[ 掲示板に戻る ]

過去ログ閲覧モード

不可視の姫君 / TA
真っ赤な知恵の実
数えては幾つ?

拒む素肌は肌を拒む
痛む傷跡は生を刻む

血濡れの花は華やぎ
毒蛇は黒い牙を深く
突き刺す

薄汚れた着物はギラギラ吐瀉物の暁
爛れた腕振り回し独り
漆黒の壁を幾度叩く
穢れを抉り咽び泣く

はじまりは春
はらりはらりと寂しげに散る
死桜にはなれない?
果実は熟れて
血の味がする

忘れられないでしょう
ワスレラレナイデセウ

名付けては殺したの
名付けては殺した
わたしとワタシのこと
吊るして殺したの
影だけ残して順番に

形を失った我が子を
名付けては殺したの

忘れられないでしょう
ワスレラレナイデセウ

ああ 棘の生えた
薔薇になりたい
星の涙を砂に埋めて
また夜が来る
黄金色の花街は
行き交う人と人と人

今日も今日とて
石榴色の満月
数えては幾つ?

No.1613 - 2024/11/03(Sun) 23:23:41

Re: 不可視の姫君 / 荻座利守
内面的な苦悩を描いた詩のようですね。
冒頭の「真っ赤な知恵の実」というところは、人間の原罪を連想させます。
そして中盤の「名付けては殺した」というのは、アイデンティティの形成がうまくいかない煩悶を表しているのでしょうか。
また、「棘の生えた薔薇になりたい」とは、美しくとも人を遠ざけるものに憧れているのでしょうか。
タイトルの「不可視の姫君」を含めて、様々な解釈ができる、幅のある作品のように感じました。

No.1616 - 2024/11/04(Mon) 09:35:26
人生 / 親指

 人生は川では、ありません。

 行きつくところは海でも、ありません。

 誕生と死の空が、重なるところ。

 人生は地球と、やっと気づきました。

No.1609 - 2024/11/03(Sun) 11:57:00

Re: 人生 / 齋藤純二
人の命は地球より重たい、というように
人生を見た時の視点が宇宙レベルというのも
精神世界では納得できそうですね。

No.1610 - 2024/11/03(Sun) 12:34:11
浮気 / 忍者

 浮気の花が咲きました。

 雪の花のようでした。

 幸せのあとから、迷子の子が後をついてきます。

 一人二人三人、四人を超えて、五人います。

No.1605 - 2024/11/03(Sun) 11:18:00

Re: 浮気 / 齋藤純二
浮気の花が咲き種子ができ
あららあららと……
頑張って養っていかなければなりませんね。
浮気の花、という表現が凄いですね。

No.1608 - 2024/11/03(Sun) 11:34:53
晴れた日に / 透明人間

 AIが歩いています。
 彼のあとをガラケイが、うつむいて
 歩いていました。
 AIが、つまずいたようです。
 救急車が呼ばれました。
 救急車はAIが、いないので、きょうは休みとのことでした。
 ガラケイが、AIを抱き起しています。

No.1604 - 2024/11/03(Sun) 09:21:37

Re: 晴れた日に / 齋藤純二
近い将来のAI依存への警鐘なのかな、
なんて思い拝読しました。
デバイスや情報の使い方を間違えると
なんだか怖い時代になりそうですね。

No.1606 - 2024/11/03(Sun) 11:22:10
老いた門出 / 石ころ
 
 老いた列車が、うしろから押し車に載せられて
 運ばれていきます。
 転職先の田舎の路面電車に造り替えられるため
 でした。
 
 きょうは、お披露目の日。

 乗っているのは、園児たちばかりでした。
 列車はネクタイをしているようでした。
 窮屈なのか脇腹をかいています。

No.1603 - 2024/11/03(Sun) 08:25:14

Re: 老いた門出 / 齋藤純二
定年後に契約社員として新たな部署で働き出し
今までとは違う仕事着きてちょっと照れ臭い自分のことを
思ったりできた作品でユニークでした。

No.1607 - 2024/11/03(Sun) 11:30:40
三段とび / 中学1年生
   (犬)
 
 犬が吠えている。
 人相の悪い私がいるからだ。
 犬がなきやんだ。
 家から飼主が出てきた。
 犬が尻尾をふっている。
 めしに、ありついたらしい。


   (災害)

 家が流されてゆく。
 岸辺で家族が、それを見送っている。
 土砂が水門を塞いだ。
 首を絞められている拡声器がサイレンを
 鳴らしていた。
 雨が、さらに強くなった。


   (仮面)

 仮面が泣いている。
 親に尻をたたかれた。
 仮面が怒っている。
 彼の足が踏まれている。
 仮面が笑っている。
 尻が、かいーの。

No.1600 - 2024/11/03(Sun) 03:31:54

Re: 三段とび / 齋藤純二
過去にあった出来事を思い出しての三段跳びでしょうか。
首を絞められている拡声器、
なんとなく詰まった声の感じが上手く表現されていますね。
仮面が泣いてる、
深層にある悲しみみたいなのが伝わってきますが、
次に仮面が笑い、尻が痒いというところで
読者はかなり飛べたんじゃないかな。

No.1602 - 2024/11/03(Sun) 07:18:16
ごめんネ / 小指
 
 ごめんネ。
 黙りこんで。
 ごめんネ。
 握った手のひらをひろげられなくて。
 ごめんネ。
 にっこり、できなくて。
 ごめんネ。
 こころに秘めたものができて。
 ごめんネ。

No.1599 - 2024/11/03(Sun) 00:21:45

Re: ごめんネ / 齋藤純二
内情は分かりませんが、
その場の雰囲気から気持ちがとても伝わってきますね。

No.1601 - 2024/11/03(Sun) 07:09:52
憑依、あるいは破滅 / TA
アフロディテを夢想して
自らの死を歌う男がいた
美しい声を持つ吟遊詩人だった

その二つとない声で唄い
岬にて嵐を呼ぶ
海は暗くゆらいで
たちまち暗雲が空に満ちていった

「死の先に、美と一体化する夢」
狂気の気配は男の心身を蝕んでいった
冷たい雨風に幾日もさらされ
男はついに病にたおれた

得体の知れない悪夢が襲う
悪寒と夢幻のなかで男は呟いた

「永遠の美しさの象徴
 深淵の彼方より生まれしアフロディテ様
 どうか連れて行ってください
 あなたの創りたもうた世界へ」

アフロディテと呼ばれた異形はどこからともなく
黒装束に鎌を持ち現れた
それは美しい女神の姿ではなく
ある飢えた農夫のような
妖しげに宙に浮かぶ男の白骨だった
アフロディテは死神の姿をしていた

「我こそがアフロディテである」

「長い嵐の中で
 あなたを夢見た
 あなたへの愛は
 一刻さえも永遠に変えるでしょう
 美の楽園でわたしはあなたに跪きます
 わたしがわたしでなくなるまで」

「それは叶わぬ。
 嵐を呼んだのはお前なのだから。」

「わが生涯の記憶は死を以て
 肉体と共に滅びるのです
 わたしはただ一度でも
 美しい世界が見たかった
 世界を美しいと感じたかった
 わたしの祈りを死の先にどうか
 憐れんでください」

「何も滅びぬ。元に還るだけだ。
 醜い魂には醜い生涯が宿る。
 地獄にこそ存在する真実は
 お前の魂をいつまでも
 優しく慈しんでくれるだろう。」

「ああ、この上なく美しいアフロディテ様
 完成された美のイデアよ
 あなたに触れることは
 死を超えてさえも叶わないのですか」

「死を超えることはできない」

「せめて仮の御姿でも
 今お見せください
 忘れえぬほどの情念で
 この肉体の呪いを解いて
 悦びの飛翔をください」

アフロディテはいつものように
鎌を振り下ろした

男はなんと
望み通り、魂だけ死んでしまった

No.1598 - 2024/11/03(Sun) 00:13:41

Re: 憑依、あるいは破滅 / 齋藤純二
肉体の呪いを解くことは魂だけが死ぬことだったんですね。
男は美の憧れみたいなものを感じていたのかな、
と思いながら拝読させていただきました。

No.1611 - 2024/11/03(Sun) 12:43:07

Re: 憑依、あるいは破滅 / TA
ご感想ありがとうございます。
夢想家の生涯のようなものを想像しました。

No.1612 - 2024/11/03(Sun) 23:18:11
心の底 / 桃
くだけちった想いを
川辺に持って行って
泳がせていた

本当は
川の底に
沈んで欲しかったのに
なかなか
上手く行かなくて

それは
どんどん流されて
下流へと進んで行った

もう
見えなくなるくらいまで
見送って
それでも
沈まないのを見ると

なんだか
絶望的な気持ちだった

これでは
想いがくすぶってしまって

いつまでも
晴れ晴れしない気がした

それでも
どうにか
生きていくしか
術はないから

私は
しゅんと
しながらも
その想いが
とうとう
最後まで
川の底へと沈まなかったとしても

わたしの心の底へと
沈めこんでしまおうと
決め込んだ

No.1590 - 2024/11/02(Sat) 11:31:24

Re: 心の底 / 荻座利守
くだけちった想いが川の底に沈んでゆかなかったのは、流されていった先で、また別の命へと生まれ変わるため。
そんな空想をしてしまいました。
読む人によって様々な受け取り方がされるような、奥行きのある作品だと感じました。

No.1595 - 2024/11/02(Sat) 14:20:42

荻座利守さま / 桃
流されていった先で、また別の命へと生まれ変わるため。という、解釈、素敵です!ありがとうございます!!

読む人によって様々な受け取り方がされるような、奥行きのある作品だと感じました。と、おっしゃっていただけて、とても光栄です!!

またまた、読んでいただけて、御言葉もいただけて。
嬉しくてたまりません。

いつも、ほめてくださるんですね!!
優しいですぅ!!

ありがとうございます!!

これからも、頑張って書いていくので、よろしくお願いいたします!!

No.1597 - 2024/11/02(Sat) 16:04:58
夢と悪魔とロックンロール / kou

夢で悪魔をみた朝は
彼は本当に
悪魔だったのかと考える
髪は長く
赤と
黒の
ネルシャツを着ていた
僕の夢で
暴れまわって
夢は
吹き飛んでしまった
僕は目覚めた


起きてすぐ
アコースティックギターを手に
ロックンロールを
一曲書いた


 チュニジアの夜の底
 宝箱ぶちまけて
 きみだけを選んだよ
 香油を注いでくれないか


妻が起きてきて
ふたり歌った
EmからCへ
くりかえす
くりかえす
さざ波はここでは聞こえないけれど
僕の呼吸はさざ波だった
そこにギターのリズムが重なった
あゝ
悪魔でもなんでもいい
僕の罪を洗いながせ


 

No.1589 - 2024/11/02(Sat) 11:12:37

Re: 夢と悪魔とロックンロール / 荻座利守
チュニジアの夜。
個人的にはアート・ブレイキーを思い出しました。
夢で見た「彼」は本当は悪魔ではなく、創作の神の化身だったのかもしれないですね。
また、奥さんと二人で歌うところがいいなと感じました。

No.1594 - 2024/11/02(Sat) 14:14:13
全529件 [ ページ : << 1 ... 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 ... 53 >> ]