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御来房の皆様、こんにちは。 毎月10日の担当、特撮房シルバータイタンです。
今回の話題は訃報です。 今月4日、『仮面ライダーBLACK RX』にて主人公・南光太郎の叔父で、佐原航空の社長・佐原俊吉を演じた俳優の赤塚真人(あかつかまこと)氏が逝去されました。 享年73歳。謹んでご冥福をお祈りします。
赤塚氏は一般には『幸せの黄色いハンカチ』を初めとする山田洋次監督の映画に出演されたことで有名ですが、シルバータイタンにとっては上述した様に、何と云っても『RX』での佐原俊吉役ですが、前番組である『仮面ライダーBLACK』にも客演し、ノンクレジットでしたが『ウルトラマンA』に客演されたこともありました。
他にも数多くの刑事ドラマや時代劇で、何処か気弱で、何処か頑固で、それでもやる時にはやる、人間がいざというときに見せる一本気さを秀逸に演じられた方と認識しています。
挙げればキリがないのですが、故人への敬意から3つの例を挙げたいと思います。
一つ目は『特捜最前線』第80話「新宿ナイト・イン・フィーバー」での客演。冴えないサラリーマン・小栗洋平が偶然拳銃を手に入れてしまったことで気が大きくなり、自分を馬鹿にした相手ややくざに発砲してしまい、最後には自身も死んでしまうと云うアンハッピー・エンドで、話としては見ていて気分のいいものではありません。 しかしながら、平静、自分を抑え、劣等感に苛まれている者が、きっかけ一つでその本音を暴走させることの恐ろしさを考えさせられる名作でもありました。 気弱なサラリーマンと、人間の本性の発露の双方を演じることに優れた赤塚氏ならでは当たり役でした。
2つ目は上述の佐原俊吉。 妻・唄子(鶴間エリ)の婿養子という立場で、妻の尻の下に敷かれている様で、前作で傷心だった南光太郎を陰に日向に支え、茂(井上豪)・ひとみ(井村翔子)の良き父親を演じていた訳ですが、最終回直前、彼は二人の子供を庇って妻共々ジャークミドラの手に掛かりました。 その際、二人の子供をRXへの人質にすべく捕えんとするジャークミドラの足に妻と共にしがみつき、子供達に逃げるよう促す懸命さ、直後の断末魔は赤塚氏の好演ゆえにその悲惨さが際立ち、フィクションと分かっていても、何度見ても胸が塞がれる思いがします。
そして最後は『大岡越前』での役。 『大岡政談』の中でも有名な「三方一両損」の話で、赤塚氏は金を落とし、その金を届けに来た若者に、「一度俺の下を離れた金を受け取れるか!」と云って、突き返す頑固大工の役を演じた訳ですが、それを何と三部に渡って演じました。 結局この話、金を拾った方も受け取りを断り、大岡越前の前でも互いが意地を張り通したため、越前が一旦、三両を召し上げた上で自腹から一両を加え、双方に二両ずつ、「正直への褒美」とし、三者が一両ずつの損を被ることで平等に終わらせると云う話になったのですが、普段気弱な役所が多いだけに、赤塚氏の頑固ぶりが光りました。
実は、シルバータイタンはとある偶然から、この「三方一両損」の話にて赤塚氏と「受け取らない!」とやり合ったもう一人の頑固者を演じた桜木健一氏と偶然会話したことがあります。 会話が出来た背景は書けませんが、このときシルバータイタンは桜木氏に、「赤塚さんとの「三方一両損」の話を三回見ました。同じ話の同じ役を二人揃ってやるなんて凄いですね。」と話す程、二人の好演が印象的でした。 ちなみに桜木氏に云わせると、「あれは浜田光夫と一緒にやる方が良いんだ。」とのことでした(笑)。
当たり前の話ですが、どんな名作も主演だけでは成り立ちません。悪役・脇役・チョイ役のすべてが必要です。そりゃ、脇役やチョイ役には最悪、「代わりは幾らでもいる。」という考えがあるかも知れませんが、一つの話が脇役・チョイ役の見せるスパイス的な客演で名作・名シーンが生まれた例は枚挙に暇がない筈です。
人間の寿命として赤塚氏の享年は、取り立てて早世とも長命とも云えませんが、多くの人々を楽しませてくれた名優としては、「早過ぎる!」と云いたくなります。 最終回を目前にして退場した佐原俊吉の分まで長生きして欲しかったものです。
合掌。
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No.331 2024/07/18(Thu) 20:15:41
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