真っ白な液体に区切られた ひとつの瓶 もとはプリンの入った瓶 をリサイクルの如く 普段使いに
この白い液体の名は牛乳 おそらく今日のうちになくなるであろう なくならなければ? 明日も牛乳 明後日も牛乳 しあさってには きっと立派な腐った牛乳 その先はチーズになるか 似るかもしれない いや やはり腐った牛乳 もっともっと先は例えば十年先は ない 匂いがひどくなる とてもそのままにはできない 家人にも気づかれる 廃棄される間違いなく 残す意味などない 化学実験にもならない
また一口飲んだ あと数口で全て瓶からなくなる そのあとは 食道を通って 胃を通って 小腸大腸その他を通って 尿として排出される 先ほどの瓶にも実は少し残っている底の方に キッチンで洗い流され 排水口を通り下水道を通り 川 海を通り そのあとは?
もうそのときはすでに牛乳ではない何かに分解されている 食道を通ろうが排水口を通ろうが辿り着くところは同じであって微生物?など呼び名が同じになっても 正確な居場所はもうわからない
今 目の前に存在し一口のんだ瓶の中の牛乳は 全て飲まれてキッチンで洗われて尿として排出されると もうこの世から存在しなくなるのだ
なんと哀しいことだろう 墓など建ててやろうか 『瓶の中の名も無き牛乳たちの墓』 今 確かに言葉の墓として建ててあげたのだ 線香を焚いて百合の花も添えてあげたのだ
だが この詩を投稿し 月日が立てば 数多の詩たちの中に埋もれてしまう わたしのパソコンのハードディスクに残しても わたしが亡くなればいずれ解体されるか その前に私の記憶から忘却されるか どうあっても永遠には存在しない この『瓶の中の名も無き牛乳たち』よ 今 その役目を終えるがいい! 今 飲み干した そしてキッチンで洗った もう私が飲める『牛乳』ではないのだ……
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No.937 - 2024/03/27(Wed) 10:25:53
| ☆ Re: 牛乳 / 齋藤純二  | | | 牛乳は立派に役目を終えたようですね。 語り部の栄養となり、 ごちそうさま、という 儒教的な日本人のモノに対する感覚が 伝わってくるようです。 (個人的な感想です)
さて、自分はどうだろうか、役目とは? その時(人生を終える時)、何を感じるのだろうか? 存在がなくなるということとは? 存在とは? いろいろ考えてしまいますね。 過去も未来もない今に集中して 生きていければなあ、と思いました。
相野さん めちゃ詩を書ける方ですね。 ぜひ本家のMY DEARの掲示板への 投稿をお勧めします。 そこではきちんとした評がもらえますよ。 こちらは初心者用なので。
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No.938 - 2024/03/27(Wed) 11:20:24 |
| ☆ Re: 牛乳 / 相野零次 | | | 齋藤純二さま、感想ありがとうございます。 儒教というのは名前ぐらいしかわかりません。つくづく勉強不足で、詩の世界の広がりの妨げになっているような気がします。 過去も未来も今の連続だとかいうのを、どこかで見た気がして、詩の世界観づくりに一役かっています。
めちゃ詩書けてるんでしょうか。詩集は20冊程度ありますけど、全部読めてませんし、あとはネットで見るぐらいです。 趣味ですね、普通に。 最近、心を病んでしまって、休んでいて暇なのでめちゃ書いてます。暇つぶしにしかなってないのかと思うと、なんだか申し訳ない気持ちになります。
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No.944 - 2024/03/28(Thu) 20:12:47 |
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