| ウクライナを巡る日本の報道・議論で抜けている「ブダペスト覚書」
8月29日の読売新聞に、「核の脅し 崩れる秩序[ウクライナの教訓 侵略半年]<5>」と言う見出しの記事と、「「核放棄で保護」守られず…元ウクライナ国家安全保障・国防会議書記 ウォロディミル・ホルブリン氏[ウクライナの教訓 侵略半年]」と言う見出しの記事の二つの記事がありました。 ------------------------------------------------------------------------------------ 核の脅し 崩れる秩序[ウクライナの教訓 侵略半年]<5> 2022/08/29 05:00 読 売 ウクライナ情勢
1991年のソ連崩壊直後、ウクライナは米露に次ぐ世界第3位の核保有国だった。94年のブダペスト覚書で、米英露が領土の安全を保障するのと引き換えに核放棄を受け入れた。
「ブダペスト覚書」について証言するホルブリン氏(9日、キーウで)=冨田大介撮影
ウォロディミル・ホルブリン氏(83)はウクライナ国家安全保障会議書記として安保政策を切り盛りし、覚書に深く関わった生き証人だ。ミッテラン仏大統領(当時)がその直後、ウクライナのクチマ大統領(同)との面会時に発した一言が、今も脳裏から離れない。
「あなたたちはだまされるだろう」
予言はロシアによる侵略で的中した。ホルブリン氏は「署名国は我々を守らなかった」と嘆息する。国内では当時、核放棄に異論もあったが、ウクライナには核兵器を自前で維持する力はなく、非核化を選んだ。
米国も核放棄を強く迫った。ウクライナの核弾頭1240発は大陸間弾道ミサイル(ICBM)用で、その標的は米国だったためだ。米国との協力関係構築に向け、選択の余地はなかった。
(以下略) ------------------------------------------------------------------------------------- 「核放棄で保護」守られず…元ウクライナ国家安全保障・国防会議書記 ウォロディミル・ホルブリン氏[ウクライナの教訓 侵略半年] 2022/08/29 05:00 読売
(前略)
ウクライナはブダペスト覚書で核放棄の道を選んだが、それは正しかった。ウクライナの核兵器はソ連国防省が設計・製造したものだ。ウクライナには専門の技術者や研究者がおらず、単独で核兵器を扱ったこともない。ソ連の一部だったからこそ、保有できた。
(中略)
ブダペスト覚書の署名国はなぜ、約束通りウクライナを保護しなかったのか。この問いは、署名国に対して投げかけられている。署名国はロシアの安価な石油とガスで裕福に暮らし、生活水準も向上した。
彼らは自分たちがロシアを民主化に導くと信じていた。しかし、プーチンが権力を握り、2014年にクリミアを併合した後、そんな話は聞かれなくなってしまった。(聞き手・キーウ 工藤彩香)
◆ブダペスト覚書= 1994年12月、米英露が署名した安全保障に関する覚書。核放棄を決め、核拡散防止条約(NPT)に加盟した旧ソ連のウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンの主権と国境について、核保有国の米英露が尊重し、脅威となることや武力行使を控えることなどを定めた。NPTで核保有が認められた残る中国、フランスは覚書に署名しなかったが、声明でウクライナの主権や領土の一体性の尊重を約束した。 ------------------------------------------------------------------------------------ このブダペスト覚え書について、二つの記事には「保障」と「尊重」と言う翻訳の大きな違いがありますが、米・英・露の3カ国は、他の国、他のNATO加盟国と異なり、ウクライナの安全保障に関して特別な関係と義務がある事が分かります。 その中でロシアが「尊重」、「保障」の義務を果たさないどころか、正反対の侵略行為を行っていることはあり得ない事態です。
この「ブダペスト覚え書」の存在は、今回のロシアによるウクライナ侵略を論じるに当たって、重視されるべきものだと思いますが、この覚え書きの存在は今まで日本で報じられるとはなかったように思います。私もこの記事で初めて知りました。
クリミア併合の時も「ブダペスト覚え書」の事が報じられた記憶はありません。日本のマスコミは国民に必要な情報を、ロシアに不利な情報を届けていません。
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No.1061 - 2022/09/11(Sun) 07:10:48 [pknn018-223.kcn.ne.jp]
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