1999年、7月、渋谷。
17歳のあの子は学校をフケて、友達3人とプリクラを撮ったり、109で買い物をしていた。
巷では、例の大予言が連日テレビを賑わせている。
だけど、一向に世界が終わる気配はない。
ま、そんなもんだよね。大昔にどっかの誰かが言ったことなんて。
最近は見てても面白くないニュースばっかりだ。
証券会社や都市銀行が破産しただの、多くの就活生の内定先が決まらないだの、失業率が過去最高だの。
アタシらが社会に出るころには、この国はどうなってんだろうな。
そんなことを考える自分に嫌気が差し、気晴らしにタワレコに行った。
流行りのJ-POPが大音量で延々と流れつづける店内を、あてもなく4人で歩きつづけた。
棚に並んだ数々のCDを流し見しながらダラダラダベっていたら、特設コーナーに大量に置かれたCDのジャケットに目が釘付けになった。
真っ白な背景の中を、制服を着た1人の少女がマシンガンみたいなものを担ぎながら歩いているように見える。
なにあれ?変なジャケット。曲の雰囲気全然分かんないんだけど。
てか今日発売なんだ。あんな落書きみたいなジャケットで売れるわけないっしょ。
そう心の中でつぶやきながら店を出て、山手線から中央線に乗りつぎ、3人と別れたあと待ち合わせの場所へ向かった。
見慣れた黒いジャガーが停まっていた。
助手席のドアを開け、シートに座ると、彼の手が横髪から首筋にかけてをゆっくりとなぞった。
彼とは1年前デートクラブで知り合い、こうして車でホテルへ向かい、暗がりの中で抱き合ったあと、彼からいくらかの現ナマを受け取る。
真っすぐ家に帰ったところで、アル中・ギャン中の父親の暴言と、心配症の母親のヒステリーが待ち受けてるだけだ。
等身大のアタシを認めてくれるのは、彼しかいない。
彼のヴォーグとデュポンをグローブボックスから取り出そうとしたら、中にCDが1枚入っていた。
昼間タワレコで見た、あの変なジャケットのやつだ。
思わず手に取って不審そうに眺めてると、彼が聞きたいか?とつぶやいた。
ヴォーグに火をつけながら小さくうなずくと、信号待ちで手持ちぶさただった彼の両手が、慣れた手つきでケースからディスクを出し、カーステに挿しこんだ。
しばらく読みこんだあと、1曲目が再生された。
その瞬間、信号が青に変わった。
今まで聞いたことが一度もないような、ザラついていてどこか胸に突き刺さるような鉛色の轟音だった。
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No.2900 - 2025/11/25(Tue) 22:49:38
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