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御来房の皆様、おはようございます。 毎月五日の担当、戦国房薩摩守です。
毎年一二月は仕事も繁忙期で、亡父の法事を初めとする家の役務も多いためなかなか各房の更新・BBSの雑文も滞りがちですが、中旬には新作のアップが始められると思います。
今回の話題は「熊」についてです。
過去作「北海道苫前郡羆害事件(大正四年)」で採り上げた、我が国最大の熊害事件が大正四(1915)年一二月九日・一〇日の両日に発生し、今日は二件目の事件から一〇九年になります。 御来房の皆様も報道などで御存知の様に、今年(令和六(2024)年)はここ数年に増して熊の出没が多く、警察の要請で羆を討ち取ったハンターが危険な発砲と見做されて猟銃免許を取り消された事件における高裁判決で逆転敗訴が出たり、すーぱーに二日間もツキノワグマが潜り込み、店員が負傷する事件も起きたりしました。
この二件、幸いにして人間側に死者が出ることは無かったのですが、腹立たしいのは熊への処分に対し、当事者への心無い誹謗中傷が相次いでいることです。 熊の命を尊び、その死を悲しむのは人として些かも批判するところではありませんが、役所等に寄せられる苦情の中には、
「無知も甚だしい!」
と云いたくなることが少なからず見受けられます。 有り体に云えば、熊の生態・習性を知らなさ過ぎる、無責任な批判が並んでいる訳です。
「麻酔銃で眠らせ、山奥に放獣すべき!」 という声は、一見慈悲深く、妥当な意見に見えます。しかし、話は簡単ではありません。 麻酔銃は熊の体に的確に命中させて尚、眠らせるまでに10分かかることもあり、その間至近距離で熊に必死の抵抗をされればハンターの命は危険極まりないものとなります。 つまり、麻酔銃で眠らせるのは非常に困難なのです。
また、熊類は大変執着の強い生き物です、何処かの道場主並みに(苦笑)。 例え眠らせることに成功し、山奥に連行したとしても、人間の生息域に有るものを「餌場」と認識すれば、また現れてしまいます。 過去にも箱罠で捕らえたり、麻酔銃で首尾よく眠らせた熊を山奥に放った例はありましたが、結局は町中に戻り、二、三年の内に処分された個体ばかりでした。
誠に残念ですが、人間の生息域に一度でも居座った熊はその命を絶つしかありません(泣)。
上掲の拙房過去作でも羆の執着心の強さは述べていますが、殊に熊は「自分が入手した獲物」に物凄く執着し、それを奪いに来たと見做した物には極めて攻撃的です。 三毛別羆事件では、犠牲者の遺体を収容した民家で行われた葬儀の場に板壁をぶち破って入り込み、そこを銃で追われると隣家に侵入してそこに居た女子供達が犠牲となりました………。 また昭和時代に起きた福岡大学ワンダーフォーゲル部の学生三人が羆の犠牲となった事件では、加害羆(雌)はリュックを取り戻そうとした学生を「敵」と見做し、三名を害したものの、その遺体を食べることはありませんでした。
つまり、熊(に限らず野生動物全般)に人間の住む地域を「餌の有るところ」と思わせてはならず、そう思って居座った熊はその命を絶たざるを得なくなります。 それゆえ、里山などに現れる動物(特に熊や猪)への餌付けは厳に慎まなければなりません。 拙作並びにこの駄文が少しでも野生動物への理解を深め、要らざる我意を防ぐ一助になればと願われてなりません。
ではまた来月(来年)。
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No.408 2024/12/10(Tue) 11:20:20
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