さんとお母さんたちのように・・・」









あや乃の告白を受け、真司は思わず華奢な身体を抱きしめる。









「俺も同じ気持ちだよ。俺もあや乃ちゃんが好きだ」









「本当にあたしでいいの?亜美ちゃんのように可愛くないし、大沢先輩のように綺麗じゃないよ?」











「あのふたりは関係ない。俺にはあや乃ちゃんだけでいい。あや乃ちゃんが傍にいてくれれば満足だから」









「真司くん・・・大好き・・・」









「あや乃ちゃん・・・」









夜の公園で、そっと唇を重ね合わせた。


















この映画で、淳平はその年のアカデミー賞の監督賞を受賞した。









淳平と綾の20年越しの夢が叶った瞬間。









だが、このふたりの力だけでは叶わなかった夢。









淳平と綾、そしてつかさの3人で叶えた夢だった。









〜Fin〜


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[No.1651] 2024/11/10(Sun) 10:34:28 (632時間41分前)
fpd8995591.aicf504.ap.nuro.jp

親から子へ・・・16 (No.1649への返信 / 16階層) - takaci

跳栄学園高等部の1日の授業が終了した。









通常の高校なら各クラスのホームルームが存在するが、この学校には存在しない。









1日の授業が終わる時間も生徒によりバラバラになっている。









そのため帰りのタイミングが揃うことは珍しいが、この日は真司、あや乃、亜美、啓太が揃っていた。








そこに、









「真司、啓太、お疲れ様」









生徒会副会長の志穂が声をかけてきた。









「あ、大沢先輩、お疲れ様です」









志穂相手だと少し緊張する真司。









「今日の先輩は一段とお美しいですね。あ、この後予定あります?」









対する啓太はいつもの通りナンパを始めた。









「あら、偽乳の小河ちゃんも一緒なのね。ふたりとも優しい男ね」









今朝の亜美の偽乳騒動は今日1日で学園中に広まっていた。









「偽乳・・・」








志穂の容赦ない言葉で亜美の胸はまた深く抉られる。









だが亜美の自業自得なので真司も啓太も一切フォローしない。








ここでは偽乳は大罪で、その罰も重い。









亜美はこの先長い時間を掛けて偽乳という大罪の罪を償う。









志穂の容赦ない言葉に歯向かうことも許されなかった。









そして志穂は、









「ははーんなるほどね。これが偽乳の理由かあ・・・」









今の真司たちを見て、何かを察したようだった。









「えっ?」









真司は思わぬ志穂の言葉に驚いた。









真司と啓太には亜美の偽乳の真相は分かっていない。









驚く真司の前で、志穂はあや乃の前に立っていた。









「あなたが真中あや乃さんね。あたしは大沢志穂。1年先輩の3年生。よろしくね」









「は、はじめまして、真中あや乃です」









167センチの志穂からだと、158センチのあや乃は見下ろされる形になり、やや威圧感がある。









さらに志穂の視線はあや乃の胸元に向けられる。








「真中ちゃんいい胸持ってるわね。ズバリ70Eってところかしら?」









「え?そ、そうですけど・・・でも大沢先輩には適いませんよ」









「あたしは75F。1カップ違いだどバストサイズは結構違うわね。まああたしも真中ちゃんも偽乳娘の心情は理解出来ないから情けは無用よ」









「は、はあ・・・」









あや乃は志穂に圧倒されていたが、ここまで言われて黙っていられる亜美ではなかった。








志穂をキッと睨み付け、









「その眼力、あんた特戦隊のメンバーね!男だとばかり思ってたけど、女でしかも生徒会副会長。最高の隠れ蓑だわ!」










「とんだ言いがかりね。あたしは特戦隊とは無関係。まああたしに嫉妬するのは良いけど、真中ちゃんは止めなさい。真司に嫌われるわよ」









「はあ?亜美があや乃ちゃんに嫉妬?」








志穂の言葉にまた驚く真司。









「そうよ。最近の真司は真中ちゃんとベッタリ。それで小河ちゃんは真中ちゃんのEカップに嫉妬して偽乳したのよ」









「はあ?亜美お前そんなくだらない理由で偽乳なんて大罪犯したのか?」









思わず亜美に詰め寄る啓太。









そして亜美は、









「大事なことよ!今の真司はあや乃ちゃんとひとつ屋根の下で生活してラブラブオーラ放ってるのよ!焦って偽乳くらいするわよ!」









開き直って真相を暴露した。









「ど、同居だとお!?真司お前なんでそんな重要なこと黙ってたんだよ!?」








今度は真司に詰め寄る啓太。









「お、俺だけじゃなくってあや乃ちゃんの家庭の事情もあるし、気軽に話すことでもないだろ」









「でもこんなかわいい子と一緒に暮らせばラッキースケベのひとつやふたつあるだろ!?」









「・・・ラッキースケベなんてねえよ」











「おいさっきの間は何なんだよ!」









真司のこの間が決定的だった。










その後この4人は食堂に移動し、啓太と亜美による尋問が始まった。








きっかけを作った志穂は特戦隊の後始末の仕事が残っているので姿を見せていない。









「問題はどんなラッキースケベがあったかどうかだな。定番は着替えを目撃して下着姿を見たあたりだが・・・」









「・・・」









「・・・」









啓太の尋問に黙秘する真司とあや乃。









「そうかそうか着替えより上なのか。こりゃ真司の死刑は確定だな」









「おい俺は何も言ってないぞ!勝手に決めつけるな!」










「黙秘しても態度で分かるんだよ。着替えじゃないってことは風呂でも覗いたのか?」









啓太の風呂という言葉に真司とあや乃はビクッと反応する。










「そうかそうか風呂か。真司お前あや乃ちゃんの全裸を見たんだな」









「そんな・・・あや乃ちゃん今夜からウチに泊まって!このままじゃ妊娠しちゃう!」










亜美はやや錯乱気味。









「に、妊娠って・・・さすがにそんなことするわけないだろ」









「亜美ちゃん落ち着いて、それにもうおばさんが責任は真司くんに取ってもらうって言ってくれてるから・・・」









このあや乃の弁明が火に油を注ぐ。









「責任って・・・責任取らせるって・・・いやあああああ!!!」









亜美の錯乱がさらに加速した。









(言えねえ・・・この状況で真実は絶対言えねえ・・・)









亜美の錯乱ぶりを見た真司の背中に冷や汗が流れる。









ラッキースケベの内容。









とある夜、浴室からあや乃の叫び声が聞こえた。









偶然近くにいた真司が慌てて駆け付けると。脱衣所から全裸のあや乃が飛び出てきた。









原因は脱衣所に現れたゴキブリだった。









ふたりはもつれるように倒れ、結果的に真司はあや乃を押し倒す形になり、









さらにあや乃の立派なEカップの胸を揉んでいた。










その後もバタバタして最後には騒ぎを起こしたあや乃が頭を下げたが、









「これは真司が悪いわ!あんた責任取ってあや乃ちゃんをお嫁に貰いなさい!いいわね!」










と真司の母に一喝される結果になった。









この内容を啓太に伝えたら、真司の銃殺刑が確定していただろう。








結果的にはこの内容を啓太と亜美に伝えることは無く、黙秘で通して家に帰ったふたり。










「真司くん、あや乃、お帰りなさい」









「あ、お母さん」









真司の家につかさが待っていた。









「あや乃、待たせてごめんね。これからお父さんとお母さんからあなたに話をしたいんだけど、いいかな?」









そう語るつかさは晴れやかな笑みを見せていた。


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[No.1650] 2024/11/09(Sat) 21:43:00 (645時間32分前)
fpd8995591.aicf504.ap.nuro.jp

親から子へ・・・15 (No.1648への返信 / 15階層) - takaci

朝の峠道。








平日の朝は真司と亜美が全開バトルを繰り広げる道。









だがここ数日はそんなバトルとは無縁である。









ヒューン・・・









前を走る亜美の電動バイクは余裕のクルージングを見せる。









ウォォォォン・・・








後ろを走る真司のエンジンバイクも回転数を抑えている。









その理由は真司のタンデムシートに跨るあや乃の存在だった。

















朝の学校の駐輪場。









タンデムで登校した真司とあや乃は笑顔を見せる。









「バイク通学って気持ちいいよね。こんな世界があるなんて知らなかったよ」









「夏はメッチャ暑くて冬はメッチャ寒いけど、今の季節は気持ちいいからオススメだよ」









「あたしもバイク欲しくなってきたけど、親の説得は出来ないから無理だね。あと真司くんのリアシートでも満足だから」








「俺とのタンデムで良ければいつでも歓迎だけど、でも夏と冬は覚悟した方が・・・あだっ!」








デレデレする真司の頭を亜美がヘルメットで殴った。









「真司がここまでいやらしい男だとは思わなかった。女の子と身体を密着させるのがそこまで嬉しいのかな?」









亜美は不機嫌な表情を崩さない。









「はあ?身体を密着?ひょっとしてタンデムを誤解してないか?」









「なによ?女の子が男の子の身体を後ろからぎゅっと掴むのがタンデムデートだよね?」










「そうされると上半身が上手く動かなくてぎこちない操縦になるから危ないんだよ。実際のタンデムではNGだからな」









「そうなの?じゃああや乃ちゃん両腕はどうしてるの?」









「両手を真司くんの肩の上に置いているだけだよ。最初は亜美ちゃんの言うとおりにぎゅっと掴んだけどね」









「肩に置くだけ?それで怖くないの?」









「最初は不安だったけど、それだけでも結構安定するよ。あと真司くんの運転は丁寧だから」









そう語るあや乃の笑顔には不安の色は見られない。









「ふうん、それが正しいタンデムなのね。勉強になったよ」









そんな会話をしているところに、











「おーい亜美!大変だあ朝から大事件勃発だあ!」









啓太がダッシュで亜美に駆け寄る。









「なによ啓太?朝っぱらから何の騒ぎ?」









「亜美、お前の写真が、ギニュウ特戦隊に・・・」









「な、なんですって!?どこにあるの!?」









「こっちだ!」











亜美は血相を変えて啓太と駆けて行った。









「ギニュー特戦隊って確かドラゴンボールだよね?それと亜美ちゃんが何の関係があるの?」









この学校に来て日が浅いあや乃は事態の深刻さが掴めていない。









「元ネタはそれだけど字が違う。俺たちも行こう。でも亜美がギニュウかよ・・・」









想定外の事態を受けて真司は朝から悩まされていた。



















跳栄学園偽乳特戦隊。









多くの男子生徒からは羨望の眼差しを受け、女子生徒からの非難が集中している謎のエリート集団。









『巨乳は正義。貧乳は愛でるもの。ただし偽乳、テメーはダメだ』









これが特戦隊のポリシーである。









男子生徒の目を惹くために自身の胸を盛っている女子生徒を糾弾するのが任務になっている。









ただ盛りの手段が寄せ上げブラなら努力として認められOK。パッドで盛る生徒のみ糾弾している。








特戦隊のメンバーは日々女子生徒の胸に目を光らせている。









そして複数の隊員の疑惑に上がった対象には、特戦隊の『偽乳スカウター』によりスキャンされる。









そのスキャン結果が年に数回、不定期で学園内の掲示板に貼り出される。









そして今朝は、









「いやあああああああ!!!!!!」








掲示板の前で亜美の叫び声がこだましていた。












さらに時は巡り昼休み。









「もう絶対に許さない。特戦隊のメンバー見つけてバイクで引きずり回してやる・・・」









亜美の怒りは収まらない。









「いや偽乳をした亜美が悪い」









「そうだよ亜美、男にとって偽乳は大罪だよ」









そんな亜美に真司と啓太は非難の言葉を放つ。









「ふたりともなによ。少しパッドで盛った程度なのにそれがダメなの?」









「いやあれは少しじゃないだろ?」









「そうだよな。AがCになってたからなあ」








性格は男勝りだが、小柄でかわいい亜美は男子生徒からの人気が高い。









ただ胸は貧相で、絶壁やまな板という言葉がピッタリ当てはまる。









「そもそもなんで盛ったりしたんだよ?亜美は自身の大平原が誇りとか言ってただろ?」









「大平原・・・」









真司の言葉が亜美の胸を抉る。









「そうそう亜美は平和なスットン共和国民。盛るのは亜美らしくない」









「スットン共和国・・・」









さらに啓太の言葉で抉られた。









「こ、この学校って変わってるよね。普通ならこんなことが起きたらセクハラ被害で大ブーイングだよ」









ここでずっと黙っていたあや乃がようやく自分の意見を口にした。











「確かにそれが普通だろうけど、この学校は異様に『盛り』に厳しいんだよ」









「なにかきっかけでもあったの?」









「きっかけかあ。噂ではかぐや様で怒ったって聞いたことがあるなあ」









「かぐや様?それってかぐや様は告らせたいの四宮かぐや?」







「そう。原作では貧乳キャラだったけどアニメでは盛ったんだよ」









「具体的にはアニメ全般じゃなくてアニメ化で商品化したフィギュアで盛った。原作は明らかにAなのに商品化されたフィギュアはBくらいあったらしい」









「それを四宮財閥の力で盛ったとか、報道を捻じ曲げたとか、当時は陰口叩かれたって聞いたよ」










「ふーん、ふたりともやけに詳しいんだね・・・」








あや乃は真司と啓太に冷ややかな視線を送るが、









「いやこの学校の男子生徒なら一般常識だから」









「そうそう、男の目を惑わす盛りは重罪。亜美も反省しろよな」









真司も啓太も動じなかった。









「でもかぐや様って結構古い作品だよね。いまだにそんなことを根に持ってるってことは、特戦隊には先生も絡んでいるのかな?」









「あーさすがあや乃ちゃん鋭い。その噂も濃厚だよ」









「そもそも元ネタのドラゴンボールが古い作品だからなあ。当時は大人気らしかったけど俺たちが生まれる前に連載終わってる作品だろ」









「特戦隊は謎が多いからなあ。噂では文字通りの偽乳特戦隊が登場した作品もあったと聞いたことがあるぞ?」









「それはさすがにデマじゃないかな?仮にそんな作品があったとしたら当時セクハラで訴えられてるよ」









真司、啓太、あや乃の3人は謎が多い特戦隊の話で盛り上がる。









その傍らで、








(特戦隊の連中はどんな手段を使っても絶対に見つけ出す!この屈辱を倍にして返してやるんだから!)









亜美は復讐の炎で燃えていた。


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[No.1649] 2024/11/08(Fri) 21:07:24 (670時間8分前)
fpd8995591.aicf504.ap.nuro.jp

親から子へ・・・14 (No.1647への返信 / 14階層) - takaci

「・・・あたしの、本当のお母さんは、東城綾なんですね・・・」









さつきに事実を告げられたあや乃は少なからずショックを受けていた。









「そう。生みの親は東城さんで、育ての親が西野さん。だからあや乃ちゃんにはふたりのお母さんがいるとも言えるよ」









さつきは優しい口調で事実を告げる。









「じゃあ、尚哉は本当の弟ではないんですね?」









「尚哉くんは真中と西野さんの再婚後に生まれた子だから、あや乃ちゃんの異母兄弟になるね」









「異母兄弟・・・そんなの作り話の世界の関係だと思ってたから、あたしが該当するなんて思わなかった。そんな素振りも一切なかった。お母さんはあたしと尚哉を分け隔てなく育ててくれた」









「今のあや乃ちゃんを見れば誰もが納得する。西野さんはちゃんとあや乃ちゃんの母親として立派に育てたよ。じゃなきゃこんな素直な子には育たないよ」









美鈴はそう言って母親のつかさのフォローをした。









「はい、それは理解しています。でもお母さんの本心は・・・お母さんを苦しめた恋敵の娘を育てるなんて・・・やっぱり辛かったのかなって思うと・・・」









「あや乃ちゃん、それは違う。西野さんは東城先輩の想いを引き継いだの。真中先輩との共通の目標を叶えようとして、そしてそれはもう目前まで迫っているのよ」








「あの、真中監督と東城綾の共通の目標って具体的にはどんなものなんですか?」









真司がそう尋ねると、さつきは再び話を戻した。









「それは真中と東城さんの渡米も関係している。心臓病の治療と、アメリカでの映画製作の下準備も兼ねていたの」









「アメリカで映画製作?どんな映画なんですか?」









「東城さんが中学時代から執筆を開始した小説の処女作よ。真中と知り合うきっかけにもなったふたりの宝物の壮大なストーリー」









「あの、ひょっとしてそれって石の巨人が出てくるお話ですか?壮大なファンタジー小説です」









ハッと思い出したあや乃も尋ねた。









「石の巨人って、あの白い本だよね?世界に3冊しかない本で、今はあや乃ちゃんが持ってる本!」










あや乃の言葉で真司も気づいた。









「そうだよ。あたしは読んだことないけど、本当に壮大なファンタジーみたいね」









「あたしは東城先輩が亡くなってから読ませて貰いました。普段の東城先輩の作風とはガラッと異なってて、でも読み込むと先輩らしさが伝わってきて、本当にいいお話です」










「あたしも何度も読みました。本当にいいお話で・・・あの本の作者は東城さんだったんだ・・・」









「あれを読んだあや乃ちゃんなら分かると思うけど、あんな壮大なストーリーの映画化なんて日本では絶対無理。だから真中先輩はアメリカに行って、海外での活動を続けたのよ」









「アメリカでは日本人の監督なんて最初は見向きもされなかったらしいけど、それでも真中は必死に頑張って、西野さんの支えもあって、今の真中の成功に繋がったのよ」









「そうですか・・・お母さんはちゃんと理解して、お父さんを支えていたんですね」









美鈴とさつきの説明であや乃もようやく理解を示した。









「こんなことは西野さんがあや乃ちゃんに直接話すのが筋だろうけど、出来なかったんだね。母親より女が勝っちゃったんだよ」









「西野さんはそれで母親失格と自分を責めてたけど、今のあや乃ちゃんと見ると仕方ない気もする。本当に東城先輩と瓜二つだから」









「あの、あたしってそこまで東城さんに似ているんですか?あのお母さんが不安になるくらいに?」









「「似てる!不安になって当然!」」








あや乃の素朴な疑問をさつきと美鈴のふたりで一刀両断した。









「あの、あたしお父さんは好きですけど、あくまでお父さんとしての好きであって、その、恋愛対象としては一切見れないですよ?」









「その言葉を西野さんに直接伝えてあげなよ。多分それだけで仲直り出来るよ」









「ええっ!?でもそれだとお母さんはあたしにヤキモチ妬いてたってことになりますよね?あのお母さんが・・・信じられない・・・」









さつきの言葉を鵜吞みに出来ないあや乃。










「まあ普通じゃあり得ないけど、あの怒涛の修羅場を展開した東城さんと西野さんだからねえ。普通の物差しでは測れないよ」









「西野さんは今でも東城先輩に対する負い目があると思う。もし東城先輩が存命してたら西野さんと結婚してないだろうからね」









「あのお父さんとお母さんが結婚しない?それも信じられない・・・東城さんってどんな人だったんですか?」









あや乃の中で綾に対する関心が高まった。









それを受けた美鈴は携帯を取り出し、









「だったらこれを聞いて。東城先輩からあや乃ちゃんへのメッセージがあるわ」









そう言ってイヤホンを差し出した。









「そ、そんなものがここにあるんですが、でもなんでそれを外村さんが?」










意外な展開に驚く真司。









そんな真司に対して美鈴は笑みを浮かべ、









「なに言ってるのよ。この音声データは真司くん、君があたしに届けてくれたものだよ」









「お、俺が?いつですか?」









「真中監督の新作披露パーティーにデータを届けてくれたでしょ。あれよ」









「あっ、あの優しい女性の声か。え?ってことは、あの新作映画が!?」









「そうよ。20年、いや30年掛かったけど。真中先輩と東城先輩の夢がようやく実現するの。あの発表会の構想も東城先輩の生前に準備してたのよ」








「俺、そんな超重要なデータを届けていたんですね・・・」








知らないことは怖いと痛感する真司だった。








「発表会で流したのは編集したショートバージョンだけど、ここには未編集のフルバージョンがある。英語だけど東城先輩からあや乃ちゃんへのメッセージも入っているわ」









「あたし、聞きます」








綾乃は緊張した面持ちでイヤホンを耳にセットした。









そして美鈴が音声データを再生。









携帯の液晶画面に5分ほどのデータであることが表示されている。









真司の脳内ではパーティー会場で聞いた綾のカタコト英語のメッセージが再生される。









(俺英語分からないから内容はさっぱりだけど、優しい声だったなあ)









再生から1分ほどで、あや乃の瞳から涙が溢れた。








当然のごとく真司は驚いたが、涙は溢れ続ける。









そんなあや乃をさつきと美鈴は優しく見守っていた。









データの再生が終了する頃のあや乃の顔は涙でくちゃくちゃだった。









「あや乃ちゃん・・・」









掛ける言葉が見つからない真司。









「・・・間違い・・・ない・・・東城さん・・・あたしの・・・お母さん・・・全部・・・分かってた・・・」









「えっ?」









驚く真司。









「あたしもそのデータは聞いた。真中先輩も西野さんも聞いてる。本当に母親は凄いよ」









美鈴もうっすらと涙を浮かべていた。


















真司とあや乃はさつきと美鈴にお礼を伝え、その後帰りの新幹線で揺られていた。









「ねえ真司くん、お願いがあるんだけど・・・」









「えっなに?俺に出来ることなら何でもするよ!」









「あの、迷惑なのは分かるけど、もうしばらくあたしを泊めて欲しいの」









「えぅなんで?もうお母さんと仲直り出来そうなんだよね?」









「確かに出来そうだけど、今はあたしから動きたくない。お母さんの気持ちの整理がついて、お母さんからの言葉を待ちたいの。そっちのほうが良い気がするんだ」









そう語るあや乃の瞳には迷いの色は見られなかった。









なら真司も拒否する理由は無い。









「OK了解した。親もあや乃ちゃん大歓迎だからウチは全く問題ないよ」









「真司くんありがとう。もうしばらくお世話になります」







丁寧にお辞儀をするあや乃は屈託のない笑みを見せていた。


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[No.1648] 2024/11/08(Fri) 17:42:41 (673時間32分前)
fpd8995591.aicf504.ap.nuro.jp

親から子へ・・・13 (No.1646への返信 / 13階層) - takaci

午前10時半の京都駅入り口。









真司はあや乃と共に顔の分からない来訪者と待ち合わせていた。








『淳平くんとあたしと東城さん、この複雑な関係をよく知っている人が京都にいるからその人から話を聞いて』









あや乃の育ての母のつかさにそう言われ、つかさの手はずで京都に訪れたふたり。









「真司くんは京都に来たことはあるの?」









「中学の修学旅行で来たことgはあるよ。修学旅行では定番の場所だから」









「あたしは生まれて初めてだよ。日本の歴史が詰まっている場所だからいろんな所に行ってみたいなあ」









あや乃はそう語るものの、楽しそうな雰囲気は一切感じられない。









ふたりで一緒に観光を味わう気分とは程遠かった。









「こんにちは」










そんなふたりに突然声が掛けられた。









声に反応して振り向くと、ふたりの美女が立っていた。









パッと見は20代後半から30代前半くらいの若々しい女性だった。









そしてその中のひとりは、









「あれ?外村さんじゃないですか?」









驚く真司。










「君は確か真中監督の発表会でデータを届けてくれた、確か東村くんだったよね?」









美鈴も一度会った真司のことを覚えていた。








ただそれ以上に、









「・・・あなたが真中あや乃さんね。ひと目見てわかったわ」









「・・・信じられない。高校時代の東城先輩にそっくり。ここまで瓜二つに育つなんて・・・」









ふたりとも初対面のあや乃の姿を見て驚いていた。









そして4人揃って最寄りの喫茶店に移動した。









「改めて自己紹介ね。あたしは北大路さつき。あや乃ちゃんの父親の真中と母親のつかささんの同級生で、今はこっちの旅館の女将をやっているわ」









「あたしは外村美鈴。真中監督とつかささんの1年後輩で、高校の部活で一緒だったのよ。あや乃ちゃん初めまして」








笑顔で挨拶する二ふたりの美女。









「初めまして。真中あや乃です」









対するあや乃は緊張気味。









「俺は東村真司です。あや乃ちゃんの付き添いで来たんですが・・・あのお二人にメッチャ失礼なこと聞いていいですか?」









「失礼なこと?こんなおばさんのスリーサイズでも気になった?」









笑顔で真司をからかうさつき。









だが真司は至って真面目だった。









「おふたりはあや乃ちゃんの両親の同級生と1年後輩ってことは、今は40代半ばですよね?俺の目には20代でも通用するほど若く見えているんですが?」









「あははー真司くんだっけ?嬉しいことを言ってくれるねえ!こんなおばさん口説く気なの?」









さつきは一気に上機嫌になった。









「あたしも北大路先輩ももう40代半ばのおばさんだよ。西野さんも先輩と同い年だけどあの人はいつまでも若いから驚く。20代半ばでも通用しそうだから」









「西野さん?それはあや乃ちゃんのお母さんのことですか?」









「そうだよ。あたしたちと真中と西野さん、そして東城さんは高校時代からの付き合い。だからいろいろ知っているよ」








さつきは笑顔でそう答えた。









「西野さんは自分のことを母親失格だと言ってたけど、今のあや乃ちゃんを見るとそうとは言い切れない気もするのよね。西野さんも複雑なのよ」









美鈴はあや乃を見ながらそうぽつりと漏らした。









「真中と西野さんと東城さんは本当にいろいろあったからねえ。まあその辺りはあたしらが詳しく説明してあげるよ」









そしてさつきの口から、高校時代のエピソードが語られた。









「あたしと西野さん、東城さんは恋のライバル。高校時代は3人で真中争奪戦を繰り広げていたのよ」









「あの頃のお愛華先輩は情けなかったですね、3人の間をフラフラして優柔不断の態度で・・・」









当時の真中を思い出して怒る美鈴。









「高校時代の真中は西野さんと付き合っていた時期もあったけど、基本的にはフリーだった。で、高校卒業をきっかけにみんな離れ離れになったの」









「北大路先輩は京都で女将修行、西野先輩はフランスで菓子修行、真中先輩は海外ひとり旅で監督修行。卒業前に小説家デビューしていた東城先輩は進学して作家を続けたわ」









さつきの説明に美鈴が補足を入れた。









それから4年くらい経過してからみんな京都で再会したけど、あの時の真中は良い男になっていたよなあ」









「真中先輩も西野さんも修業が実って日本で働くことになって、そしてふたりが改めて付き合いだしたのよ」









「ここで物語が終わっていれば西野さんエンドのハッピーエンドになるけど、現実はその後があったんだよねえ・・・」









この時さつきは初めて苦い顔を見せた。









「お父さんとお母さんの仲を、東城さんが引き裂いたんですね?」









あや乃が勇気を振り絞ってそう尋ねると、









「それは違う。あたしの目には運命のふたりが結ばれただけのようにしか見えなかったよ」









さつきは優しい口調でそう返した。









「運命のふたり?どういうことですか?」









思わず真司も聞き返したら、さつきの優しい口調の説明が始まった。









「真中と東城さんは運命共同体なの。真中は東城さんの描いた物語を映像化する。そして東城さんはそのために物語を描く、そんな関係だった」









「その関係は西野さんと付き合いだしてからも続いた。真中先輩の就職先の事務所に東城先輩が仕事を斡旋し続けたの」









「当時の西野さんはかなり複雑だったみたいね。仕事の関係でも真中と東城さんのことをかなり意識してたと聞いたよ」









「そんな東城先輩の斡旋のおかげで真中先輩は仕事を増やして行った。当時の真中先輩の基礎を築いたのよ」









「そんなふたりの仕事の関係は順調だったけど、東城さんが23の時に倒れたの。心臓病だった」









「心臓病?それが東城綾の死因ですか?」









真司は思わず聞き返した。








「そうだよ。23の時点で余命2年と言われた。有効な延命措置も無かったのよ」









その問いには美鈴が悲しそうな表情で答えた。









「真中と東城さんにはこの先何10年も掛けて叶える共通の目標があった。でもそれはもう叶わない。真中は絶望した。東城さんもそうだけど、その時に残りの人生を真中と過ごすようにお願いしたのよ」








「東城先輩は真中先輩をずっと想い続けていた。余命2年と言われればそんなお願いをしても仕方ないと思う。そして真中先輩も東城先輩の想いに応えた」









「でもその阿多が本当に大変だったんだよ。真中と西野さんの別れ話」









当時を思い出し苦笑いを浮かべるさつき。









あたしも立ち会いましたけど、西野さんの剣幕凄かったですね。『理屈で感情が割り切れる訳が無い!』って何度も泣き叫んで・・・









「けど、西野さんのそんな心からの叫びを受けても真中の想いは揺らがなかった。あの時の真中は東城さんを選んだの。東城さんの想いを叶えたのよ」









「あの時の西野さんを振った真中先輩は男らしかったな。高校時代のフラフラしてた人と同じとは思えなかった」









さつきと美鈴のふたりは当時の淳平と綾を擁護する立場を示した。









こうなると真司もあや乃も強い言葉を言えない。









「そんなことがあったんですね…それでその後のお父さんをお母さんは・・・」









あや乃はそう聞くのが精一杯。









「西野さんは悲しみから逃げるようにまたフランスに旅立った。真中と東城さんは日本で一緒に仕事を続けたけど、その時のふたりは本当に幸せそうだったよ」









屈託のない笑顔を見せるさつき。









「あの時のふたりは一緒に仕事をこなしてどんどん実力をつけて周りに認められて、本当に充実してたなあ」








美鈴もさつきに同意する









「真中と一緒に過ごすことで東城さんの病状も良くなった。それを受け手東城さんは真中との子供が欲しいと言い出したのよ」









「担当医からは寿命を一気に縮めるという理由で猛反対されたけどね。でもアメリカで出産を認める医者を見つけて、ふたりでアメリカに旅立った。そして向こうで結婚、出産をしたの」









「その時に生まれた子供が、あや乃ちゃん、あなたよ。あなたは真中と東城さんの想いを見届けるためにこの世に生を受けたの」









さつきにそう告げられた時のあや乃の目は大きく見開いていた


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[No.1647] 2024/11/07(Thu) 20:30:32 (694時間44分前)
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親から子へ・・・12 (No.1480への返信 / 12階層) - takaci

教会であや乃とはぐれてしまった直後、真司は強い焦燥感に駆られていた。









だがひとりタクシーを捕まえて立ち去ってしまったあや乃を追いかける手段は無い。









携帯に掛けても繋がらないので、とりあえずメールを打った。








焦りながらメールを打つ真司だったが、しばらくしたらあや乃から返信が届いた。









『ゴメン今はひとりにさせて。あたしは大丈夫だから帰って。本当に大丈夫だから』









『心配と迷惑かけてごめんなさい。今日は付き合ってくれてありがとう』









本心は不安だったが、あや乃のメールの内容を信じて真司はバイクで自宅に帰った。









そして休み明けの月曜日。









学校であや乃の姿を見ることは無かった。









(あや乃ちゃん、ちゃんとこっちに帰って来ているのかな?でも親と顔を合わせたくないだろうなあ)









現時点では推測に過ぎない。









ただ、あや乃の両親が本当の両親なのかどうかは限りなく疑わしい。









東上綾資料館の年表が正しければ、あや乃の本当の母親は東城綾になる。









(あや乃ちゃんとお母さんの仲は良かったよなあ。あんな若くて綺麗なお母さんは自慢だっただろうああ)









(そんなお母さんが本当の母親じゃなかったとしたら・・・)








あや乃のショックが大きいことは簡単に想像が付く。









(俺に何か出来ることがあればいいけど、何が出来るのか全く分からん)









悩みながら学校の廊下を歩く真司の前で、亜美と啓太が楽しそうに談笑している。









(こんな時こそ友人を頼るべきなんだろうけど、あや乃ちゃんの家庭の事情も絡んでいるからなあ・・・)









真司ひとりの判断で悩み相談が出来る内容ではないと判断し、ひとりで悩むことになってしまっていた。














その日の夜。









真司が自室で宿題を片付けている時に、携帯が震えた。









あや乃からのメールだった。









現時刻は午後9時過ぎ。









自宅近郊の公園に来て欲しいという内容だった。









現在のあや乃の状況には不安を覚えたが、あや乃からの呼び出しは単純に嬉しかった。









簡単に身支度をして指定の公園に向かう。









この時間帯の公園には他の人影はない。









街灯に照らされたベンチに寂しそうに座っているあや乃の姿を捉えた。








さらにあや乃の前には大きめの旅行鞄がある。









明らかに落ち込んでいるのが一目で分かったので、慌てて駆け寄った。









「あや乃ちゃん、何かあったの?」









「真司くんゴメンね。迷惑掛けたくなかったけど、他に頼れる人がいなくて・・・」









「まさか、家出してきたの?」









「家出じゃなくって、お母さんに追い出されちゃった」









「ええっ!?あのお母さんが!?」









驚く真司。









「思い切ってお母さんに東城さんのことを聞いたら、急に冷たい顔になって、突然出てってと言われて・・・・あんな怖いお母さん初めてで・・・怖かった・・・」










涙声で震えるあや乃。









その様子で恐怖の大きさが伝わってくる。









「あや乃ちゃんを家から追い出した?あのお母さんが?あ、お父さんは?真中監督はなんて言ってるの!?」








「お父さんは今は家に居ないの。でもお父さんも了承済みだって・・・」









「なんで年ごろの娘を家から追い出すことを了承するんだよ?俺には理解出来ないよ・・・」








頭を抱える真司。









「あと、真司くんの家に行きなさいってお母さんが言ってて・・・真司くん何か聞いてる?」









「はあ?あのお母さんがそんな意味不明なことを?俺何も知らないよ?」









「本当に迷惑掛けてごめんなさい。でも他に頼れる人がいなくて・・・」









「・・・分かったよ。とりあえず今夜はウチに泊まればいいよ。親は俺が説得するから」









真司は現状に納得出来なかったが、あや乃を放っておくことも出来なかった。









真司は困るあや乃に手を差し伸べると、あや乃はようやく安心した笑みを見せた。







そしてあや乃を連れて自宅に帰ると、母親から笑顔で歓迎された。









「あや乃ちゃんのお母さんから話は聞いてるわ。家庭の事情で家に居られないそうね。有名な映画監督の家は大変みたいね」










「は?なにそれ?そんな話俺知らないよ?」









また驚く真司。









だが母親は真司を無視してあや乃を笑顔で迎え入れた。









「もう部屋は用意してあるわ。あや乃ちゃんみたいな素直ないい子はお母さん大歓迎。あや乃ちゃんも自宅だと思ってくつろいでね!」









この時の真司とあや乃は母親の思わぬ熱烈歓迎にただ驚くだけだった。









そして翌日の放課後。








真司はあや乃の家の洋菓子店を訪れた。









あや乃の現在の母親であるつかさに文句を言うために。









「いらっしゃいませ。あ、君かあ。確か真司くんだったよね。来ると思ったよ」









つかさは明るい声で応対してくれた。









だが真司は怒っていた。









「どういうことですか?いくら事情があるとはいえあなたあや乃ちゃんの母親でしょ?なんで母親が年頃の娘を家から追い出すんですか?」









「真司くんもあや乃と一緒に泉坂に行って調べたんだよね?それで東城さんのこと知ったんだよね?」








「知りましたし驚きました。あとあや乃ちゃんの母親が東城綾の可能性があることも」








「可能性じゃなくて、それが真実。あや乃の生みの母は東城さんで、あたしは育ての母よ」









つかさは至って普通の表情で重要な事実を口にした。









そんな重要なことを何で本人に伝えないんですか?あや乃ちゃんメッチャショック受けてましたよ?」









「確かに育ての母としては失格だよね。でも仕方ないんだよ。あたしと東城さん、あと淳平くんの関係はかなり複雑だから・・・」









そう語るつかさの表情は急速に冷たくなって行く。









つかさの迫力に押された真司の背筋も一気に冷たくなった。








それでもつかさを問いただす。









「過去のことgは俺は知りませんが、それを子に語ることも育ての母の役割じゃないんですか?」









「確かにそうだけど、今のあたしの口からは言えない。事実を知りたいなら手配するけど、どうする?」










そのつかさの言葉の2日後、









真司はあや乃と共に学校を休み、新幹線で京都に向かっていた。


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[No.1646] 2024/11/06(Wed) 19:50:13 (719時間25分前)
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第29話 「夢のグランド」 (No.1643への返信 / 29階層) - スタンリー

第29話 「夢のグランド」

綾が玄関から自室に行く途中の廊下で弟に会う。



正太郎「姉ちゃん、さっき男と会ってたろう?」



綾「そうだけど・・・・。」



正太郎「姉ちゃんから帰っていいって電話をもらう前に、マンション

から女が出てきたけど、あれって高校時代好きだった男の彼女だよな。

もしかして姉ちゃんが言ってた彼氏ってあの男ことなのか?」



綾「そうよ。」



正太郎「あれから4年以上も経ってるのに、ずぅっとあいつのことが好き

だったんだな。

前の彼女ってあの時と比べてまたすごく綺麗になってたけど、なんで男の

マンションから出てきて、ひょっとして、あそこで前の彼女との修羅場に

なってたんじゃないのか?」



綾「違うわよ、彼の家に行ったら、たまたま彼女が帰るところだっただ

けだし、彼本当に別れたって。」



正太郎「もし、そうだとしても、前の彼女があの時そこにいたわけだから

よりを戻しに来てたんじゃないのか?

あんな美人が本気であいつにアタックをかけたら、姉ちゃんまたフラれる

かもしれないから、あまりそいつに期待をしないほうがいいぜ。」



綾「もう、いいでしょ。

正太郎には関係ないんだから。

私は、お風呂に入って寝るからね。」

綾(せっかくいい気分で帰ってきたのに台無しじゃない。

もう正太郎とは当分口をきかないんだからね。)



綾は怒って自室に戻り着替えを取りに行き風呂場へ向かう。


綾が衣服を脱ぎ、浴室入り、体を洗い湯船に入る。


綾(今日一日でいろいろあったけど、私って真中くんの恋人になれたんだ。

でも西野さんって真中くんの嘘を本当に信じてるのかな。

もし、嘘だと分かったら、またよりを戻そうとするかもしれない・・・。

本当に正太郎のせいで、なんか不安になってきちゃったじゃない。

もう、はやく寝てこのことを忘れよう。)


綾が浴室をでて、体をふき、パジャマに着替えて髪を乾かし、自室に戻る。


綾がベッドのサイドテーブルに淳平から貰ったスペアキーを置いた後で

部屋の照明を消す。

綾がベッドのサイドテーブルに淳平から貰ったスペアキーを置き

ベッドの上で横になる。


綾が布団に入り今日の応接間での出来事を思いだす。


綾(真中君と恋人になれたんだ。

高校三年生のときの文化祭の時フられて、彼の大学受験の時に

あんな過ちをして彼をあきらめたけど・・・よかった、今日告白

して。)


綾が部屋の明かりを消す。

綾が今日の中学校でのグランドでの出来事を思い出す。

綾(中学三年生の時、西野さんへの告白を見た時は

恥ずかしいって思ったけど、私に対してしてもらえる

ととても嬉しかった。

これからも一生忘れない思い出になると思う。)

綾が小さなあくびをしてサイドテーブルに置いた車の

スペアキーを見て。

綾(おやすみ・・・・真中君、じゃなくて淳平。)


綾が眠りに入る。







綾の夢の中

小学校の運動会で綾がグランドの外周の外にビニールシート

に座っている。


隣に綾の子供の頃に似た眼鏡をした幼稚園児位の女の子が座って

おり、その後ろに綾の母と父が座っている。

その女の子が向こう側のトラックに徒競走の出走準備で並んで

いる淳平を小さくしたような男の子を指差して綾に話かける。


女の子「ねぇ、見てお母さん、お兄ちゃん次だよ。」

綾「そうね。あれっ、お父さんは?」


女の子がトラックのコーナー付近でビデオカメラを構えている

親達を指差して。

女の子「お父さんなら、ずぅっとあそこにいるよ。」


そのコーナー付近にいる親達の集団の中に、業務用に使うような

ビデオカメラに頑丈な三脚をつけて構えている淳平を見つける。


学校の先生「位置について。  ヨーイ。」

ピストルの音が鳴ると同時に淳平を小さくした男の子を含め

8人くらいの小学生が一斉に走り出す。




女の子「お兄ちゃん頑張れ。」


綾「頑張れぇ。・・・・あっ!」




トラックの最初のコーナーを回り、綾たちの座っている付近で

1位で走ってきた淳平を小さくしたような男の子が転び後の7人に

に次々に抜かれる。


膝を擦り剥き少しよろめきながら立ち上がるが他の走者はゴールする。

片足を少し引きずるように走り出すと周りから拍手の音が聞こえて

くる。


少しして、淳平を小さくしたような男の子がゴールすると更に大きな

拍手が聞こえてくる。

女の子「せっかく途中までは一番だったのにねぇ。」


綾の母「『転ぶ』ていうのは遺伝するのかしらねぇ。」


綾「それって私からって事?

もう、一生懸命やったんだから褒めてあげてね。」

綾の両親が笑っている。


少しして淳平が満足げに綾の座っている所にくる。


淳平「傑作が撮れた予感がする。

早く編集しないとな。

帰ったら一緒にやろうぜ。」


綾が呆れ顔で。


綾「まだダンスとか他の種目もあるんだから。」

淳平が笑いながらビデオカメラをビニールシートの上に置いて

女の子を抱きかかえて座る。



夢が終わる。






綾が目を覚ます。


綾(なに今の?

もしかして夢?

じゃぁ、昨日の事も・・・・?)


綾がベッドのサイドテーブルに視線を移して置いてある車の

貰ったスペアキーを見て安心する。





綾(よかったぁ。あれは夢じゃなくて。)


綾(グランドでの告白のインパクトが強すぎたからあんな夢を

見たのかなぁ。でもさっきの夢の中で、真中君が旦那さんで

男の子が小学生くらい、女の子が幼稚園くらいだったなぁ。

もしこの夢の話を真中君にしたらどんな顔をするのかなぁ。

夢の中での真中君って親バカだったなぁ。

でもこんな話をしたら付き合いだして間もないのに結婚を

迫ってるみたいだから・・・。いつか話せるときがきたら

それとなく話してみよう。)




綾が部屋で着替えて、ダイニングへ向かう。


綾「おはよう。」

綾の母「おはよう。朝食の準備ができてるからね。」


綾「うん、ありがとう。ねぇお母さん、お料理のことを教えて欲しいけど、いい?」


綾の母「いいけど・・・。でも、急にどうして・・・。

もしかして、彼でも出来た?」


綾「・・・うん。

それでね、やっぱりお料理とかできないとダメじゃないかなぁって思ってね。」



綾の母「そうなの。それで、どんな人なの?」



綾「中学校の時からの同級生なの。」


綾の母「そう、今何をしている人なの?」


綾「今はアルバイトなんだけどね、近々面接を受けて映像関係の

会社に就職予定なの。」


綾の母「綾ちゃんが好きになった人なら、きっといい人でしょうね。」



綾「それでね、まだお父さんにはまだ内緒にしておいて欲しいの。」



綾の母「それは構わないけど、お父さんに心配をかけるようなこと

だけはしないでね。」



綾「するわけないじゃない。」



綾が朝食を終え自室に戻り執筆を始める。


綾(これから、真中くんと平日に会うのなら夜になりそうだから

できるだけ執筆は午前中にしないとね。)






綾が執筆を始めてから2時間程してから玄関からチャイムの音がし

綾の母がドアホンで対応する。



綾の部屋の内線の呼び出しがなり、綾が受話器を取る。



綾の母「綾ちゃん、お友達がおみえになってるから

ちょっと玄関にいってもらっていい。」



綾「だれなの?」



綾の母「高校時代のお友達できれいな女の人みたいよ。」



綾「今すぐ、行くから。」

綾が受話器を置き、玄関に向かう。



綾(誰だろう・・・。)



綾がドアを開け、立っている人を見て驚く。





綾「西野さん」


玄関の前には、西野が立っていた・・・。


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[No.1645] 2014/08/03(Sun) 21:01:31 (90670時間13分前)
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Re: 『真実の瞳』−22.「岐点」 (No.1240への返信 / 24階層) - y.s

次の作品はまだなのですか?

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[No.1644] 2013/08/03(Sat) 19:58:27 (99431時間17分前)
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第28話 「Love Drive」 (No.1642への返信 / 28階層) - スタンリー

第28話「Love Drive」


淳平と綾は近所のスーパーの駐車場に停車している。


淳平「じゃぁ、俺は助手席にいるから、運転して。」


綾「うん。」

二人が席を替わる。


綾「運転する前に1ついい?」


淳平「何?」


綾「あの時あったぬいぐるみはどうしたの?」


淳平「夕方、家に帰ったときに、みんな車から降ろしといたから。

でも、車内が寂しくなっちゃたな。」


綾「私は、うれしいけど。でも、大丈夫なの?」


淳平「あのバイトは、もう止めるからいいんだ。

それに、綾がなにか自分のものを置きたいかもしれないからな。

そうだ、綾にこれをあげるよ。」


淳平が、ポケットから、車のリモコンドアロック付きのスペアーキー

を渡す。



綾「これって、車のカギじゃなないの?

どうして?」



淳平が照れながら・・・。


淳平「俺の車の指定席チケットみたいなもんかな・・・。

本当は、別の何か良いものを渡したいけど、今日付き

合ったばっかりで何も渡せるものがないからさ。」



綾「ううん、とてもうれしいよ。

私達、本当に付き合ってるって証拠みたいだからね。

本当言うとね、今日家に帰って眠るのが怖かったの。」



淳平「怖い?」



綾「明日の朝、起きたらね、今日のことが全部夢じゃないかと思ってね。

だから、この車のカギを私のベッドの近くに置いておけば、起きても夢

じゃないって思えるから・・・。

これで安心して眠ることができると思う。」



淳平「そうか。

それなら良かったけど・・・・・じゃあ、おしゃべりはこれ位にして

そろそろ運転の練習を始めようか。」



スーパーの駐車場で運転の練習を50分ほどする。



淳平「そろそろ、やめて家に帰ろうか?」



綾「そうね。

で、どうだった私の運転?」



淳平「最初はどうかって思ったけど、だんだん良くなってきた。

運転なんて慣れればどうってことないんだからさ。

あと、ちょっと練習すれば完璧だと思うよ。

だから、また一緒に練習しような。」



綾「うん、一緒に運転してるとね、なんとなくだけど運転が

すぐ上達するような気がするの。」



淳平「じゃぁ、ここから綾の家まで、自分で運転してみるか?」



綾「えっ、それはちょっと・・・・。」



淳平「冗談だよ。

席を替わろうか。」



綾「うん。」



二人が席を替わる。


淳平「送った後、家の前じゃできないから。」

淳平から綾に車内でキスをする。



二人がキスを終え、綾がその余韻に浸っている。


淳平「そろそろ行こうか?」



綾が顔を赤らめて・・・。

綾「うん・・・・。」




二人を乗せた車がスーパーの駐車場から車道に出る。







車内で。


綾「今日は、疲れたわね。」


淳平「いろいろあったからな。」


綾「そうね。」


淳平「これで、あとさつきが来てたら、もう俺の頭の中は滅茶苦茶

になってたよ。」



綾「北大路さん、夕方、私の家に来てたの・・・。」



淳平「なんで家に?」



綾「外村君から、西野さんと別れた話を聞いたらしくて、それで淳平

に告白する前に私に淳平のことをどう思っているのか聞きに来たの。」



淳平「さつきが俺じゃなくて綾のところに聞きに?

それでさつきに何て?」


綾「私、淳平と付き合ってるって言っちゃったの。

そしたらね、北大路さんが淳平のことをあきらめるって言ってくれたの。

あと、今日はこちらの実家に泊まって、あす京都に帰るって。」



淳平「さつきが・・・・あきらめるって・・・。」



綾「どうしたの?」



淳平「いや、この前会えなかったからさ、久しぶりにさつきと話してみた

いって思ってさ。

でも、やっぱ今日は無理だな。心に余裕がないからさ。」



淳平(西野とさつきがおれの前を去って行ったってことだよな。

彼女を選ぶってこういう事なんだな・・・・。)



綾「そうね、私も・・・・。」

綾(真中くん、何かさびしそうね。)



綾「ところでね、真中くん・・・じゃなかった淳平、平日だったら

いつ電話してもいいのかな?」



淳平「基本的にいつでもいいけど・・・でもバイト中は故意に電話にでない

時があるからなぁ。

今月の月・火は、朝から5時位までおそらく工事現場に出てるし、午後8時

から居酒屋でバイトで夜12時位かな。

水曜は午前中だけ現場でバイトだし。

木曜は現場は休みだけど午後8時位から居酒屋でバイトで夜12時だな。

金曜と土曜は、クラブだけでで午後6時から深夜まで働いてるけど・・・

といってもさぁ、角倉さんのトコで就職が決まったら、みんな辞めちゃう

からな。」



綾「3つもお仕事を掛け持ちしてたんだね。」



淳平「これに角倉さんからの依頼が加わるから合計4つってところかな。」



綾「できるだけお仕事の邪魔にならないように電話するからね。」



淳平「分かった。

で、そっちは?」



綾「私は、基本的にいつでもOKだからね。

もし駄目な時は、そう言うからね。」



淳平「ああ、分かった。常識の範囲内で電話をするから。」



綾「楽しみにしてるね。」



淳平の車が綾の家の前で停車する。



綾が、助手席のドアをあける。

綾「送ってくれてありがとう。おやすみなさい。」


綾が車を降りる。



淳平「ああ、おやすみ。」


淳平が挨拶をすると車を発進させる。


綾が淳平を見送ったあと、玄関から自宅に静かに入った。


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[No.1643] 2013/01/12(Sat) 19:06:45 (104304時間8分前)
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第27話 「嵐のあとに・・・」 (No.1640への返信 / 27階層) - スタンリー

第27話 「嵐のあとに・・・」



綾と淳平はつかさが出て行った後、淳平の部屋にいる。


淳平「東城が俺の家に来るのは久しぶりだな。」


綾「そうね、家庭教師みたいなことをしてた時以来ね・・・・。」

綾(あの時、居間で真中くんに無断でキスをしたんだ・・・・。)






淳平は、綾が黙って何かを思い出しているのを察して・・・。

淳平「ごめん、なんか嫌なことを思い出させたみたいだな。」


綾「ううん、別になんでもないから。でも、真中くんのお部屋に

来るのは久しぶりだから、懐かしい気がするわ。」

綾が、淳平の部屋を見渡す。



淳平「撮影の機材と賞状が増えたくらいで、あの頃と基本的に

何も変わってないはずだけど。」


綾「あの作品の他にも賞をもらってたんだね。

あっ、エアコンがある。」


淳平「ああ、エアコンね、さすがに夏は暑くてさ、扇風機だけじゃ

厳しいからな。」



綾「そうね、前に来たときって、とても暑い日だったね。」



淳平「そうだったな。」



綾「・・・。」



淳平「・・・。」

二人の会話が途切れる。






淳平が話かける。


淳平「そういえば、何か用だった?

電話を待ってくれてると思ったけど・・・。」



綾「えーっとね・・・・。」


淳平「付き合ってるわけだから、いつ来ても悪かぁない

けどな。」



綾「そうよね。」


綾「・・・。」



淳平「・・・。」

二人の会話が再度、途切れる。






淳平「誤解して欲しくないから、話すけど。

西野は友達の結婚式の後でここによっただけだから。」


綾「うん・・・。」



淳平(いまいち、信用してないみたいだけど・・・。

さっき涙こそ見せなかったけど、きっと涙目くらいになって

たから。)



淳平「さっき、西野と何があったか話すよ。」



綾「別に、いいわ。」



淳平「いいや、俺は知っておいて欲しいんだ。」



綾「・・・。」


淳平「西野は友達の結婚式出席の為に昨帰国して

今日、その結婚式の後に、ここにきてこの前の手紙

のことを謝りにきたんだ。」



淳平「手紙のことを気にしててさ、それで、俺がもうあの失恋から

立ち直ったから気にするなみたいなって言って、その後に東城とつき

合ってるって・・・。」



淳平「そうしたら、西野が怒って帰るって言って、一緒に玄関に

行ったら東城がドアを開けて、後は知っての通りなんだけどな。」



綾「つきあってるのだって、西野さんと別れたあとなのに

どうして怒るの?」



淳平「つきあってるっていうのはさぁ、言いにくいんだけど

・・・今日からじゃなくて・・・4年前からって嘘をついた

から。」



綾「さっきドアが開いたとき真中くんが私のことを綾って呼ぶから

何かあったと思ったけど、そうだったんだ。」



淳平「西野の悲しい顔を見るのがつらかったから嘘をついたんだけど

・・・東城をだしに使て悪い事をしちゃったな。」



綾「ううん、別に私のことはいいんだけどね。ただ、西野さんがね。」



淳平「・・・。」



綾「ごめんなさい。」



淳平「別に怒ってないから、特に謝るなって。」



綾「違うの、実は、私、さっき、真中くんの所に西野さんが来ている

のを知ってたの。」



淳平「だっ、誰に聞いたんだ?」



綾「それは、私の口からは言えないけど・・・。」




淳平「あの時ここに西野が来てたのを知ってたのは本内だけだから

唯から教えてもらったと思うけど。」



綾「分かっちゃったみたいね。

でもお願いだから唯ちゃんを怒らないでね。」



淳平「怒らないから。

それにもし怒ったとしても逆ギレされるのがオチだし。」



綾「そうね。

それで西野さんが来てたのを知ってね、彼女と私とを比べたら

断然綺麗で性格もいいし、絶対にお料理だって上手に出来ると

思うから、もしかして真中くんって西野さんとよりをもどしちゃ

うのかなって思うと、家でじっと電話を待つことができなくなっ

ちゃって、ここに来ちゃったの。

でも、大変な時に来ちゃったみたいで、本当に、ごめんなさい。」



淳平「俺って全然信用がないんだなぁ。

確かに高校時代の優柔不断な俺を知ってるから仕方がないかも

しれないな。」



綾「4年以上も分かれていたって言っても、お互い好きあっていた

わけだしそう関単に、割り切れるわけじゃないと思うから・・・。

それに、真中くんは、嫌われようとして、あえてあんな嘘をついた

わけだしとてもつらかったと思うから仕方ないよ。」



淳平(東城って何て優しいんだろう。)

淳平「今の恋人を前にして言う事じゃないけど、東城が言うように

すぐには
忘れる事はできないと思う・・・・だけど西野のことを忘れるよう

努力するから。」



綾「ううん、無理はしないでいいからゆっくりでいいのよ。

私も真中くんにフラれても、ずぅっと忘れられなかったわけだしね。」



淳平「そうか・・・、今朝東城の家で、あの時フッたことは謝らないっ

ていったけどそれを聞いちゃうと謝ったほうが良さそうだな。

本当にゴメン。」



綾「ううん、そんなつもりで言ったんじゃなくて・・・、あの、なんて

言えばいいのかな、好きになった人の事を忘れるのは難しいって事を言

いたかっただけなんだけど・・・。」



淳平「東城の言いたい事は分かったから、いいよ。

これで西野も俺なんかに会いに来たりはなしたりすることも無いだろう

しな・・・。

じゃぁ、この話は、おしまいにして、もっと明るい話をしようぜ。」



綾「そうね、私たち今日から付き合うことになったんだから、本当

ならもっと明るい話をしたいわね。」


綾(でも、真中くんさびしそう・・・・。)



淳平「そうだな、ところで、今日言ってた話だけど、何か思い浮かん

だこととかある?」



綾’「それって、水曜日で良かったんじゃなかったの?」



淳平「そうだけど、なんとなくさ。」



綾「そうね。実は1つあるの。」



淳平「それって何?」



綾「お互いの呼び方なんだけどね。東城とか真中くんじゃなく

てもっと恋人らしい呼び方ってあるのかなって思って。」



淳平「呼び方かぁ。東城は、俺のことをどう呼びたいんだ?」



綾「真中くんから言ってみて、その呼び方を参考にして決め

たいから。」



淳平が少し考えている。



淳平「そうだな、あっちの国の映画とか見てて、昔ッから

いいなって思ってたのがあるんだ。」



綾「海外の呼び方なの?」



淳平が真顔で・・・。

淳平「じゃぁ、俺は東城の事をハニーって呼ぶから、それに

あわせて、俺の事をダーリンって呼んでくれ。」


綾(嘘、冗談よね。)

綾「本気なの?」



淳平「ああ、本気だけど・・・嫌か?」



綾「嫌じゃないけど、ちょっと恥ずかしいかも・・・。」



淳平「慣れれば、平気だって。じゃぁ、早速練習してみよう。」


綾「えっ、今言うの?」


綾の質問を無視して、淳平が話しかける。

淳平「水曜日は2時に向かえにいくから、遅れないように準備

しておいてくれよ、ハニー。」



綾が顔を赤らめてうつむきながら、ためらいながら小声で・・・・。

綾「分かったわ、・・・・ダーリン。」


綾(二人しかいないのに、凄く恥ずかしい。これって人前でも

言わなきゃならないの?)



淳平「・・プーッ、・・・・ハハハハハ。」

淳平が笑いをこらえていたが、我慢しきれなくなって笑い出す。



綾「えっ、真中くん、これって冗談だったの?」



淳平「俺、普通の日本人だぜ。そんなこと言いいたい訳ないじゃん。」



綾の顔が恥ずかしさで更に赤くなる。

綾「もぉー、さっき本気だって言ってたから、呼んだのに。」



淳平「ゴメン、ゴメン、あまりにも場が重苦しかったから、それで少し

明るくしようと思って言ってみたけど、まさか本当に言うとは・・・。」



綾「真剣に呼び方を考えてたのに。」



淳平「じゃぁ、東城はどう呼んで欲しいんだ?」



綾が淳平に背をむけながら・・・。

綾「もう、知らない。」



淳平「だから謝っているじゃないか。機嫌を直してくれよ。

東城の呼んで欲しい呼び方で呼ぶからさぁ。」



綾(本当は『あや』って呼んでもらいたいけど、教えてあげない。)


綾が淳平に背を向けたまま話す。

綾「私は、怒ってるの。」



淳平が後ろから両腕を綾の首の周りに優しく腕を回して抱きつきながら

顔を綾の左耳の横に近づけて優しくささやく。



淳平「好きだよ、綾。」



綾「えっ・・・!?」

綾が、突然の予期せぬ言葉に驚き言葉を失う。



数秒の沈黙の後、淳平が綾から離れる。

綾が顔を赤らめ、振り返り、嬉しそうな顔をしながら・・・。

綾「そ、そんな甘い言葉でささやかれても騙されないんだからね。」



淳平「本当に悪かった。でもこれで分かったけど、東城は、『あや』

って呼んで欲しいんだな。

じゃぁ、俺のことも『じゅんぺい』でいいから。

ただ、東城が他の呼び方で呼びたいんなら別だけど・・・。」



綾が機嫌を直して。

綾「ううん、『じゅんぺい』でいい。」



淳平「じゃぁお互い名前で呼ぶことにしような。」



綾「そうね。」



淳平「ところで今日、弟さんにここまで送ってもらったみたいだけど

車は運転しないのか?」



綾「一応運転はできるんだけどね。家族がさせてくれないの。」



淳平「家族が?どうして?」



綾「私って、4年前にお父さんの車を駐車場に入れるときにね

家の塀ぶつけて車の一部を壊しちゃったことがあって、それ以

来運転させてくれないの。」



淳平「せっかく、免許があるのにもったいないなぁ。

えーと、今日は日曜で今9時だし、近くのスーパーは閉店してるな。」


綾「スーパーがどうしたの?」


淳平「スーパーの駐車場なら、運転の練習ができると思ってさ。

今から行ってみようぜ。」



綾「今からなの?」




淳平「そう、今から。」


淳平が車のキーを机の上から取り、二人で部屋を出た。


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[No.1642] 2013/01/06(Sun) 21:14:47 (104446時間0分前)
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