夕方街中の霊園を小学校高学年の娘を連れて訪れた 4才で亡くなった下の娘の墓があった 悦子と深く刻まれた小さな墓は墓地の奥のほうにあった 別れた妻とばったり会ったのは偶然だった 娘の命日でもなかった 上の娘は母親と気づいて私の後ろに隠れた 私は軽く会釈しただけだった ばつの悪い雰囲気が互いをぎこちなくしていた 娘の墓を挟んで双方が柄杓で水をかけた 花が両側から供えられた 花も背中合わせに立っている 上の娘が手を合わせている私と元妻の間に入って線香をたむけた 私は立ち上がって頭を撫ぜるように小さな墓に手を伸ばした 上の娘が妹の墓に話しかけた 「悦ちゃん きょうは父さん母さん一緒だよ うれしいね」 手を合わせていた元妻が思わず娘を抱きしめた 私は膝が折れる思いだった 声が出なかった 桶と柄杓を持ったまま立ち尽くしていた 私の長い影が墓地のさらに奥にのびている 影は私が振り向くことも歩くことも許さない 私は二人をじっとみつめていた 元妻の頬に水が流れていた
|
No.2419 - 2025/08/02(Sat) 01:32:15
| ☆ Re: 墓 / 齋藤純二  | | | 妹さんが家族を合わせてくれたのでしょう。 家族、繋がり、そのようなものが墓を介して とても情景が見えてくるよい作品でした。
|
No.2420 - 2025/08/02(Sat) 14:29:04 |
|