夜がくるたび、 名前を置いていく。 肩にかかる言葉も、 くちびるの形も、 知らない誰かのものになる。
指が触れるたび、 少しずつ剥がれていく。 皮膚は柔らかい紙みたいに、 折られ、数えられ、 手の中で薄くなっていく。
「ここにいるよ」と言ってみる。 でも声は乾いていて、 風に流されて、 どこにも届かない。
朝になれば、 体は少し足りなくなっていて、 鏡に映る顔も、 どこか欠けていた。
最後の夜、 まぶたを閉じたら、 指先がふっと消えて、 空気の中に溶けた。
朝がくると、 部屋にはただ、 小さな紙切れが落ちていた。
その街の娼婦は、夜ごと名前を変え、触れるたびに自分を失っていくと言われている。朝には、君の存在を示すのは小さな紙切れだけだった。
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No.1995 - 2025/03/26(Wed) 20:56:25
| ☆ Re: 雪鎖 / 荻座利守 | | | 娼婦の哀しみや独特な感覚が、繊細に描かれた詩ですね。 「指が触れるたび、 少しずつ剥がれていく。」 という表現が秀逸だと思います。 夜ごと名前を変え、その名前と存在を紙切れと化して、一枚ずつ剥がしてゆく。それは自分を失うと同時に、自分を保つためのもののようにも思えました。 そんな矛盾した感覚が、行間に感じられます。
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No.1999 - 2025/03/27(Thu) 16:39:50 |
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