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晴れた日に / 透明人間

 AIが歩いています。
 彼のあとをガラケイが、うつむいて
 歩いていました。
 AIが、つまずいたようです。
 救急車が呼ばれました。
 救急車はAIが、いないので、きょうは休みとのことでした。
 ガラケイが、AIを抱き起しています。

No.1604 - 2024/11/03(Sun) 09:21:37

Re: 晴れた日に / 齋藤純二
近い将来のAI依存への警鐘なのかな、
なんて思い拝読しました。
デバイスや情報の使い方を間違えると
なんだか怖い時代になりそうですね。

No.1606 - 2024/11/03(Sun) 11:22:10
老いた門出 / 石ころ
 
 老いた列車が、うしろから押し車に載せられて
 運ばれていきます。
 転職先の田舎の路面電車に造り替えられるため
 でした。
 
 きょうは、お披露目の日。

 乗っているのは、園児たちばかりでした。
 列車はネクタイをしているようでした。
 窮屈なのか脇腹をかいています。

No.1603 - 2024/11/03(Sun) 08:25:14

Re: 老いた門出 / 齋藤純二
定年後に契約社員として新たな部署で働き出し
今までとは違う仕事着きてちょっと照れ臭い自分のことを
思ったりできた作品でユニークでした。

No.1607 - 2024/11/03(Sun) 11:30:40
三段とび / 中学1年生
   (犬)
 
 犬が吠えている。
 人相の悪い私がいるからだ。
 犬がなきやんだ。
 家から飼主が出てきた。
 犬が尻尾をふっている。
 めしに、ありついたらしい。


   (災害)

 家が流されてゆく。
 岸辺で家族が、それを見送っている。
 土砂が水門を塞いだ。
 首を絞められている拡声器がサイレンを
 鳴らしていた。
 雨が、さらに強くなった。


   (仮面)

 仮面が泣いている。
 親に尻をたたかれた。
 仮面が怒っている。
 彼の足が踏まれている。
 仮面が笑っている。
 尻が、かいーの。

No.1600 - 2024/11/03(Sun) 03:31:54

Re: 三段とび / 齋藤純二
過去にあった出来事を思い出しての三段跳びでしょうか。
首を絞められている拡声器、
なんとなく詰まった声の感じが上手く表現されていますね。
仮面が泣いてる、
深層にある悲しみみたいなのが伝わってきますが、
次に仮面が笑い、尻が痒いというところで
読者はかなり飛べたんじゃないかな。

No.1602 - 2024/11/03(Sun) 07:18:16
ごめんネ / 小指
 
 ごめんネ。
 黙りこんで。
 ごめんネ。
 握った手のひらをひろげられなくて。
 ごめんネ。
 にっこり、できなくて。
 ごめんネ。
 こころに秘めたものができて。
 ごめんネ。

No.1599 - 2024/11/03(Sun) 00:21:45

Re: ごめんネ / 齋藤純二
内情は分かりませんが、
その場の雰囲気から気持ちがとても伝わってきますね。

No.1601 - 2024/11/03(Sun) 07:09:52
憑依、あるいは破滅 / TA
アフロディテを夢想して
自らの死を歌う男がいた
美しい声を持つ吟遊詩人だった

その二つとない声で唄い
岬にて嵐を呼ぶ
海は暗くゆらいで
たちまち暗雲が空に満ちていった

「死の先に、美と一体化する夢」
狂気の気配は男の心身を蝕んでいった
冷たい雨風に幾日もさらされ
男はついに病にたおれた

得体の知れない悪夢が襲う
悪寒と夢幻のなかで男は呟いた

「永遠の美しさの象徴
 深淵の彼方より生まれしアフロディテ様
 どうか連れて行ってください
 あなたの創りたもうた世界へ」

アフロディテと呼ばれた異形はどこからともなく
黒装束に鎌を持ち現れた
それは美しい女神の姿ではなく
ある飢えた農夫のような
妖しげに宙に浮かぶ男の白骨だった
アフロディテは死神の姿をしていた

「我こそがアフロディテである」

「長い嵐の中で
 あなたを夢見た
 あなたへの愛は
 一刻さえも永遠に変えるでしょう
 美の楽園でわたしはあなたに跪きます
 わたしがわたしでなくなるまで」

「それは叶わぬ。
 嵐を呼んだのはお前なのだから。」

「わが生涯の記憶は死を以て
 肉体と共に滅びるのです
 わたしはただ一度でも
 美しい世界が見たかった
 世界を美しいと感じたかった
 わたしの祈りを死の先にどうか
 憐れんでください」

「何も滅びぬ。元に還るだけだ。
 醜い魂には醜い生涯が宿る。
 地獄にこそ存在する真実は
 お前の魂をいつまでも
 優しく慈しんでくれるだろう。」

「ああ、この上なく美しいアフロディテ様
 完成された美のイデアよ
 あなたに触れることは
 死を超えてさえも叶わないのですか」

「死を超えることはできない」

「せめて仮の御姿でも
 今お見せください
 忘れえぬほどの情念で
 この肉体の呪いを解いて
 悦びの飛翔をください」

アフロディテはいつものように
鎌を振り下ろした

男はなんと
望み通り、魂だけ死んでしまった

No.1598 - 2024/11/03(Sun) 00:13:41

Re: 憑依、あるいは破滅 / 齋藤純二
肉体の呪いを解くことは魂だけが死ぬことだったんですね。
男は美の憧れみたいなものを感じていたのかな、
と思いながら拝読させていただきました。

No.1611 - 2024/11/03(Sun) 12:43:07

Re: 憑依、あるいは破滅 / TA
ご感想ありがとうございます。
夢想家の生涯のようなものを想像しました。

No.1612 - 2024/11/03(Sun) 23:18:11
心の底 / 桃
くだけちった想いを
川辺に持って行って
泳がせていた

本当は
川の底に
沈んで欲しかったのに
なかなか
上手く行かなくて

それは
どんどん流されて
下流へと進んで行った

もう
見えなくなるくらいまで
見送って
それでも
沈まないのを見ると

なんだか
絶望的な気持ちだった

これでは
想いがくすぶってしまって

いつまでも
晴れ晴れしない気がした

それでも
どうにか
生きていくしか
術はないから

私は
しゅんと
しながらも
その想いが
とうとう
最後まで
川の底へと沈まなかったとしても

わたしの心の底へと
沈めこんでしまおうと
決め込んだ

No.1590 - 2024/11/02(Sat) 11:31:24

Re: 心の底 / 荻座利守
くだけちった想いが川の底に沈んでゆかなかったのは、流されていった先で、また別の命へと生まれ変わるため。
そんな空想をしてしまいました。
読む人によって様々な受け取り方がされるような、奥行きのある作品だと感じました。

No.1595 - 2024/11/02(Sat) 14:20:42

荻座利守さま / 桃
流されていった先で、また別の命へと生まれ変わるため。という、解釈、素敵です!ありがとうございます!!

読む人によって様々な受け取り方がされるような、奥行きのある作品だと感じました。と、おっしゃっていただけて、とても光栄です!!

またまた、読んでいただけて、御言葉もいただけて。
嬉しくてたまりません。

いつも、ほめてくださるんですね!!
優しいですぅ!!

ありがとうございます!!

これからも、頑張って書いていくので、よろしくお願いいたします!!

No.1597 - 2024/11/02(Sat) 16:04:58
夢と悪魔とロックンロール / kou

夢で悪魔をみた朝は
彼は本当に
悪魔だったのかと考える
髪は長く
赤と
黒の
ネルシャツを着ていた
僕の夢で
暴れまわって
夢は
吹き飛んでしまった
僕は目覚めた


起きてすぐ
アコースティックギターを手に
ロックンロールを
一曲書いた


 チュニジアの夜の底
 宝箱ぶちまけて
 きみだけを選んだよ
 香油を注いでくれないか


妻が起きてきて
ふたり歌った
EmからCへ
くりかえす
くりかえす
さざ波はここでは聞こえないけれど
僕の呼吸はさざ波だった
そこにギターのリズムが重なった
あゝ
悪魔でもなんでもいい
僕の罪を洗いながせ


 

No.1589 - 2024/11/02(Sat) 11:12:37

Re: 夢と悪魔とロックンロール / 荻座利守
チュニジアの夜。
個人的にはアート・ブレイキーを思い出しました。
夢で見た「彼」は本当は悪魔ではなく、創作の神の化身だったのかもしれないですね。
また、奥さんと二人で歌うところがいいなと感じました。

No.1594 - 2024/11/02(Sat) 14:14:13
白い花 / 桃
いつもの
見慣れている
花がない

私が求めている
白い薔薇の花が
売り場に
置いていなかった

どうやら
もう
売れてしまった
らしかった


私は次に
白い百合を求めた
しかし
あいにく
白い百合も
売り切れていた

そこで
店員が
わたしに耳打ちした
「実は本日で閉店なんです」

私は
あっけにとられた

その瞬間
とても悲しい気持ちになった

求めていた花が
ない事に加え
店が閉店する事が
わかり

ショックが大きかった

すると
店員が
「白いお花をお探しでしたら、
かすみそうはいかがでしょう?


そう言って、
持ってきてくれた
かすみそうが

なんとも
健気に見えて
それを買って帰った

No.1588 - 2024/11/02(Sat) 11:07:18

Re: 白い花 / 荻座利守
花屋が閉店するというのは、その街から花を愛でる心が薄れてしまったことを表しているようで、何だか寂しいですね。
最後に残った白いかすみ草が、その寂しさを共感しているかのようで、いいなと思いました。

No.1593 - 2024/11/02(Sat) 13:57:21

荻座利守さま / 桃
花屋が閉店するのは、本当に寂しいですね。
花をめでる心が薄れてしまったという解釈は、切なかったです。

最後に残った白いかすみ草が、その寂しさを共感しているかのようで、いいなと思いました。とおっしゃっていただいて、とても嬉しく思いました!

また、読んでいただいて、御言葉もいただけて、ありがたいです!

これからも、さらに精進していくので、宜しくお願い致します!!

No.1596 - 2024/11/02(Sat) 16:00:03
切腹 / 透明人間

 老中の武家屋敷があった。私はボロを纏って、そこへ
入り込んでいた。自分でも悪臭を放っているのがわかった。
また、自分でもない者が私の腹から空腹の音をあげていた。
 お庭をお借りしたい。 玄関へ出てきた者は顔をそむけていた。
 主人は不在ゆえ、お帰り下さい。 私は、構わず庭へ、黙って座り込むと、前に短刀を置いた。ボロから慣れた手つきで腹を見せ、
短刀を抜いた。家の者は見逃さなかった。短刀が光をはね返さないことを。 存分になさるがよい。 私は、構わずニセの竹光で何度も何度も腹を突く真似をした。しらけた空気が漂っていくのを感じた。切腹して果てたように地面に頬をぶつけた。私の体から、また空腹の声が上がった。庭にいた者は誰も、いなくなっていた。仕方なく、起き上がろうとすると、うしろから前に真剣の短刀を置く者がいた。

No.1586 - 2024/11/02(Sat) 03:48:56

Re: 切腹 / 荻座利守
一見すると、生きてゆくための「ずるさ」の様子をシニカルに描いているように思えますが、その裏に、疎外感に苛まれている人の心理的な葛藤や苦悩、そしてそれに対する周囲の無理解が示されているようにも感じられます。
No.1592 - 2024/11/02(Sat) 13:41:03
風に身をまかせて / 大人未満

 私は空を飛んでいます。
 私は落下していきます。
 幸い、海が見えてきました。
 私は風に流されていきます。
 穴に、はいりこんでしまいました。
 私はさらに落下していくようです。
 私は落下しているのに、上昇しているような気分です。
 穴を抜けて、わたしは、さらに落下していきます。

No.1585 - 2024/11/02(Sat) 00:30:25

Re: 風に身をまかせて / 荻座利守
「私」は空を飛んでいるのでしょうか、落ちているのでしょうか、風に流されているのでしょうか。
「落下しているのに、上昇しているような気分」
というところに、感覚の交錯が感じられていいですね。
現代の社会を生きる内に感じる、自己効力感の欠如が表されているように思いました。

No.1591 - 2024/11/02(Sat) 13:31:26
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