庭に鳥の巣箱がある 巣箱にはマイクとカメラを備えてあった私は亡父の猫を抱いて映像を見入っていた そこにはすでに鳥の家族が住んでいた 雨の中親鳥が帰ってきた 口にエサはなかった 小鳥は口を閉ざし黙ったまま俯いている 親鳥は翼をひろげ顔を隠していた 小鳥は身を固くして巣の奥にしゃがみ込んだ 親鳥はぽっこり白い卵を産んだ 卵を引き寄せながら腰を落として温めている 小鳥はさらに奥に押しやられ縮んでいた 抱いている猫の拍動が指に伝わった 雨上がりの日差しが巣箱の中に入ってきた 小鳥は狭い小さな窓に頭を伸ばして外を見ていた 小鳥が鳴いた 短い鳴き声だった カメラが目をしばたいていた オスの親鳥の姿があった 私は顔を画面に近づけた 猫の鳴き声が起こった 鳥がこちらをのぞいていた 鳥の目に私の父の遺影が映っていた 花の中に哀れな顔だけが浮かんでいた 鳥は翼でカメラを覆った 小鳥が親鳥のむこうでさかんにはしゃぐ声が聞こえた
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No.2125 - 2025/05/04(Sun) 00:54:13
| ☆ Re: 春 / 荻座利守 | | | 何とも言い難い独特な雰囲気の詩ですね。 この小鳥と親鳥との関係は、複雑な家庭環境のメタファーのように感じられます。 そして巣箱に備えられたマイクとカメラは、追憶の象徴でしょうか。 「私は亡父の猫を抱いて映像を見入っていた」というところと、「鳥の目に私の父の遺影が映っていた」というところが、そのことを表しているかのように思えました。 最後の「小鳥が親鳥のむこうでさかんにはしゃぐ声が聞こえた 」という一文に、複雑な家庭環境の中に差し込む希望の光を思わせます。
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No.2126 - 2025/05/04(Sun) 16:57:05 |
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