8月31日、夏休みの最終日
黄色い満月が、黒い水面にゆらゆら揺れ動いてる
うっすら見えるプールサイドの時計は、25時を回った
約束の時間はとっくに過ぎたのに、あの子はまだ来ない
夏祭りのときのパステルカラーの浴衣
市民プールで見せてくれた可憐な水着
花火大会の帰りでの少し寂しそうな横顔
来年の夏も、2人でいろんなところへ行けると信じて疑わなかった
1週間前に別の学校へ転校すると告げられるまでは
何も言えず、ただ下を向くしかできなかった
昨日の電話で、この場所で会う約束をしてくれてから、止まっていた時間が動き出しつつあった
どうしても伝えたかったことを伝えて、唇と唇をそっと重ね合いたい
それだけできれば、もう心残りはない
水の中に浸かっている手足がじわじわと冷たくなっていく
堪えきれず夜空へ顔を上げた瞬間、一粒の雫が水面に落ちる音が後ろで聞こえた
振り抜くと、あの子がいた
あの子の目と頬が、涙で濡れていた
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No.2801 - 2025/11/10(Mon) 22:52:01
| ☆ Re: 25時の黒い水鏡 / 齋藤純二  | | | 突然のあの子の転校でお互いの気持ちの揺れが見えて ストーリーをじっくりと追うことができる作品で良かったです。 切なさありの青春に読み入ってしまいました。
ひとつ 「振り抜くと」とありますが、 この内容からすると 恋愛の対象として拒絶されるという意味になるので、 たぶん「振り向くと」なのかな、と。
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No.2806 - 2025/11/11(Tue) 20:20:23 |
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