新日鐵に対する恩を仇で返した韓国企業ポスコ
7月4日の読売新聞は、「技術流出 特効薬なし 新日鉄、ポスコを提訴 1000億円賠償請求」と言う見出しで、次のように報じていました。 ----------------------------------------------------------------------------------------------- 2012.07.04 技術流出 特効薬なし 新日鉄、ポスコを提訴 1000億円賠償請求
◆抑止に期待 技術力を強みとする日本メーカーの多くが、技術流出の危機に直面している。新日本製鉄が、同社の独自技術がOBを通じて不正流出したとして、韓国の鉄鋼最大手ポスコに損害賠償と製造・販売の差し止めを求めて起こした訴訟は、その代表的なケースだ。今回の提訴は、流出の実態を明らかにするのが狙いで、不正を抑止する効果も期待される。ただ、流出を抜本的に防ぐのは難しいのが実情だ。(経済部 香取直武、福森誠、関連記事経済面) ◆門外不出 「当社の国際競争力の源泉である技術先進性を確保するため、不正行為には断固たる対応をとる」 新日鉄が4月25日、ポスコと同社日本法人、新日鉄OBを相手取り東京地裁に起こした損害賠償訴訟の額は計1000億円。異例の巨額訴訟には、流出を断じて許さないという新日鉄の厳しい決意がにじみ出た。 ポスコが不正取得したとされるのは、発電所の変圧器に使われる方向性電磁鋼板の製造技術だ。新日鉄が1953年、米鉄鋼メーカー「アームコ」からライセンス導入し、20年以上かけて高性能化に成功した。欧米メーカーは開発に失敗し、新日鉄から技術供与を受けることになった。 新日鉄は、同鋼板を低コストで生産できる技術も開発。これは「金属技術の粋を集めた製品」(幹部)として門外不出にしてきた。 しかし、2005年頃から、参入したばかりのポスコが急速に品質を高め、さらに中国の製鉄会社・宝鋼集団も同水準の製品を出すようになった。「高性能の製品をこんな短期間で作れるはずがない」。新日鉄はポスコに疑惑の目を向けたが、技術漏えいの証拠が得られぬまま、市場は侵食されていった。 ◆2次流出 07年、事態は意外な展開を見せる。ポスコの元研究員が、方向性電磁鋼板の技術を宝鋼集団に漏らした疑いで刑事訴追されたのだ。当時、韓国では「国家機密の流出」として大騒ぎになった。 ところが、裁判で元研究員は「宝鋼に売ったのは、実は新日鉄の技術だった」と証言。08年に有罪が確定し、判決文には、新日鉄の内部資料とみられるリストや、技術を漏らしたとされる新日鉄OBの名前もあった。 新日鉄は、これをもとに、ポスコに対応を求めたが、「問題ない」の一点張り。ポスコは「10年間で30億円を投じて開発した」と主張しているが、40年以上にわたって数百億円をかけた新日鉄は「とんだ笑い話」(幹部)と受け止める。 方向性電磁鋼板は、鉄鋼メーカーのブランド力に関わる戦略的な製品だ。宗岡正二社長は「最新技術で世界に冠たるメーカーになろうとしており、その技術が流出してはかなわない」と話す。 一方、稼ぎ頭を失いたくないポスコは「訴訟には積極的に対応する」と徹底抗戦の構えを見せる。第1回口頭弁論は秋以降となる見込みだ。 ◆狙い撃ち OBは方向性電磁鋼板の開発に携わり、技術管理の責任者でもあった。約20年前、50歳代で退職した時に秘密保持契約を結んだが、その後、金銭と引き換えに継続的に情報を漏えいしていたとみられる。 関係者によると、漏えいには、複数の技術者OBが関わっていたという。OBらは論文を執筆するなど、業界では有名な存在だった。ポスコ側は、こうした技術者らを組織的に狙い撃ちしたようだ。 〈ポスコ〉 韓国最大の製鉄会社。1968年に「浦項総合製鉄」として設立された。新日鉄の前身である富士製鉄と八幡製鉄などから技術協力を受け、73年、原料精製から製品製造まで行う一貫製鉄所を韓国で初めて完成させた。2000年に新日鉄と株式を持ち合う戦略的提携契約を結び、05年には韓国企業として初めて東京証券取引所に上場した。世界鉄鋼協会によると、11年の粗鋼生産量は約3900万トンで世界4位。 〈方向性電磁鋼板〉 鉄の結晶の向きが一定の方向にそろっている特殊な鋼板=写真、新日鉄提供=。発電所から各世帯に電気を送る変圧器に用いられ、送電時の電力ロスを少なくするのに役立つ。新興国を中心に電力インフラの需要が増えている上、情報技術(IT)を活用して電力供給を自動的に制御する次世代送電網(スマートグリッド)の普及が見込まれることから、市場拡大が期待される。 ◆漏えい立証 高い壁 川崎市のプレスメーカーの元社員ら2人が6月、企業秘密の図面データを複製し、中国企業に漏えいしたとして、不正競争防止法違反容疑で神奈川県警に逮捕された。OBが不正流出に関わった疑いがある点で、新日鉄のケースと同じだ。 かつて、「産業スパイ」は外部からの侵入者を意味したが、近年は内部による漏えいが目立つ。このため、多くの企業が社員の退職時に秘密保持契約を結び、漏えいによって損害が発生した場合は提訴することなどを定めている。 さらに、2009年には不正競争防止法が改正され、「営業秘密」を不正に持ち出しただけでも刑事罰の対象となった。ただ、同法の営業秘密侵害を争う民事訴訟件数は年間10〜20件にとどまり、原告の敗訴も珍しくない。新日鉄の例のように漏えいの証拠が発覚するのは極めてまれだ。 また、ある技術が「営業秘密」と認められるには、〈1〉秘密として管理されている〈2〉有用な情報である〈3〉公然と知られていない——の全てを満たす必要がある。職務規定で「業務上知り得た情報を漏えいしてはならない」などと定めているだけでは、「秘密」と認定されない可能性がある。 中国にある日系人材紹介会社は「他社に移った技術者は、成果が出せなければ解雇されるので、知っている技術はすべて教えるだろう」と話す。ライバル企業への転職を禁じるべきだとの議論もあるが、憲法が保障する「職業選択の自由」に抵触する恐れがあり、簡単ではない。知的財産保護に詳しい小松陽一郎弁護士は「技術者の頭にある情報の流出は止められない。それだけに、新日鉄の巨額賠償訴訟は、情報漏えいの抑止効果が期待できる」と指摘する。 〈不正競争防止法〉 事業者間の公正な競争を確保し、それに関する条約などの実施を促す法律。1934年に制定され、近年は知的財産権重視の影響などを受けて何度も改正されている。法律の保護対象となる「営業秘密」には、設計図や製造ノウハウ、顧客名簿、仕入れ先リスト、販売マニュアルなどがあたるとされる。 ◆日本人、好待遇で国外へ 中国の人材会社社長 語る 技術流出は人材流出に伴って起きるのが一般的だ。特に最近は、大規模リストラなどで行き場を失った技術者が、中韓メーカーに高額報酬で招かれる構図が浮かぶ。その実情を、中国のある人材紹介会社社長が語った。(中国総局 幸内康) ◇ 中国企業が日本人技術者の採用を始めたのは10年ほど前。当初は家電業界が多かったが、最近は建設機械や自動車などに広がってきた。日本人は誠実に仕事をするので需要は多い。 我が社の紹介で中国企業に就職する日本人は年60〜80人かな。年収は多ければ3000万円を超え、通訳や通勤用の車、高級マンションが無料で提供される。日本への帰省費用を家族の分まで負担してくれるなど、日本では考えられない好待遇だ。 中国企業が好む年齢層は50〜65歳。早期退職者も有力なターゲットだ。家電は10年前の経験が役立たないので、直近5〜8年の経歴が評価される。 ある日本人技術者(63)は退職後もなかなか再就職先が見つからず、仕方なくコンビニエンスストアでアルバイトをしていた。でも、今は中国企業で1000万円を超える年収を手にしている。中国に来た日本人技術者の多くは、指導者として尊敬され、楽しく仕事をしている。人材は条件が良いところに流れる。日本社会は、働ける人に働くチャンスを与えていないのではないか。 ------------------------------------------------------------------------------------------------- ポスコは企業創設の時から、新日本製鐵の指導援助により発展してきた企業です。それにもかかわらず、このような窃盗行為を働くとは、まさに恩を仇で返す背信行為と言うべきです。かつての勤務先企業を裏切った日本人技術者も同様です。
それにもかかわらず、この読売新聞の記事は、「技術流出 特効薬なし」、「漏えい立証 高い壁」とか、「日本人、好待遇で国外へ 中国の人材会社社長 語る」などの見出しを掲げていて、彼等に対する怒りはみじんも感じられません。彼等が卑劣な犯罪者であることを忘れているかのような記事です。日本企業がかつてこのような卑劣な手段で外国の技術を手に入れたことがあったでしょうか。
「中国に来た日本人技術者の多くは、指導者として尊敬され、楽しく仕事をしている。人材は条件が良いところに流れる。日本社会は、働ける人に働くチャンスを与えていないのではないか」などと人ごとのように報じていますが、技術者といえども在職中に得た技術は企業のものであって個人のものではありません。 退職後に中国の企業に就職し、いかに楽しい毎日を過ごそうとも在職中に得た企業秘密を漏洩するのは弁解の余地のない明白な犯罪行為です。働く人にチャンスがあるかどうかとは別の問題です。チャンスに恵まれないことが秘密の漏洩を正当化する事にはならないことは言うまでもありません。
読売新聞は「技術流出 特効薬なし」と見出しに書いていますが、もし、読売新聞の記者が記事に怒った読者に暴行されたら、あるいは殺害されたら、読売新聞は世界各地でジャーナリストに対する暴行事件が後を絶たないことを報じて、「記者に対する暴行事件を防ぐ特効薬はない」と記事の見出しに掲げるでしょうか。
また、読売新聞は、「人材は条件が良いところに流れる。日本社会は、働ける人に働くチャンスを与えていないのではないか」と書いていますが、読売新聞は、もし自社を解雇された記者が、文芸春秋社に再就職して、読売新聞在職中に得た秘密を記事にして漏洩しつつ、楽しい毎日を送っていたとしたら、それを容認できるでしょうか。 「日本社会は、働ける人に働くチャンスを与えていないのではないか」と言う言葉が、いかに無責任であるか容易に分かるはずです。
この記事はどうしようもない記事です。日本のマスコミは腐っています。腐っているのは朝日新聞だけでないことをこの記事は教えています。
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No.91 - 2012/07/05(Thu) 23:07:42 [pon218-252.kcn.ne.jp]
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