サバンナの夢 荒木章太郎
サバンナでシマウマになった夢をみた 目を覚ますと白と黒のタイルが迫ってきた なんて世界に居るんだ 白か黒か二つに一つ いつも選択に迫られ 白黒に裏返され 白黒に塗り替えられ 欺き裏切られる スタイリッシュなデザインばかりで 人が眠ることについて考えなかった 現実がコンクリートの壁を伝って 冷たく突きつけてくる 窓の外では月が誘っているではないか 勝ち負けの世界は御免だ もう眠るのは止めて 夜風にあたるか 書を捨てずに街へ出る アスファルトに耳を当てると 風がページを捲ろうとする 1日の物語くらい 俺のペースで進ませろ 時の流れは上空を 流れていたのに いつの間にか足元から 突き上げられるように 押し寄せてくる 夜は明けて 東の空から玉ねぎがのぼるではないか 黄金色に輝く朝だ 白と黒を混ぜ合わせて 灰色の雲を作り 俺は労働に出かけた 仕事帰りはどしゃ降りで 最寄り駅前で 今どき女が立っていた 金が欲しいと立っていた 今どき俺は鞄の中をびしょ濡れにして カビが生えた過去しかないとすり抜けた おじさんの皮を 剥いたらマーメイド マーメイドの皮を剥いたら マーブルチョコを手に持ち 家路へ帰る子供の頭 頭を剥いたら何もない かつて君が涙を見せたのは 俺が玉ねぎだからだろうか 今宵は一人カレーライスを作って眠る
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No.485 - 2023/11/18(Sat) 22:57:33
| ☆ Re: サバンナの夢 / 荻座 利守 | | | 勝ち負けの世界や常に時間に追われる生き方に疲れている様子が上手く描かれていると思います。 2連目の「書を捨てずに街へ出る」や、4連目の次々と皮を剥いでゆく表現がとても面白いです。 そして最後の方の 「かつて君が涙を見せたのは 俺が玉ねぎだからだろうか」 というところが切ない感じでいいですね。
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No.486 - 2023/11/19(Sun) 08:46:21 |
| ☆ Re: サバンナの夢 / 荒木章太郎  | | | 荻座 利守様 ご感想頂きありがとうございました。時間の流れが早く感じて、ついていくだけで精一杯の毎日です。なのに体の奥底では切なさが、流れずにへばりついているのです。そんな気持ちを表現したかったので、受け取って下さってとても嬉しく思います。これからも描き続けたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
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No.489 - 2023/11/19(Sun) 14:17:52 |
| ☆ Re: サバンナの夢 / 齋藤純二  | | | 年々、時の流れが早く感じ 何かを成し遂げている実感もなく 私自身も歳だけがとってしまうと思えるこの頃 共感しながら拝読させていただきました。 夢から覚めた後の話が、 夢のように一日が過ぎてしまうような描写になっていまして とてもユニークな表現で読み応えがありました。
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No.493 - 2023/11/19(Sun) 21:17:01 |
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